儲けて長続きする5S、工場幹部と事務局の仕事とは

投稿日

 今回は「儲かる5S」がテーマです。しかし「儲かる5S」と言うと「儲かる5Sなんてあるんですか」と必ず聞かれます。

 TPM活動で高名な工場へ行くと、週に1度の13時から15分間の一斉掃除タイムがあり、5Sというとそのような義務的な仕事というイメージが強いようです。

 しかし私は「逆に、儲からないと長続きしません」と答える事が多いのです。例えば、5Sの中の「清掃」から儲かる5Sにつなげた事がありました。 その粉体を扱っている工場では粉が至る所にこぼれていました。床だけでなく設備にも付着していましたので、5S活動の一環として床の掃除・設備の清掃を進めました。

 しかし、またすぐに汚れてきます。5Sを推進している事務局からは「汚れているのですぐに清掃お願いします」と催促されます。「今までは薄汚れていても良かったのに、なぜピカピカにしなければならないのだろう、見学者が来られた時の工場長の見栄ではないのか?」という声さえあがっていたようです。「なぜ清掃するのか?」を理解させるだけでなく、納得させなければなりません。この一手間を惜しむと5S活動は頓挫します。

 きれいにすれば気持ちよく働けますが、それよりも「本当の問題が何かを見極めるため」に清掃するという事を一緒に体験する事が重要です。清掃してみたら亀裂が見つかった、気が付かなければトラブルになっていた、とか。腐食が進行していて放っておいたら穴があいてしまうところだった、摩耗が進んでいたなどの事例は数多くあります。逆に清掃したら、こんなにきれいな設備だったのか、前回点検日のシールが貼ってあった、まだ次の点検には間があったとかがわかることもあります。

 工業とはまったく異なる医療の世界でも、認知症の治療で有名な岡山のきのこ病院では、最初に必ず患者さんに入浴してもらいきれいにして、他の疾患や病気の痕跡が無いか調べる事から始めるそうです。

 「いつもきれいにしておかなければならない」ことに納得したときに、初めて「なぜ粉が至る所にこぼれているんだろう」という疑問がわいてきます。今までは「当たり前」と思っていた事に気が付いたからです。

 頻繁に起こ...

 今回は「儲かる5S」がテーマです。しかし「儲かる5S」と言うと「儲かる5Sなんてあるんですか」と必ず聞かれます。

 TPM活動で高名な工場へ行くと、週に1度の13時から15分間の一斉掃除タイムがあり、5Sというとそのような義務的な仕事というイメージが強いようです。

 しかし私は「逆に、儲からないと長続きしません」と答える事が多いのです。例えば、5Sの中の「清掃」から儲かる5Sにつなげた事がありました。 その粉体を扱っている工場では粉が至る所にこぼれていました。床だけでなく設備にも付着していましたので、5S活動の一環として床の掃除・設備の清掃を進めました。

 しかし、またすぐに汚れてきます。5Sを推進している事務局からは「汚れているのですぐに清掃お願いします」と催促されます。「今までは薄汚れていても良かったのに、なぜピカピカにしなければならないのだろう、見学者が来られた時の工場長の見栄ではないのか?」という声さえあがっていたようです。「なぜ清掃するのか?」を理解させるだけでなく、納得させなければなりません。この一手間を惜しむと5S活動は頓挫します。

 きれいにすれば気持ちよく働けますが、それよりも「本当の問題が何かを見極めるため」に清掃するという事を一緒に体験する事が重要です。清掃してみたら亀裂が見つかった、気が付かなければトラブルになっていた、とか。腐食が進行していて放っておいたら穴があいてしまうところだった、摩耗が進んでいたなどの事例は数多くあります。逆に清掃したら、こんなにきれいな設備だったのか、前回点検日のシールが貼ってあった、まだ次の点検には間があったとかがわかることもあります。

 工業とはまったく異なる医療の世界でも、認知症の治療で有名な岡山のきのこ病院では、最初に必ず患者さんに入浴してもらいきれいにして、他の疾患や病気の痕跡が無いか調べる事から始めるそうです。

 「いつもきれいにしておかなければならない」ことに納得したときに、初めて「なぜ粉が至る所にこぼれているんだろう」という疑問がわいてきます。今までは「当たり前」と思っていた事に気が付いたからです。

 頻繁に起こる詰まりやトラブルの時、点検し易くするためにコンベアの途中や撹拌機の上の方を空けていたのでしたが、これは粉がこぼれて良くない、元を絶つ源流対策を実施する事になりました。つまり5Sの清掃から始まった活動は、トラブル再発防止活動となってついに粉のこぼれ自体が激減しました。その結果、掃除が楽になり、トラブルが減り設備稼働率が向上し、歩留も良くなり、利益に繋がりました。

 

 「清掃」の他の4つのSでも同様です。儲けて長続きする5Sは、工場幹部と事務局の仕事です。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

石塚 健志

330件の指導実績/工場管理全般、中でも省エネルギー、歩留り・品質改善を得意とします

330件の指導実績/工場管理全般、中でも省エネルギー、歩留り・品質改善を得意とします


「5S」の他のキーワード解説記事

もっと見る
5S教育の進め方

 5Sは現場全員の教育が大切であると常々考えていますので、今回はどのように教育を進めるべきかを書きます。  まずは座学によって、5Sの知識を学ぶ必要...

 5Sは現場全員の教育が大切であると常々考えていますので、今回はどのように教育を進めるべきかを書きます。  まずは座学によって、5Sの知識を学ぶ必要...


製造業における5sとは?効果から進め方まで徹底解説!

  【目次】   1. 5Sとは 5S(ゴエス)とは、主に製造系企業が生産効率向上のために行っていた「整理、整...

  【目次】   1. 5Sとは 5S(ゴエス)とは、主に製造系企業が生産効率向上のために行っていた「整理、整...


整理 5Sの基本(その2)

  【5Sの基本 連載目次】 1. 5Sの目標 2. 整理 3. 整頓 4. 清掃 5. 清潔 6. 躾  ...

  【5Sの基本 連載目次】 1. 5Sの目標 2. 整理 3. 整頓 4. 清掃 5. 清潔 6. 躾  ...


「5S」の活用事例

もっと見る
スリランカ 驚きの5S活動

 紅茶の産地として知られるスリランカはインド洋に浮かぶ島国で、北海道より一回り小さいこの島には2000万人が暮らしています。ひょんなことから、5Sコンテス...

 紅茶の産地として知られるスリランカはインド洋に浮かぶ島国で、北海道より一回り小さいこの島には2000万人が暮らしています。ひょんなことから、5Sコンテス...


5Sの進め方-日系工場の事例(その1) 中国企業の壁(その44)

        今回は、ある日系中国工場の取組みを事例として紹介したと思います。日系工場ではありますが、5Sの取組みの中心になっていたのは、1人の中...

        今回は、ある日系中国工場の取組みを事例として紹介したと思います。日系工場ではありますが、5Sの取組みの中心になっていたのは、1人の中...


‐5Sの推進でコストダウンを図る 製品・技術開発力強化策の事例(その29)

1.5S導入のための考え方  前回のその28に続いて解説します。5Sはムダな作業動作を少なくして、作業性良くし生産性の向上を図る目的で行います。5S...

1.5S導入のための考え方  前回のその28に続いて解説します。5Sはムダな作業動作を少なくして、作業性良くし生産性の向上を図る目的で行います。5S...