1. 半導体活用の課題に対する三つの方策
前回お話した課題について、考えられる方策を3点挙げます。
① カスタム半導体(通常ASIC:Application Specific Integrated Circuit・エーシック)を開発することで「自分専用半導体」として利用できます。洋服でいえば、オーダメイドです。少量・多品種のカスタム半導体を専門とするメーカーもあります。いわばレディメイドの汎用半導体に比べ、費用も時間もかかりますが、自分専用ゆえに強みを上手く組み込めれば、強力な差異化の武器となり技術・ノウハウの秘匿性も期待できます。供給については、一般的に半導体メーカーが無断で製造中止できない供給責任を契約にうたいます。
一方で少なくともカスタム半導体の仕様、製造条件、生産数量・時期などは発注者の責任で決定する必要があり、一定の専門知識や経験が必要です。発注者が回路設計や評価、製造、信頼性確保などに関わることもありますが、これらを代行する各種サービスも多く存在します。カスタム半導体と汎用半導体の中間的な、いわばセミオーダーといえるFPGA(Field-Programmable Gate Array)やマイコンといった製品もあります。
② 可能な限り、ハードウェアに依存しないプラットフォームを用いることです。一般にソフトウェアの互換性を維持するためのOSやデバイスドライバが対象となりますが、ハードウェアについても基板に自由度を持たせる場合や同一メーカーの端子互換品を利用することも可能です。
これによって、比較的容易にその時点で入手性がよく、望ましい仕様を持つ汎用半導体を選択し、製品に用いることができます。ハードウェアからの独立性(非依存性)は一般的に性能面での課題があるため、プロセッサや半導体メーカーの選択に一定の制約が生じる可能性があります。
③ カスタム半導体を独自ではなく、何社か共同で開発することです。この場合、費用や開発の負担を分担することができます。国家や大学の産学協同プロジェクトを活用する可能性もあるでしょう。一方で開発の方向性がまとまらないことや、自社が主導権をとれないリスクもあります。
以下にこれまで述べた課題と方策についてまとめました(図1)。
2. 最先端半導体で差異化図る
組込機器へ半導体を活用するための課題と方策について論じてきました。具体的なイメージをつかむため、図2ではそれぞれの方策を分類した各領域で比較的少量生産に適した事例を挙げています。
これらはあくまで一例で、世界に目を向ければ米Google(グーグル)がカスタム半導体を広く利用可能できる環境を整備し、カスタム半導体の民主化・自由化を目指すという情報があります(文献2)。また、世界中で最先端半導体を用いてビジネスを差異化するスタートアップ企業が生まれています(文献1)。国内においても、産学共同のプロジェクトが始動しました(文献3)。莫大な投資を必要とする半導体工場を非常にコンパクトな形で実現し、工場投資額を1/1000にしようというプロジェクトもあります(文献4)。
半導体の活用は、少量生産の組込機器でも決して...