ヒューマンエラーの分類 ヒューマンエラーの原因と対策(その2)

 

【目次】

    【この連載の前回:ヒューマンエラーの原因と対策(その1)はこちら】

    1.ヒューマンエラーの分類

    ヒューマンエラーを、発生した状況によって分類してみると有効な対策方法が変わってくることがわかります。「注意する」「再教育する」ではなく、「ヒューマンエラーが発生した状況を解消する」という視点で解決策を検討する姿勢を持ちたいものです。

     

    ①不注意

    ヒューマンエラーの代表的なものが「不注意」です。単純に注意を怠っていた場合はもちろんですが、作業に集中すればするほど周囲への注意が疎かになる傾向(=場面行動本能。注意が一点に集中することで周りが見えなくなり本能的に行動してしまうこと)がありますので、その点にも配慮が必要です。

     

    ②誤認識

    「見間違い」「聞き違い」「思い込み」「勘違い」などによるヒューマンエラーです。似たようなサイズ、重量、外観の材料や部品などは間違いが発生しやすいので、認識マークを付ける、QRコードで機械的に識別するなどの工夫が必要な分野です。

     

    ③不慣れ

    新人にもっとも多いヒューマンエラーですが、担当者が休みでいつもとは違う担当者が作業を行う場合にも発生します。作業に関しての知識が足りなかったり、経験が乏しいために発生しますので、作業前に十分なトレーニングを行う必要がありますし、見るだけでわかるビジュアル的な作業手順書を作成して掲示しておくのも有効です。

     

    ④慣れ・軽視

    「慣れ」によるヒューマンエラーは、キャリアの長いベテランでも起こしてしまう可能性があります。最初のうちは細心の注意を払いながら作業をしますが、徐々に「このくらいは大丈夫」と軽視をしてしまうことによって発生します。現場の管理者が定期的に巡回し、ルール通りの作業をしているか確認する必要があります。

     

    ⑤省略・近道

    「省略・近道」によるヒューマンエラーは、「この手順の方が効率的」という作業者独自の判断で、定められた手順の一部を省略して作業をするために発生します。「なぜその手順が必要なのか」は、経験を積むことによって理解できることも多いですが、最初に作業を任せるときにきちんと説明しておくべきでしょう。

     

    作業担当者が「現状よりも効率的な作業手順」を思いついたときには、勝手に変更するのではなく、現場の管理者に提案し、問題が発生しないことを確認した上で手順書を更新し、その後に作業を変更することを職場のルールとして徹底すると良いでしょう。

     

    ⑥単調な作業

    同じ作業を長時間繰り返していると、誰しも注意や意識が低下してきます。作業内容があまりにも単調になりす...

    ぎないようにする、適度なタイミングで別の作業を行うなどの工夫が必要です。人はどのくらい長く注意を集中できるかを調べた「クロックテスト」という実験があります。クロックテストは、2時間、時計のような実験装置を見つめ、針が2秒分ジャンプをするのを見つけると手元のスイッチを押すというものです。この実験結果では、30分くらい経つと見落としが急に増え、これを注意の「30分効果」と言うそうです。この理由は疲れではなく、同じことをしていると飽きてくる「心理的飽和状態」に陥るからです。

     

    ⑦疲労

    疲労が蓄積すると、様々な能力が低下することは広く知られています。自分の思い通りに頭が働かなかったり、体が動かないことでミスに繋がります。また、視覚、嗅覚、聴覚などを使う官能検査の現場では、疲労に加えて器官の麻痺により正しい認識ができなくなってきます。適度な休憩を入れたり周期的に担当者を交代するなど、疲労や感覚の麻痺に対する対応が必要です。体調管理は各作業者の責任ではありますが、現場の管理者は朝礼などでメンバーの健康状態にも気を配るようにしましょう。

     

    次回に続きます。

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