WITHコロナの世界は、ビジネス大転換の様相を呈しております。今回は、WITHコロナ時代の知財戦略を解説します。
◆ 三位一体経営と知的財産マネジメント
知的財産戦略は、知的財産をどのようにして有効につくり、保護、活用し、経営に結びつけて行くかという戦略です。
知財戦略のゴールは、ビジネスの成功です。知財の知識を習得しただけでは、ビジネスの結果を出せません。知財戦略、技術戦略、事業戦略を密接に相互に関連させた三位一体経営が必須で、タイミングも重要です。そのためには、中小企業であっても、知財戦略を構築できる戦略的企画創造人財が必要です。
(1)戦略的企画創造人財
戦略的企画創造人財とは、ビジネスの結果が出せる知財戦略を構築できる人です。指導者がおらず、自社内の開発者などを知財戦略担当に充てると、ほとんどのケースで知財戦略が失敗します。中小企業では知財人財に回せる工数が限られており、知財戦略担当者は開発と知財両方を兼務することになると思われますので工数が膨大になり、無理が出るからです。また、外部知財研修を受けて短期間に戦略的企画創造人財になることも難しいと考えます。
(2) 知的財産マニュアル
中小企業経営者のための知的財産戦略の一般的な知的財産マニュアルは、東京都知的財産総合センターから発行されています。[参考文献 1~12]
具体的には、中小企業経営者のための「知的財産戦略マニュアル」、「特許マニュアル」、「実用新案制度活用の手引き」、「意匠マニュアル」、「商標マニュアル」、「著作権マニュアル」、「ノウハウの戦略管理マニュアル」、「技術契約マニュアル」、「技術流出防止マニュアル」、「海外知的財産マニュアル」が作られております。
これらの知的財産マニュアルは、知的財産戦略の解説としては十分ですが、実行に移すには相当な時間がかかります。
例えば、特許出願から権利満了までの概算費用(一発登録:拒絶理由なしの最少費用)は、マニュアルに記載されている弁理士費用平均30万円、弁理士成功謝金平均12万円を含めると約146万円です。内訳は特許明細書15ページ、請求項5、図面5枚、要約書1枚で費用を計算しました。
特許出願の出願から登録までにかかる費用は100万円以上です。
中小企業にとっては、100万円は負担が大きいでしょう。技術アイデアの価値を自社内で評価し、特許出願の可否判断や、技術ノウハウ秘匿の可否判断を行うかなどを決定後、その後の知財対応を考えるべきです。
したがって知財実績と知財経験が十分な指導者に数か月の指導を受けることで、戦略的企画創造人財が養成できると思います。
1、有効特許出願による有効特許の取得方法
特許を出願する場合の有効特許出願による有効特許取得方法について説明します。
有効特許取得方法の流れは次のフローチャートです。
有効特許出願とは、テクノロジーアウトの可能性が高い特許出願または製品実施可能性が高い特許出願です。研究段階、開発段階、製品段階で特許出願内容が異なります。
戦略的企画創造人財がマーケティング情報、学会情報や製品情報を収集します。そしてこれらの情報を他の開発者にフィードバックします。企業規模により収集情報の回覧先は適宜選択します。
次に技術が一番進んでいる国の特許調査を行います。日本が進んでいれば、日本の特許調査を最初に行い、米国や欧州が進んでいれば、外国特許調査を行います。研究段階は論文調査を行います。最近では、一部の技術分野で日本が遅れていて、中国や韓国の特許調査を行う必要性も出てきました。
そして、技術の各段階に応じた発明提案書を作成します。研究段階・開発段階・製品段階でアイデア特許と実施特許は区別した方が良いようです。発明提案書は直接自社出願する場合は、特許明細書を作成しても良いでしょう。加えてマーケティング、特許調査、出願段階の情報と最新の他社製品情報等を考慮して中間処理(特許庁からの拒絶理由通知の対応)も行います。その結果、有効特許取得につながります。
ここで、ITサービスは特許出願がなされている場合が少ないので、特許出願と同一のサービスが実施されていれば、無効理由となります。特許が成立しても潰される可能性があるため、特許調査ステップにおいては、インターネット検索で特許以外のITサービスの技術調査を行う事が重要になります。
2、WITHコロナ後の知財戦略
新型コロナ感染症の拡大によりビジネス活動が世界的に停滞、または中断してしまいました。通常であれば、各国の知的財産法を理解し、各国知財対応すれば良いのですが、政策の不確実性によって世界のビジネス環境が急変することもあります。まず国内出願を優先し、国内でビジネスを考える方向が良いでしょ...