サプライチェーンにおけるネットワーク情報化は、部品メーカーの激しい自然淘汰による巨大企業出現の可能性を促進します。販売工程を延長し最終顧客に納入するまでのロジスティクスをジャストインタイムの業務工程を同期化することが、サプライチェーンの一般論です。情報インフラにより、サプライチェーン上でのモノの流れの高速化と在庫情報の共有が可能になるため、上記の業務工程同期化が実現します。サプライチェーンマネジメントを支えるのは、全世界にネットワークで広がる低コストなインターネットを利用したインフラです。
部品メーカーとその顧客である完成品メーカー、またはモジュールサプライヤの距離的な制約は、購買システムがインターネットを利用するので、大きな問題ではなくなります。脱系列によって業界の依存体質や、護送船団の保護規制の持たれあいの産業構造から世界を相手に一匹狼でも戦うという事業家は、脱エリア・脱国境を可能にするインターネットによって解き放たれます。いろいろな業界で現実味を帯びてきたサプライチェーン時代を象徴する用語は、「デルするか」「デルされるか」です。
複数の自動車メーカーと複数の部品メーカーを共通のネットワークでつなぎ、部品購入の入札・発注・納期管理を企業の壁・業界の壁を超えて利用できるインフラ構築の試みが、米国の自動車業界における情報通信の技術インフラ「ANX(オートモーティブ・ネットワーク・エックスチェンジ)」です。米ANXと互換性をもたせた電子商取引(E-コマース)を通産省の指揮で実現しようと、日本でも日本自動車研究所、日本自動車工業会と日本自動車部品工業会が実証実験をしました。サプライチェーンの再編成を促し部品メーカーにとって機会と脅威を与えるものは、どこが行なおうとこのようなインフラづくりなのです。優勝劣敗は避けられません。 図1.ANXの構造
VAN、EDI、CALSなど情報通信ネットワークの重要性が以前声高にいわれながらも、これらのインフラは流行語としてすたれてしまいました。コストの安さが、インフラとして普及する条件となります。累積使用料の増大でスケールメリットが出てから、道路も電気・ガス・水道もインフラとして普及しました。何本もあるのに本州と四国を結ぶ本四連絡橋が普及しない原因として指摘されていることは、通行料がインフラとなるほど下げられて...