伝承成功のポイント 少子高齢社会での組織的な伝承の進め方(その3)

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事業継承

 ベテランから若手への伝承は、ときに企業の存続にも影響を与えます。少子高齢社会において高齢者と若手、中堅社員はどのように伝承に対応すべきなのでしょうか。企業を活性化し伝承を進めるための組織的な取り組み方について、連載で解説します。

 前回のその2に続いて解説します。

3. 伝承成功のポイントと備え方

 今回は、伝承を成功に導くための施策を考えてみます。

(1)技術と技能に分けて考える

 伝承を成功させるポイントの1つは、技術と技能に分けて考えることです。技術とは、図面や数値などで形式知化することにより伝承が可能なもの、一方技能は、人が行う働きや動きなど人を介在し伝承できるものと定義しています。作業分解により技術と技能を識別することができれば、技術は誰でも仕事ができるよう標準化・自動化します。技能は付加価値を生み出すものとして個人に帰属させ、さらに技能を磨いていくのです。このように技術と技能に切り分けて対策を行うと、若者には技術を効率的に伝え、体力が落ちてくる熟練者には技能部分に特化して作業してもらい、長く付加価値を発揮し続けてもらうことが可能となります。

(2)継承者視点の仕組みを作る

 継承者視点の仕組みを作ることも重要です。伝承は、伝承者から知識やノウハウを伝授しますが、その内容は必ずしも継承者が必要な情報とは限らないのです。伝承に必要な情報は継承者個人ごとに異なります。継承者の過去の経験や知識などの状況によって、必要な情報が異なるのです。そのため伝承者は、「如何に効率的に伝えるか」を考えるのではなく、継承者が「何を必要としているのか」を見極めることに注力すべきです。

 また、作業標準やマニュアル類には作業手順と作業内容は記載してありますが、勘やコツといったノウハウは行間に隠れているケースが多いでしょう。そのため作業手順を覚えたら、そのような作業標準類は使われず埃を被っていくことになります。

 作業標準を継続的に活用するためには、新人が入った都度、継承者視点で作業標準やマニュアル類を見直していくといった仕組みが必要です。なぜなら伝承者視点で作った仕組みには、継承者が必要とする情報が少なく、作った段階から陳腐化が始まるからです。継承者視点で仕組みを作り、継承者自身が必要な情報を盛り込んだり、継承者が困った際には同僚や先輩などに質問できるような仕組みを継続的に活用する工夫が、伝承には必要なのです。

(3)組織的に活動する(伝承推進体制の整備)

 さらに、組織的に活動するような伝承推進体制を整備することも重要です。伝承をOJTで行うとき、伝承者と継承者の相性が合わず、うまく進まないケースも多いのです。中小企業の場合、同世代の同僚が少なく相談できる人がいないことも背景にあります。そのため伝承を組織的な活動として行う必要があります。例えば、半期ごとの目標管理に伝承を組み入れ、経営者が定期的にチェックしたり、中堅社員を中心として朝礼や夕礼などで日々の気づきを共有する場を作ったり、職場ごとにアドバイザーを設...

 

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 ベテランから若手への伝承は、ときに企業の存続にも影響を与えます。少子高齢社会において高齢者と若手、中堅社員はどのように伝承に対応すべきなのでしょうか。企業を活性化し伝承を進めるための組織的な取り組み方について、連載で解説します。

 前回のその2に続いて解説します。

3. 伝承成功のポイントと備え方

 今回は、伝承を成功に導くための施策を考えてみます。

(1)技術と技能に分けて考える

 伝承を成功させるポイントの1つは、技術と技能に分けて考えることです。技術とは、図面や数値などで形式知化することにより伝承が可能なもの、一方技能は、人が行う働きや動きなど人を介在し伝承できるものと定義しています。作業分解により技術と技能を識別することができれば、技術は誰でも仕事ができるよう標準化・自動化します。技能は付加価値を生み出すものとして個人に帰属させ、さらに技能を磨いていくのです。このように技術と技能に切り分けて対策を行うと、若者には技術を効率的に伝え、体力が落ちてくる熟練者には技能部分に特化して作業してもらい、長く付加価値を発揮し続けてもらうことが可能となります。

(2)継承者視点の仕組みを作る

 継承者視点の仕組みを作ることも重要です。伝承は、伝承者から知識やノウハウを伝授しますが、その内容は必ずしも継承者が必要な情報とは限らないのです。伝承に必要な情報は継承者個人ごとに異なります。継承者の過去の経験や知識などの状況によって、必要な情報が異なるのです。そのため伝承者は、「如何に効率的に伝えるか」を考えるのではなく、継承者が「何を必要としているのか」を見極めることに注力すべきです。

 また、作業標準やマニュアル類には作業手順と作業内容は記載してありますが、勘やコツといったノウハウは行間に隠れているケースが多いでしょう。そのため作業手順を覚えたら、そのような作業標準類は使われず埃を被っていくことになります。

 作業標準を継続的に活用するためには、新人が入った都度、継承者視点で作業標準やマニュアル類を見直していくといった仕組みが必要です。なぜなら伝承者視点で作った仕組みには、継承者が必要とする情報が少なく、作った段階から陳腐化が始まるからです。継承者視点で仕組みを作り、継承者自身が必要な情報を盛り込んだり、継承者が困った際には同僚や先輩などに質問できるような仕組みを継続的に活用する工夫が、伝承には必要なのです。

(3)組織的に活動する(伝承推進体制の整備)

 さらに、組織的に活動するような伝承推進体制を整備することも重要です。伝承をOJTで行うとき、伝承者と継承者の相性が合わず、うまく進まないケースも多いのです。中小企業の場合、同世代の同僚が少なく相談できる人がいないことも背景にあります。そのため伝承を組織的な活動として行う必要があります。例えば、半期ごとの目標管理に伝承を組み入れ、経営者が定期的にチェックしたり、中堅社員を中心として朝礼や夕礼などで日々の気づきを共有する場を作ったり、職場ごとにアドバイザーを設置して困った際に相談できる体制を創っておくなどです。伝承を組織的な活動にしていけば、様々な課題に対応しやすくなります。

 また、伝承者からの押し付けだと継承者が受け身になってしまい、伝承スピードが5分の1になるという報告があり、伝承者の協力を取り付けると同時に、継承者の受け身の姿勢をなくすことが重要です。伝承者は継承者へ夢を語り、将来の目指す姿をイメージさせるような工夫をしつつ、伝承計画を継承者と一緒に作成します。このようにすれば継承者の受け身の姿勢は軽減できます。伝承は経営者、熟練者、中堅社員、若手社員が一体となって進めるのです。

 次回は、4.少子高齢社会での組織的な伝承の進め方です。

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この記事の著者

野中 帝二

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