自社製品を利用した顧客情報の入手(民生品の場合)

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 今回も前回に引き続き、自社製品を利用して利用者情報を入手する方法を、設備機器以外の製品について考えてみます。

1.顧客からのアクションを誘引する

 前回は設備機器を例としてメンテナンスを通じた情報入手を伝えましたが、今回は単価の低い製品や顧客の製品の中に組み込まれてしまう部品や原材料、そして一般の消費財などについて考えます。この場合は、こちらから出向いて修理や保守をする機会があまりなく、またICTを使って自動的に利用情報を吸上げることが困難ですので、利用者に何らかのアクションをとってもらうしかありません。そのための様々な方法について考えて見たいと思います。

 

2.利用者と対面することなく情報を入手する

 これは、基本的に利用者の状況に関わる情報を自社にメール、インターネット、電話等で連絡をしてもらいます。こちらから利用者に出向く必要もなく、利用者もこちらに足を運ぶ必要がありませんので、どちらにもコストがあまりかかりません。


(1)利用者から情報を発信する

 製品が故障したり、利用方法が分からない場合などには、利用者は主体的に情報を発信します。この対応をおろそかにすると、顧客満足度が大幅に低下しますから、従来対応体制は充実させておかねばなりません。

 しかし、その情報の利用法には企業によって大きな差があります。たとえば利用者の質問について、自社のウェブサイト上でFAQで機械的に対応する例が多く、確かに利用者対応コストは大幅に削減できますが、本来の目的である利用者の質問に応えるという面では不十分ですし、なにより利用者の生の声を収集することができません。積極的に利用者の声を集めるために、例えばコンシェルジェなどの人間が対応することも有効です。

 また実際利用者情報を集めていながら、その情報を社内で効果的に共有している企業は多くありません。利用者情報を社内で共有する方法として、例えば米国のオフィス用品メーカーでは、単にカスタマーサポート担当者だけでなく、社員数百人を大講堂に集め、今まさに起こっているカスタマーサポート担当者と利用者との会話を直接聞く機会を毎月設けています。まとめられたレポートでは形式知化された情報しか伝わらないという欠点があり、このような活動によってナマの声を直接聞く機会が、アイデア創出に極めて重要な暗黙知を1人1人の社員に蓄積させるようになります。

(2)利用者に積極的にアプローチする

 製品が故障したり、利用方法が分からなくなった場合は、利用者には情報発信のメリットがありませんから、情報を発信することを期待できません。そんな時に利用者の情報発信を促すためには、企業側が何らかのアクションをとる必要があります。例えばアマゾンのように、購入後に評価依頼のメールを送ったり、カスタマーサポートから製品を使っての問題がないかを電話で聞く、また利用者にその製品に関する管理の容易性を訴えて、マイページを立ち上げてもらうなどの方法があります。

 

3.直接利用者と面会し双方向のコミュニケーションを行なう


 しかし、利用者と面会することのない、上のようなコミュニケーションだけでは、情報量が少なくなる欠点があります。一方次のような方法で直接面会すれば、多くのポイントを突いた情報の入手が可能です。

(1)利用者による自社への訪問

 1つ目が、利用者に自社にまで足を運んでもらうという方法です。例としては、利用者に対してサービス講習を提供するなどの方法があります。例えば先日、携帯電話ショップからスマートフォンの利用法に関する講習案内が来ました。以前からスマートフォンは使っているのですが、スマートフォンの使っていない機能がたくさんありましたので、早速予約をし講習を受けました。ショップではなんと1対1で1時間丁寧に教えてくれたため、良く理解することができました。この方法は、設備機器などではかなり利用されていますが、この例のようにその他の製品でも可能です。また、利用者にメリットがありますので、利用者のメリットの大きさに応じた有償とすることも可能です。

 また、利用者が自社製品の利用に関しより突っ込んだ議論ができるように、実験設備等を用意した場所を整えるといったことも考えられます。

(2)企業が利用者を訪問

 利用者に自社まで足を運んでもらうことは、先方に相当のメリットがなければなりませんので、敷居は高くなります。そのため、こちらから利用者に出向く方法があります。しかし、利用者は日々...

 今回も前回に引き続き、自社製品を利用して利用者情報を入手する方法を、設備機器以外の製品について考えてみます。

1.顧客からのアクションを誘引する

 前回は設備機器を例としてメンテナンスを通じた情報入手を伝えましたが、今回は単価の低い製品や顧客の製品の中に組み込まれてしまう部品や原材料、そして一般の消費財などについて考えます。この場合は、こちらから出向いて修理や保守をする機会があまりなく、またICTを使って自動的に利用情報を吸上げることが困難ですので、利用者に何らかのアクションをとってもらうしかありません。そのための様々な方法について考えて見たいと思います。

 

2.利用者と対面することなく情報を入手する

 これは、基本的に利用者の状況に関わる情報を自社にメール、インターネット、電話等で連絡をしてもらいます。こちらから利用者に出向く必要もなく、利用者もこちらに足を運ぶ必要がありませんので、どちらにもコストがあまりかかりません。


(1)利用者から情報を発信する

 製品が故障したり、利用方法が分からない場合などには、利用者は主体的に情報を発信します。この対応をおろそかにすると、顧客満足度が大幅に低下しますから、従来対応体制は充実させておかねばなりません。

 しかし、その情報の利用法には企業によって大きな差があります。たとえば利用者の質問について、自社のウェブサイト上でFAQで機械的に対応する例が多く、確かに利用者対応コストは大幅に削減できますが、本来の目的である利用者の質問に応えるという面では不十分ですし、なにより利用者の生の声を収集することができません。積極的に利用者の声を集めるために、例えばコンシェルジェなどの人間が対応することも有効です。

 また実際利用者情報を集めていながら、その情報を社内で効果的に共有している企業は多くありません。利用者情報を社内で共有する方法として、例えば米国のオフィス用品メーカーでは、単にカスタマーサポート担当者だけでなく、社員数百人を大講堂に集め、今まさに起こっているカスタマーサポート担当者と利用者との会話を直接聞く機会を毎月設けています。まとめられたレポートでは形式知化された情報しか伝わらないという欠点があり、このような活動によってナマの声を直接聞く機会が、アイデア創出に極めて重要な暗黙知を1人1人の社員に蓄積させるようになります。

(2)利用者に積極的にアプローチする

 製品が故障したり、利用方法が分からなくなった場合は、利用者には情報発信のメリットがありませんから、情報を発信することを期待できません。そんな時に利用者の情報発信を促すためには、企業側が何らかのアクションをとる必要があります。例えばアマゾンのように、購入後に評価依頼のメールを送ったり、カスタマーサポートから製品を使っての問題がないかを電話で聞く、また利用者にその製品に関する管理の容易性を訴えて、マイページを立ち上げてもらうなどの方法があります。

 

3.直接利用者と面会し双方向のコミュニケーションを行なう


 しかし、利用者と面会することのない、上のようなコミュニケーションだけでは、情報量が少なくなる欠点があります。一方次のような方法で直接面会すれば、多くのポイントを突いた情報の入手が可能です。

(1)利用者による自社への訪問

 1つ目が、利用者に自社にまで足を運んでもらうという方法です。例としては、利用者に対してサービス講習を提供するなどの方法があります。例えば先日、携帯電話ショップからスマートフォンの利用法に関する講習案内が来ました。以前からスマートフォンは使っているのですが、スマートフォンの使っていない機能がたくさんありましたので、早速予約をし講習を受けました。ショップではなんと1対1で1時間丁寧に教えてくれたため、良く理解することができました。この方法は、設備機器などではかなり利用されていますが、この例のようにその他の製品でも可能です。また、利用者にメリットがありますので、利用者のメリットの大きさに応じた有償とすることも可能です。

 また、利用者が自社製品の利用に関しより突っ込んだ議論ができるように、実験設備等を用意した場所を整えるといったことも考えられます。

(2)企業が利用者を訪問

 利用者に自社まで足を運んでもらうことは、先方に相当のメリットがなければなりませんので、敷居は高くなります。そのため、こちらから利用者に出向く方法があります。しかし、利用者は日々忙しいのが普通ですし、利用者が納得するような理由がない限り企業の訪問を歓迎することはありません。そこで、製品の販売時から、利用者を訪問する機会を持つ仕組みを全体のプロセスの中に組み込んでおく方法があります。

 例えば、引越し会社の中には、引越し前に荷造り用に提供したダンボールを、引越後新居での荷物の整理が終了したころを見計らって、回収に行くというサービスをしている企業があります。顧客が引越しをすると、そこには引越しだけではなく、様々な製品やサービスを新たに購入する機会がありますので、事後に訪問することで、例えばインターネットのプロバイダー契約や家電の修理などを請け負う可能性があります。それにより、再訪問のコストを回収することができます。このような場を利用して、顧客の引越し時の不満や要望を聞かない手はありません。

 以上、利用者が自社の製品を購入したことで、利用者の手元に自社の製品という「トロイの木馬」が置かれますので、その機会を利用して新たな関係を構築して、製品のアイデアに結び付ける利用者情報を収集することができるのです。

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この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

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