私は以前から日本のものづくり企業の体質に危機感を感じています。私の感じであって、必ずしも日本全体の風潮ではないかも知れませんが、そう感じ始めたのは、振り返るとリーマンショックあたりからでしょうか。
具体的には、企業を取り巻く経済情勢が急激に厳しくなり、本来日本の企業に定着していたはずの各種小集団活動の縮小化、あるいは企業によっては消滅に近い状態ではないかと言うことです。いわゆる現場力であったり、チームワークで会社を支える力の衰弱です。特に、ものづくり企業の国内空洞化加速に伴い、強く感じます。
この危機感および、私の専門であるクリーン化推進のメソッドも加え、2012年秋、定年退職を機にまとめ、出版いたしました。2010年、マレーシアへ行った時、現地の日本の企業の方と企業体質について意見交換をしました。以前は東南アジアから日本に学びに来ることは、自分に箔がつき名誉なことだったのに、残念ながら、現在ではあまり勉強にならないとの感想も聞かれ、海外から見た日本企業の元気のなさに危惧すると言う話がいくつかありました。 私の出版の夢を話したところ、直ぐにでも日本の企業にこの危機感を伝え、警鐘を鳴らして欲しいと言われました。私の感じていることと一致し、このことも背を押しての出版でした。
企業環境が厳しくなると、直ぐに効果、成果が出ない活動は、その大切さを理解している経営者がいないと消えてしまいます。上層部と現場との遊離が起きます。従って、地味に地道にコツコツやるような各種小集団活動に費用をかけることも敬遠されがちではないでしょうか。
例えば、これらに関連するセミナーへの参加者も減少傾向ではないかと推測されます。こういう類のセミナーは、自主的な資格取得とは違い、上司の指示、命令と言う受け身の受講が圧倒的に多いのですが、その為の理解や予算が抑制されていると、その機会が無くなります。仮に受講出来ても、受講後のフォローがどれだけあるか、それを機会に育成する事まで考えているのか疑問を感じる場面も多々あります。セミナーを受講させただけで人財育成になってしまっていないかですね。
この4月に入って海外でクリーン化セミナーを担当する機会がありました。話を進めながらも、翻って日本はどうかとの自問の場でもありました。現在アベノミクス、オリンピック誘致で経済情勢は上向きです。しかしものづくり現場で、どんな努力がされているのか知りたいところです。今まで余裕が無く縮小されて来た、日本の良さをベースにした各種活動が取り戻せているのかに疑問を感じています。各企業に余裕が出て来たこの時期、体質強化のために弱点の補強、修復を急ぐべきだと思います。経済の上向きに沸いていて、本来やるべきことを見失っていないか気になります。
オリンピックを境に景気が停滞、衰退するかも知れないとの推測も話題になりますが、その時までにしっかりとした体質づくりを...