自動運転、AI、5Gなどの技術と、Uberのようなシェアリングエコノミーが融合すると、ビジネスモデルはどう変わるのでしょうか。自動車メーカーは淘汰されて、多くの自動車工場は委託生産専用の工場になるのでしょうか。例えば、AppleがiPhoneの生産委託しているのと同様に、GoogleやApple、 Uberが既存の自動車メーカーの工場を使ってファブレスメーカーにもなり得るのです。
垂直統合型が主流の従来の製造業ではそのビジネスモデルは、企画・開発から製造・販売までワンストップで行うモデルです。一方、技術の進歩やグローバル化を受け、得意な工程について複数の企業が協力し合う水平分業型モデルが世界的に増加傾向にあります。
今回は、水平分業型モデルのファブレスの概要を解説します。
1.ファブレスとは
ファブレスとは、生産工場を持たずに経営するビジネスモデルです。自社開発の商品の製造を他社の工場に生産委託して、自社のブランドで販売を行います。この形態は電子機器・半導体、食品・玩具・ゲームなど多様な業界で見られます。
設備投資が不要なため、1980年代、アメリカで問題となった生産設備の高騰などを背景に、投資費用を抑える経営として話題になったのが始まりです。
2.ファブレスのメリット
(1)企業の強みに回す経営資源
設備・人材の維持に必要な償却費・人件費といったランニングコストを低く抑えられ、設備投資が浮いた分のコストは、企画・開発・設計・販売に集中して、企業の強みとなる製品力、ブランド力を高める経営資源として活用。
(2)市場への新規参入時にハードルが低い
自社工場なしで、製造に必要な人員・設備に対する巨額初期投資が不要です。このため自社にとって新規の市場に参入するハードルが低く、その事業を撤退することになった場合の傷も浅く済みます。製品の商品化が資本力の小さい企業でも可能です。
(3)市場の変化に素早く対応可能
納期・納品数に応じて委託先生産工場を選別できるため、技術革新のサイクルが早い業界(半導体・電子部品)、トレンドの移り変わりが早い業界における市場の変化に素早く対応可能です。
3.ファブレスのデメリット
(1)情報漏えいリスク
自社の製品アイデア・技術ノウハウを委託先に提供しなくてはならないため、機密情報が漏えいするリスクがある。コピー商品を回避するため、セキュリティ対策や守秘義務契約などを含め知的財産権の保護が重要です。
(2)外注コストがかかる
自社が製造しないことで節約できるコストがある一方、生産規模が大きくなるほど、委託先への費用負担が増えていくため、スケールメリットが期待でず、外注費という新たなコストが発生する側面があります。
(3)品質管理が難しくなる
複数工場に委託する場合は、工場間のばらつきが問題になります。品質管理の難易度とコストが高くなるので、製造工程・生産管理・品質管理におけるチェック体制や、不良発生時の再発防止策などを整えなければなりません。委託と迅速な連携がとれるような関係性を築くことが重要です。
4.ファブレス企業の事例
大手企業にもファブレスは多いのですが、次のようなファブレス企業があります。
・ アップル:Apple
・ ダイドードリンコ
・ 船井電機
・ 任天堂
任天堂とアップルを事例としてその実態を知りましょう。
(1)任天堂
ゲームメーカー任天堂は各部品を自社で独自開発せず、ファブレス化することで資金や時間を節約してメイン業務のゲーム開発にファブレス化で浮いた資金や時間をつぎ込んでいます。
(2)アップル:Apple
アップルから2016年秋には865社の日本企業に、3兆円を超える代金が支払われたそうです。アップル...
5.まとめ
ファブレス化は設備投資によるリスクを回避できますので、高品質な製品開発を常に求められ続けるような企業にとって、ファブレス化のメリットは大きいのです。一方、ファブレス化で情報漏洩のリスクが高くなったり、品質管理が難しくなったりするデメリットもあります。ファブレス企業は増えていく可能性があるといわれていますが、万能な業務形態というわけではないという認識が重要です。