品質管理とは 中小製造業の課題と解決への道筋(その9)

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【中小製造業の課題と解決への道筋 連載目次】

 

第2章 求められる品質管理の発想転換

第5節 なぜ「報連相」が根付かないのか

 社内のコミュニケーション手段である「報連相」は意外と根付かず、苦労している企業も多いようです。なぜ活発化しないのか、活発化させるにはどうすればいいかを考えてみます。

 

1、重要なコミュニケーション手段

 近年は企業内において「コミュニケーション能力が下がった」ともいわれます。それは「メール文化が浸透して、対面コミュニケーションが減ったから」などの説があります。しかし本当のところ、消極的な社員が多い会社の共通点は「上司や先輩に話を聞いてくれる人がいない」、「本音の議論ができる環境がない」ということではないでしょうか。

 「何かあったら報告しなさい」と上司が報告・連絡・相談(報連相)の必要性を説く割には、部下が報告に行っても多忙で十分時間が取れなかったり、自分の言いたいことを押し付けたり、逆にお客様情報や重要な会議の決定事項を部下に伝えない上司など、自らが報連相を守っていないなど、これでは社員は日常、問題があっても、すぐに上司に報告しに行かなくなり「消極的」、「指示待ち」となってしまいます。

 しかし「若手社員向けセミナー」などで、グループディスカッションを行うと、実際はそうではないことが、よく分かります。ディスカッションが進むうちに活発な意見が飛び出すようになるという経験から、このような議論ができる環境づくりがとても重要であることが分かります。極端な例ですが、確かにハロウィンやクリスマスに渋谷に集まって騒いでいる姿は、仕事中とは対照的ですね。でもあのくらいの爆発力を仕事に向けてくれたら、企業の改革も飛躍的に進むと思うのは筆者だけでしょうか。

 

 社内で活発なコミュニケーションを行うチャンスはほとんどないという職場では、形式的な朝礼などで業務上最低限必要な事だけ伝えたり、聞いたりするだけで、朝8時に出社してから夕方5時に退社するまで、ほとんど上司との仕事の打ち合わせや報告もないという状況が続きます。これは単純にジェネレーションギャップの問題として済まされない問題でもあります。

 従って、企業内で「コミュニケーション手段」の一つの方法として「報連相」を活発化することをまじめに検討しなければ問題も先送りされ、改革も進まず、生産性も上がらないまま月日が過ぎてしまいます。そこは、トップや管理層がどういう方法で社員に接するのか、知恵を絞ってほしいものです。では、報連相が活発化しない職場はどのような問題があるでしょうか。

 

 会議や工場の日常の仕事の中でも、チームとして各メンバーの仕事を明確に割り振られていないと、個々のメンバーが、それぞれ好き勝手に動き、しかも何をいつまでに進めているのか分からない…。このような状況の職場は多かれ少なかれ存在します。これでは仕事を前に進める、また意見を取りまとめようにも、まともにまとめることができません。これでは仕事は個人プレーとなって、組織としての力も十分発揮されません。

 上司は部下から報告を受けて、状況を見極め、次の対策を打つため、チーム内の縦横の「報連相」は重要な役割を果たします 。しかし仕事の割り振りや指示が曖昧(あいまい)のままでは、上司が部下に対して「報連相」をあまり期待していないし、何かあれば相談に来いというだけでは、まったくコミュニケーションは成り立ちません。


2、報連相が自然に生まれる

 個人プレーの職場では、当然のことながら「報連相」は必要がなくなり、各自がそれぞれ忙しく仕事をしていますが「周りは何をする人ぞ」の、意思疎通のない組織へと変貌していきます。

 毎日の仕事は5WIH(いつまでに、何を、どこまで、…)が明確になって いなければなりません。期限を必ず設定すること、そして何よりも大事なのは、何をどこまで、どのレベルまで達成させるか、そしてどこまで達成しているのかを逐次確認し合い、お互いに助け合いながら仕事を進めていかなければなりません。

 「1ケ月以内に不良をゼロにする」という課題が現状から見て難しい場合「全ロット100%検査を実施する」というように、「結果」よりも「手段」を目標に設定することも必要になります。そして「期限と達成レベル」は「絶対」に守らせることが重要で、できない言い訳や「できる範囲でやりました」的な曖昧な内容で許してしまってはダメです。

 そこで曖昧にしてしまうと、課題を解決するための努力をしなくなり、期限までのスケジュール管理は行われず、忙しさに紛れて、ずるずると日時が過ぎてしまいます。また未達成で終わることが分かっていても回避策を講じようとしないばかりか、お互いに言い訳を一生懸命に考えるという悪循環に陥ってしまいます。

 

 上司は、部...

 

【中小製造業の課題と解決への道筋 連載目次】

 

第2章 求められる品質管理の発想転換

第5節 なぜ「報連相」が根付かないのか

 社内のコミュニケーション手段である「報連相」は意外と根付かず、苦労している企業も多いようです。なぜ活発化しないのか、活発化させるにはどうすればいいかを考えてみます。

 

1、重要なコミュニケーション手段

 近年は企業内において「コミュニケーション能力が下がった」ともいわれます。それは「メール文化が浸透して、対面コミュニケーションが減ったから」などの説があります。しかし本当のところ、消極的な社員が多い会社の共通点は「上司や先輩に話を聞いてくれる人がいない」、「本音の議論ができる環境がない」ということではないでしょうか。

 「何かあったら報告しなさい」と上司が報告・連絡・相談(報連相)の必要性を説く割には、部下が報告に行っても多忙で十分時間が取れなかったり、自分の言いたいことを押し付けたり、逆にお客様情報や重要な会議の決定事項を部下に伝えない上司など、自らが報連相を守っていないなど、これでは社員は日常、問題があっても、すぐに上司に報告しに行かなくなり「消極的」、「指示待ち」となってしまいます。

 しかし「若手社員向けセミナー」などで、グループディスカッションを行うと、実際はそうではないことが、よく分かります。ディスカッションが進むうちに活発な意見が飛び出すようになるという経験から、このような議論ができる環境づくりがとても重要であることが分かります。極端な例ですが、確かにハロウィンやクリスマスに渋谷に集まって騒いでいる姿は、仕事中とは対照的ですね。でもあのくらいの爆発力を仕事に向けてくれたら、企業の改革も飛躍的に進むと思うのは筆者だけでしょうか。

 

 社内で活発なコミュニケーションを行うチャンスはほとんどないという職場では、形式的な朝礼などで業務上最低限必要な事だけ伝えたり、聞いたりするだけで、朝8時に出社してから夕方5時に退社するまで、ほとんど上司との仕事の打ち合わせや報告もないという状況が続きます。これは単純にジェネレーションギャップの問題として済まされない問題でもあります。

 従って、企業内で「コミュニケーション手段」の一つの方法として「報連相」を活発化することをまじめに検討しなければ問題も先送りされ、改革も進まず、生産性も上がらないまま月日が過ぎてしまいます。そこは、トップや管理層がどういう方法で社員に接するのか、知恵を絞ってほしいものです。では、報連相が活発化しない職場はどのような問題があるでしょうか。

 

 会議や工場の日常の仕事の中でも、チームとして各メンバーの仕事を明確に割り振られていないと、個々のメンバーが、それぞれ好き勝手に動き、しかも何をいつまでに進めているのか分からない…。このような状況の職場は多かれ少なかれ存在します。これでは仕事を前に進める、また意見を取りまとめようにも、まともにまとめることができません。これでは仕事は個人プレーとなって、組織としての力も十分発揮されません。

 上司は部下から報告を受けて、状況を見極め、次の対策を打つため、チーム内の縦横の「報連相」は重要な役割を果たします 。しかし仕事の割り振りや指示が曖昧(あいまい)のままでは、上司が部下に対して「報連相」をあまり期待していないし、何かあれば相談に来いというだけでは、まったくコミュニケーションは成り立ちません。


2、報連相が自然に生まれる

 個人プレーの職場では、当然のことながら「報連相」は必要がなくなり、各自がそれぞれ忙しく仕事をしていますが「周りは何をする人ぞ」の、意思疎通のない組織へと変貌していきます。

 毎日の仕事は5WIH(いつまでに、何を、どこまで、…)が明確になって いなければなりません。期限を必ず設定すること、そして何よりも大事なのは、何をどこまで、どのレベルまで達成させるか、そしてどこまで達成しているのかを逐次確認し合い、お互いに助け合いながら仕事を進めていかなければなりません。

 「1ケ月以内に不良をゼロにする」という課題が現状から見て難しい場合「全ロット100%検査を実施する」というように、「結果」よりも「手段」を目標に設定することも必要になります。そして「期限と達成レベル」は「絶対」に守らせることが重要で、できない言い訳や「できる範囲でやりました」的な曖昧な内容で許してしまってはダメです。

 そこで曖昧にしてしまうと、課題を解決するための努力をしなくなり、期限までのスケジュール管理は行われず、忙しさに紛れて、ずるずると日時が過ぎてしまいます。また未達成で終わることが分かっていても回避策を講じようとしないばかりか、お互いに言い訳を一生懸命に考えるという悪循環に陥ってしまいます。

 

 上司は、部下に期限と達成度を示し、絶対に100%達成させるようメンバーに厳しく接する必要があります。これは上司自身にとっても自分の課題達成のために必要な行動であり、常に自分の業務課題を解決すること、自分にも課題を課すという考え方に基づいていなければなりません。

 期限と目標を絶対守るということを理解すると、メンバーがとる行動は2つに限定されます。一つ目は、まず自分たちで「考えて」やり切る方法を考えます。2つ目は、自分たちで考えても無理な場合の時、上司や先輩などに「相談」してやり切る方法を考えます。そこではじめて、報連相の必要性が生まれてきます。

 一人ではどうしても知恵が回らなくなったとき、そこで初めて「真剣に同僚や上司の力を借りなければ」とする切羽詰まった行動が生まれ、その試練を経験することで部下は育ち、また自然に報連相が生まれる風土が醸成されてきます。そうすることで組織は強くなり、成長を続けることになります。

 課題を設定する時は、必ず「期限と達成度」を設定します。そして途中で報告させ、上司がフォローし、期限と達成度を絶対に守らせることが重要なのです。

 今回で、中小製造業の課題と解決への道筋の連載を終了します。

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この記事の著者

濱田 金男

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に取り組んでいます。

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