DFSS の詳細 DFSS とは何か(その2)

 
  
 

【DFSS とは何か、連載目次】

 
 前回その1では、新しい製品やプロセス(サービス)を開発・設計する際に使われるフレームワークが DFSS であり、なぜ DFSS が必要なのか、またどこにリーンシックスシグマの限界があるのかについて解説しました。今回は、DFSS の詳細に入ります。
 

1. DFSS を使う代表的な企業

 
 DFSS の詳細に入る前に、どのような企業が DFSS を使っているのか、見てみたいと思います。以下のリストは、代表的な企業のほんの一例です。
 
 
 資料などには大企業の名前しか出てきませんが、多くの中小企業でも DFSS が採用されています。上記リストは主にハードウェアを開発する会社が多いのですが、実際はソフトウェア分野でも DFSS が活用されています。また新しい金融サービスなどを開発するために、銀行や保険業界でも DFSS が使われています。
 
 このリストを見れば、新しい製品やプロセス(サービス)を開発・設計する仕事であれば、業種を問わずに DFSS が活用できることが分かるのではないでしょうか。
 

2. DFSS のフレームワーク

 
 リーンシックスシグマは主に、DMAIC というフレームワークを採りますが、DFSS では主に DMADOV というフレームワークを使います(他にも新規技術開発に特化した IDOV など色々ありますが、ここでは割愛します)。DMADOVは、次のような過程を通して、新しい製品やプロセス(サービス)を設計・開発していきます。
 
 
 比較のために、リーンシックスシグマの DMAIC について記すと、次のようになります。
 
 
 DMAIC と異なり、DMADOV は顧客要求の把握や、新製品やサービスの最適化などに力点が置かれているのが分かると思います。実際 DFSS では、仕様設計、リスク管理、ロバスト(堅牢)設計、最適化、テスト、というところに比重が重く置かれます。
 

3. DFSS の主なツール

 
 DFSS もリーンシックスシグマの一員ですので、使われる多くのツール類は同じものです。中には DFSS ではあまり使わないもの (例えば VSM など)もありますが、一方 DFSS だけでしか使われないツールというのは、あまりないような気がします。
 
 DFSS は、ハードウェアの設計やソフトウェアの設計、サービスの設計、金融商品の設計など、ありとあらゆるものに使われるため、主要なツールはそれぞれ異なります。ここでは、ハードウェア設計に限って、記しておきます。
 
 
 僕は DFSS の特徴は、まず VOC、QFD、CTQ Flow-down。といった顧客要求の把握にあると思っています。DFSS は「良いものを作れば売れる」という発想ではなく、「顧客の欲しいものだけを提供する」という発想に成り立っています。
 

【イノベーションを生み出す方法】

 
 DFSS の他の特徴はリスク管理です。FMEA(Concept、Design、Process)などを通じて、あらかじめ想定できるリスクを徹底的に洗い出しておき、そのリスクを低減するための対策を施します。そしてそのリスクの度合いを理解するために、シュミレーションなどを行って数値化し、統計的にリスクを分析します。
 

4. DFSS の効果

 
 DFSS の目に見える効果は、「やり直し作業」の減少です。やり直し作業の減少は開発コストの削減と開発期間の短縮に直接影響して...
きます。DFSS で開発した製品やサービスは、リスクやバラつきが少ないので、スムーズに製品の製造や、サービスに開始に移行できます。移行した後も、問題(リスク)が発生することが少なくなります。
 
 一方、DFSS を行わなかった場合、設計のやり直しやテストのやり直しなどが、頻繁に発生します。また製造やサービスを開始した後にリスクが顕在化し、それを修正するために、「やり直し」が発生します。やり直し作業はすべて、コストとスケジュールに悪影響を及ぼします。
 
 僕の身近な例として、プリント基板の開発に DFSS を用いた事例があります。それまで 7 回ほど設計とテストを繰り返してプリント基板を完成させていたところ、DFSS を採用してから 3  回に減りました。設計とテストの期間は大体一ヵ月ほどかかるので、単純に計算しても、四ヵ月のコストとスケジュールの短縮に結び着きました。
 
 良いことだらけの DFSS ですが、実際に行おうとすると、色々な壁にぶつかります。DFSS の導入の難しさについては、次回に続きます。
 
◆関連解説『品質マネジメントとは』

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