技術力と知財力とは

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知的財産

◆ 高収益企業の知財の全体像

 薄型テレビは、あっという間に模倣されてしまい日本メーカーの多くがこの事業から撤退しました。結果を見れば、模倣が容易だったということになります。一方産業用FA機器については、知的財産(知財)がしっかりしているために模倣できず事業基盤は強固です。大阪城になぞらえていえば、堀がしっかりとあり真田丸で攻撃も可能という状態といえます。

 ご承知の方も多いと思いますが、真田丸は大阪城の弱点部分を強化するために同城の一番外側に築かれた出城です。そこで真田信繁(幸村)は、徳川氏が率いる江戸幕府軍を痛い目に遭わせることになります。何重もの堀を備える強固な大阪城と要塞・真田丸に苦戦した徳川氏は、和睦の条件である外堀に加えて、そうでない内堀までを埋めてしまい、豊臣氏を滅亡へと追いやります。

 「歴史に『たられば』は禁物」を承知で申し上げれば、もし堀を埋められなかったら大阪城は落ちなかっただろうと思います。大阪方の大半が雑兵の寄せ集めだったにもかかわらず、徳川氏を大いに苦しめました。大阪城の堀と真田丸は、それほど強固だったのです。

1、知財によって難攻不落に

 知財はよく城や堀に例えられます。強固な城には「難攻不落」という表現が使われますが、事業も同じことです。知財によって難攻不落にすることができます。すなわち模倣困難にするのです。

 一般に、城が意図的に築かれて強固なものになるのと同様に、知財も意図的に作って強固にする必要があります。ここで「意図的に」築いたり作ったりするのは誰かといえば、城の場合は設計者で知財は研究開発の現場に他なりません。

2、特許は外部の弁理士任せ

 肝心の研究開発の現場で、次のようなことが起きていないか、チェックしてみてください。

  • 特許出願のノルマをこなすために、先願[1]を見逃したことがある
  • 特許出願は外部の弁理士任せにしている
  • 知財は企画段階で勝負が決まるという実感がない

 もしこれらに当てはまる場合には残念ながら、あなたの会社は良い知財を取れない状況にあります。せっかく開発した技術なのに、形だけの知財によってさっとお化粧する程度に留まっています。

 研究開発者は技術開発を行いますが、それだけでは事業は高収益にはなりません。知財思考と実務能力があって初めて、高収益事業にすることができるのです。つまり知財というのは、エンジニアが研究開発した技術を表舞台で長く活躍させ続けるための重要なツールなのです。

 知財は研究開発者の必須能力の一つになっていますが、現場を観察すると前述のような状況が散見されます。筆者は部外者であるとはいえ、とても心配になります。

 [1]先願:特許を出願するために実施する事前調査において見つかる引用発明のこと。先願を見逃しても出願はできるが、特許庁に拒絶される根拠となる。

3、知財の質が低いとマネされる

 研究開発の現場ではしばしば、忙しいことを口実に「知財がなくても仕事はできる」というようなことをいう人を目にします。しかもマネージャークラスが堂々と口にしたりします。そんなことを言えるのは、どうやって事業を高収益にするかを考えていない証拠です。高収益化を真剣に考えれば、質の高い知財が必要です。知財思考を抜きに事業の高収益化は考えられません。

 特許を侵害されなくても、事業を模倣される場合があります。知財の質が低い場合です。知財の質は、技術の模倣困難性ではなく、事業の模倣困難性として計られるべきです。事業の模倣困難性を意図して作り出すためには、事業の視点で意図的に知財を作り出すことが必要なのです。これには...

知的財産

◆ 高収益企業の知財の全体像

 薄型テレビは、あっという間に模倣されてしまい日本メーカーの多くがこの事業から撤退しました。結果を見れば、模倣が容易だったということになります。一方産業用FA機器については、知的財産(知財)がしっかりしているために模倣できず事業基盤は強固です。大阪城になぞらえていえば、堀がしっかりとあり真田丸で攻撃も可能という状態といえます。

 ご承知の方も多いと思いますが、真田丸は大阪城の弱点部分を強化するために同城の一番外側に築かれた出城です。そこで真田信繁(幸村)は、徳川氏が率いる江戸幕府軍を痛い目に遭わせることになります。何重もの堀を備える強固な大阪城と要塞・真田丸に苦戦した徳川氏は、和睦の条件である外堀に加えて、そうでない内堀までを埋めてしまい、豊臣氏を滅亡へと追いやります。

 「歴史に『たられば』は禁物」を承知で申し上げれば、もし堀を埋められなかったら大阪城は落ちなかっただろうと思います。大阪方の大半が雑兵の寄せ集めだったにもかかわらず、徳川氏を大いに苦しめました。大阪城の堀と真田丸は、それほど強固だったのです。

1、知財によって難攻不落に

 知財はよく城や堀に例えられます。強固な城には「難攻不落」という表現が使われますが、事業も同じことです。知財によって難攻不落にすることができます。すなわち模倣困難にするのです。

 一般に、城が意図的に築かれて強固なものになるのと同様に、知財も意図的に作って強固にする必要があります。ここで「意図的に」築いたり作ったりするのは誰かといえば、城の場合は設計者で知財は研究開発の現場に他なりません。

2、特許は外部の弁理士任せ

 肝心の研究開発の現場で、次のようなことが起きていないか、チェックしてみてください。

  • 特許出願のノルマをこなすために、先願[1]を見逃したことがある
  • 特許出願は外部の弁理士任せにしている
  • 知財は企画段階で勝負が決まるという実感がない

 もしこれらに当てはまる場合には残念ながら、あなたの会社は良い知財を取れない状況にあります。せっかく開発した技術なのに、形だけの知財によってさっとお化粧する程度に留まっています。

 研究開発者は技術開発を行いますが、それだけでは事業は高収益にはなりません。知財思考と実務能力があって初めて、高収益事業にすることができるのです。つまり知財というのは、エンジニアが研究開発した技術を表舞台で長く活躍させ続けるための重要なツールなのです。

 知財は研究開発者の必須能力の一つになっていますが、現場を観察すると前述のような状況が散見されます。筆者は部外者であるとはいえ、とても心配になります。

 [1]先願:特許を出願するために実施する事前調査において見つかる引用発明のこと。先願を見逃しても出願はできるが、特許庁に拒絶される根拠となる。

3、知財の質が低いとマネされる

 研究開発の現場ではしばしば、忙しいことを口実に「知財がなくても仕事はできる」というようなことをいう人を目にします。しかもマネージャークラスが堂々と口にしたりします。そんなことを言えるのは、どうやって事業を高収益にするかを考えていない証拠です。高収益化を真剣に考えれば、質の高い知財が必要です。知財思考を抜きに事業の高収益化は考えられません。

 特許を侵害されなくても、事業を模倣される場合があります。知財の質が低い場合です。知財の質は、技術の模倣困難性ではなく、事業の模倣困難性として計られるべきです。事業の模倣困難性を意図して作り出すためには、事業の視点で意図的に知財を作り出すことが必要なのです。これには相当頭を使います。

 事業を模倣されれば、当然収益性は下がります。特許侵害なしに事業を模倣することは日常的に行われているからです。つまり、放っておけば、収益は勝手に下がると思っていいのです。定期的に筋トレしなければ筋肉が落ちるように、日常的に知財開発を行っていなければ収益性は下がることになります。

 大事なことは放っておかないことです。日常的に知財開発をすることを業務にすれば、必ず成果が上がります。そして日常業務にしてしまえば、知財業務へのアレルギーもなくなるのです。このように、知財開発は頭をつかうものですし、日常的に行う必要があることから「知財はなくても仕事はできる」は「まやかし」であることがご理解いただけると思います。

 次回に続きます。

 【出典】株式会社 如水 HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

 

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この記事の著者

中村 大介

若手研究者の「教育」、研究開発テーマ創出の「実践」、「開発マネジメント法の導入」の3本立てを同時に実践する社内研修で、ものづくり企業を支援しています。

若手研究者の「教育」、研究開発テーマ創出の「実践」、「開発マネジメント法の導入」の3本立てを同時に実践する社内研修で、ものづくり企業を支援しています。


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