1.マーケティングは科学である
「マーケティングは科学であり芸術である」と言われます。マーケティングは科学であるとは、どういう意味なのでしょうか?以前セールスとマーケティングの基本的な違いは、前者が自社起点であり、後者は市場起点であるというお話をしました。特に後者については良く言われるような「顧客」起点ではなく、「市場」起点であるべきです。
ところが、一言で市場起点を言ってもそれを実現することは、一般的に自社起点や顧客起点に比べ遥かに難しく思えますす。なぜなら、自社起点であれば、自社のことですから大変良くわかります。また顧客起点は、多くの場合顧客が特定できており、場合によっては既に接点を持っていることも多く、なんらかの取っ掛かりから顧客を知るために、少なくともどこから始めれば良いかで迷うことはありません。ところが、市場起点を言うと、市場は多数かつ多様な顧客を含むステークホルダから構成されているので、その正体が不明確になりがちです。市場が見えなければ、当然市場起点に成りようがありません。ここにマーケティングの難しさがあります。
2.見えない市場を見えるようにする「科学」の役割
このチャレンジに対峙し、見えない市場を見えるようにするための武器が「科学」です。どこかの企業のキャッチフレーズではありませんが、「市場を科学する」のがマーケティングを始めるに当っての最重要事項と言っても良いのです。それでは「市場を科学する」にはどうしたらよいでしょうか?1つ1つの具体的視点については語りつくせません、ここでは「市場を科学する」2つの重要な視点について述べます。
2.1 市場を俯瞰する。
まず1つ目が、市場を「俯瞰」することです。英語では、「俯瞰」をbird’s eye viewと言い、「鳥瞰」と言ったりもします。要するに、鳥が高い空から地上を見るように、顧客一社一社のことはとりあえず置いておいて、高い視点から市場を見るという視点です。
マーケティング「戦略」と言われるように、しばしばマーケティングは戦争とのアナロジーで語られます。このやり方を使って、市場を俯瞰する活動を説明すると、まず、周辺の土地(市場)がどこまで広がっているのか?その土地の地形(市場の構造)はどうなっているか?敵(競合企業)はどこにどの程度いるのか?持っている武器はどのようなものか?今後の天候(市場の成長性、その原動力)はどう変わっていくのか? このような点からどこ(自社の標的市場)をどう(マーケティングミックス)攻めたら良いかを決めるわけです。
戦場全体を捉える為に、古来戦略家達は丘の上に登ったり、斥候を派遣したり、今では、衛星や航空機を飛ばして市場を高い所から俯瞰するということをするわけです。戦場の全体を捉えることは戦略構築の基本です。
2.2 市場を虫瞰する。
市場を俯瞰しようと思っても、それは様々な個別情報を統合してみてみるということであり、下地となる個別の情報とその質が問題となり、その実現には個別事象における洞察が求められます。個別事象において洞察を行うためには、細部の観察が必要となります。これが虫瞰の視点です。これは、俯瞰がしばしば鳥瞰といわれ、「鳥」の目であるのに対し、その対極にある細部への観察の視点を同じ動物である「虫」を持って虫瞰と言っています。必ずしも一...