コンピュータプログラムによるデザインとは

更新日

投稿日

 「オリジナルって何だ?~揺れる表現の現場~」(NHK「特報首都圏」2016年6月3日放送)http://www4.nhk.or.jp/tokuho/x/2016-06-03/21/13821/1503991/
 
 番組の前半では、あるグラフィック系のデザイナーの制作過程を追いかけます。このときのテーマはある自治体のロゴマークの提案と地域案内のパンフレット制作です。
 
 彼の手法は、以下のものです。
 
・その土地に出向いて地域を観察する。
・各地の案内パンフレット等を収集してヒントを得る。
・観察して得た「地域の特色」を原点として、デザインを創作する。
 
 結果として「他と似ている」と言われるものがあるかもしれないが、このプロセスを踏んで自分の考えとして創作するのだから、それは「オリジナル」である、ということです。
 
 著作物とは、思想感情の創作的表現です。それだから、著作権法jは「複製」(模倣)はだめだけれど、結果として似ているものはOKとし、別に著作権が成立するとしているのです。このことを忘れてはなりません。
 
 佐野さんの「五輪エンブレム」。佐野さんが先のデザイナーと同じように、「五輪に対する自分の思想感情」を独自に表現していたと説明してもらいたかったのです。文字のデザインを創作したとか、末端も所ではなく、どのような「思想・感情」をもってデザインしたのか、というきれいな説明がなかったのが残念です。
 
 知的財産マネジメント
 
 さて、NHKの番組の後半では、コンピュータプログラムによるデザインが紹介されていました。採用された五輪エンブレムは大小の長方形で構成されています。この大小の長方形のデータをコンピュータに記録して、組み替えを指令するプログラムで操作すると、瞬時に数万通りの図柄が提示される、というものです。
 
 あるデザイナーは「デザインの解放」と言って評価しており、峯はびっくりしました。自ら首を絞めているのでは、と。
 
 このコンピュータによるデザインは、首相官邸が提言する「知的財産戦略2016」にも取り込まれており、安倍首相は次のように発言したとのことです。
 
 「ただいま、『知的財産推進計画2016』を決定しました。第四次産業革命に向けて、ビッグデータの収集・利用を進めるため、著作物を一定の場合に自由に使えるようにするなど、著作権制度を見直します。今後、人工知能が作り出す音楽や小説などの創作物について、どこまで誰に知的財産権を認めるのか、検討してまいります。 (首相官邸HP)
 
 著作権法で予定している著作者は「人」です。
 
 今までの限界事例としては、防犯カメラの映像。カメラにセンサーを取り付けてセンサーが反応したときに撮影された写真。等がありますが、裁判例はないと思います。近似した裁判例としては、アメリカの事案ですが、猿が撮影...
 「オリジナルって何だ?~揺れる表現の現場~」(NHK「特報首都圏」2016年6月3日放送)http://www4.nhk.or.jp/tokuho/x/2016-06-03/21/13821/1503991/
 
 番組の前半では、あるグラフィック系のデザイナーの制作過程を追いかけます。このときのテーマはある自治体のロゴマークの提案と地域案内のパンフレット制作です。
 
 彼の手法は、以下のものです。
 
・その土地に出向いて地域を観察する。
・各地の案内パンフレット等を収集してヒントを得る。
・観察して得た「地域の特色」を原点として、デザインを創作する。
 
 結果として「他と似ている」と言われるものがあるかもしれないが、このプロセスを踏んで自分の考えとして創作するのだから、それは「オリジナル」である、ということです。
 
 著作物とは、思想感情の創作的表現です。それだから、著作権法jは「複製」(模倣)はだめだけれど、結果として似ているものはOKとし、別に著作権が成立するとしているのです。このことを忘れてはなりません。
 
 佐野さんの「五輪エンブレム」。佐野さんが先のデザイナーと同じように、「五輪に対する自分の思想感情」を独自に表現していたと説明してもらいたかったのです。文字のデザインを創作したとか、末端も所ではなく、どのような「思想・感情」をもってデザインしたのか、というきれいな説明がなかったのが残念です。
 
 知的財産マネジメント
 
 さて、NHKの番組の後半では、コンピュータプログラムによるデザインが紹介されていました。採用された五輪エンブレムは大小の長方形で構成されています。この大小の長方形のデータをコンピュータに記録して、組み替えを指令するプログラムで操作すると、瞬時に数万通りの図柄が提示される、というものです。
 
 あるデザイナーは「デザインの解放」と言って評価しており、峯はびっくりしました。自ら首を絞めているのでは、と。
 
 このコンピュータによるデザインは、首相官邸が提言する「知的財産戦略2016」にも取り込まれており、安倍首相は次のように発言したとのことです。
 
 「ただいま、『知的財産推進計画2016』を決定しました。第四次産業革命に向けて、ビッグデータの収集・利用を進めるため、著作物を一定の場合に自由に使えるようにするなど、著作権制度を見直します。今後、人工知能が作り出す音楽や小説などの創作物について、どこまで誰に知的財産権を認めるのか、検討してまいります。 (首相官邸HP)
 
 著作権法で予定している著作者は「人」です。
 
 今までの限界事例としては、防犯カメラの映像。カメラにセンサーを取り付けてセンサーが反応したときに撮影された写真。等がありますが、裁判例はないと思います。近似した裁判例としては、アメリカの事案ですが、猿が撮影(自撮り)した画像の事案があります。裁判所は、著作権を認めませんでした。
 
 五輪エンブレムのプログラムによる組み替えで考えると、
 
・大小の四角形を組み合わせる
・組み合わせのための指示プログラムを作る
 
 これらは「人」の作業ですが、その結果としてできあがる図形は人が想像していないものです。「思想、感情の創作的表現」なのでしょうか。
 
  

   続きを読むには・・・


この記事の著者

峯 唯夫

「知的財産の町医者」として、あらゆるジャンルの相談に応じ、必要により特定分野の専門家を紹介します。

「知的財産の町医者」として、あらゆるジャンルの相談に応じ、必要により特定分野の専門家を紹介します。


「知的財産マネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
「意匠」の保護とは

  日本の100年に及ぶ意匠保護制度ですが、その創世記は、平面に施される「模様」の保護、布地の模様の保護から始まっています。日本の産業が繊維産業...

  日本の100年に及ぶ意匠保護制度ですが、その創世記は、平面に施される「模様」の保護、布地の模様の保護から始まっています。日本の産業が繊維産業...


知的財産としての特許権

1. 知的財産と関連法案  知的財産には特許権、商標権、意匠権、著作権とあり、それぞれの対象となる範囲とそれを規定する法律との関連性を下図に示します。今...

1. 知的財産と関連法案  知的財産には特許権、商標権、意匠権、著作権とあり、それぞれの対象となる範囲とそれを規定する法律との関連性を下図に示します。今...


将来の収益性予測 知財経営の実践(その1)

        今回は、知財を経営に活かす=「知財経営」の実践について連載で解説します。   ...

        今回は、知財を経営に活かす=「知財経営」の実践について連載で解説します。   ...


「知的財産マネジメント」の活用事例

もっと見る
特許侵害訴訟のリスク事例(サトウの切り餅) 前編

1.はじめに  特許訴訟は、アップルとサムスンのような超巨大企業の間のみで起こるように思われがちですが、実際にはすべての企業が巻き込まれるおそれがありま...

1.はじめに  特許訴訟は、アップルとサムスンのような超巨大企業の間のみで起こるように思われがちですが、実際にはすべての企業が巻き込まれるおそれがありま...


特許出願及び権利化の戦略について -京都大学iPS細胞研究所の事例

1.はじめに  2012年のノーベル医学生理学賞が京都大学iPS細胞研究所長の山中伸弥教授に授与されたことがニュースになりました。   このiPS細胞...

1.はじめに  2012年のノーベル医学生理学賞が京都大学iPS細胞研究所長の山中伸弥教授に授与されたことがニュースになりました。   このiPS細胞...


自社コア技術の他用途への展開 -㈱氷温の事例-

1.はじめに  今回は、自社のコア技術の他の用途への展開についてお話いたします。  市場環境の変化に応じて多種多様な製品やサービスを開発してゆく必要性...

1.はじめに  今回は、自社のコア技術の他の用途への展開についてお話いたします。  市場環境の変化に応じて多種多様な製品やサービスを開発してゆく必要性...