【第2章 中国工場の実状を知る】
前回のその4に続いて解説します。
【作業者について】
中国工場で働いている作業者とは、いったいどんな人だちなのでしょうか。
(1)作業者は何も知らない人たち
中国工場の作業者は、地元の子もいますが、内陸から出稼ぎに来ている子たちが今でもたくさんいます。みんな若く、何もない田舎から来ている子だちと考えてよいでしょう。それ故に以前は、水洗トイレやシャワーの使い方から教えることも必要でした。
中国人作業者に対して作業のやり方や品質管理の知識などを教えるときは、小学生に教えるつもりで行うことがポイントです。それくらい何も知らない子だちと認識しておく必要があります。このような話をすると中国経験者は「そんなことはわかっている」と言うのですが、頭の中で理解していても実際の行動が、それを前提としたものになっていないことがあります。このような人たちによく起こるのが、「知らないと言ってもこれくらいは知っているだろう」とか「これくらいはわかるだろう」と思ってしまうことです。
実際中国人の作業者は、我々日本人が考えているより何も知りません。例えば、品質の「ひ」の字も知りません。でもこれはあたり前のことで、学校では教わってこないのですから。規律を守ることも知りません。場合によっては現在でも宿舎での集団生活や施設の使い方など生活面の指導からやらなくてはならないこともあります。
これが日本の工場だと、長年生産をしてきたこともあり、男性でも女性でもある程度の経験を持っています。そんな人たちは、一言説明をすれば内容を理解し、こちらの意図通りにやってくれます。新人が入ってきても、ベテランがきちんと教え面倒を見ることができます。
中国で工場を立ち上げて、そんな日本と同じようなつもりで作業者を考えてはいけません。1回の説明でこちらの意図を理解してくれるとは考えないことです。何回も確認をしながら繰り返し説明することが大事です。高校生レベルと考えると失敗します。
(2)整理・整頓の概念がない
中国人の作業者には、整理・整頓という概念がないと思ってください。これは良い悪いの問題ではなく、育ってきた環境が日本人とは違うことから来ているのです。読者のみなさんは、小さい頃から両親に「自分の机の上や中を整理整頓しなさい」と口を酸っぱくして言われてきたと思います。ですから自然に整理整頓という概念が醸成されているのです。ところが、中国人の場合、特に田舎の農村で育った人たちは、家にものがありません。ですから整理整頓の必要がないのです。これでは整理・整頓の概念がないのも当然です。
余談になりますが、中国工場の指導をしていてわかったのは、中国人は、物のしまい方や片付け方を知らないということです。
ある工場でのことなのですが、製品を段積みにするとき製品同士が当たらないように段ボールを敷くようにしていました。当然使用する段ボールを用意しておく必要があるのですが、その段ボールを寝かせて積み重ねて置いているのです。これでは余分な場所が必要...
繰り返しますが、中国人の作業者は、日本人が考えているよりも何も知りません。特に、入社したでの作業者は、それくらい何も知らない子たちです。知らないこと、教えられていないことは出来ないので、やって欲しいことはきちんと教える必要があるということです。
次回の(3) 中国人作業者の良い点に続きます。
【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行 筆者のご承諾により、抜粋を連載