最先端のSCMテーマ、S&OP SCM最前線 (その6)

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 前回のその5に続いて解説します。
 

3. S&OPで実現される業務

 
 現在行われているS&OPではどのように「数量」と「カネ」の整合を図ろうとしているのでしょうか。テクニカルな話になりますが、基本的な内容のみに絞って概要を説明します。以下に、標準的なS&OPの機能を示します。
 
scm
 

A. 年度予算の策定

 
 S&OPは、年度予算策定における予算に対する数量ベースでSCMオペレーションの裏付けを取るプロセスから始まります。
 
scm
 
 A1は、売上げ・原価の発生タイミングとモノの動きを整合する機能です。つまり、物流と商流におけるモノとカネの動きを連携・並行して計画する機能です。
 
 一般的には、モノの動きは必ずしも売上げや原価の発生と一致しません。事業目標の管理を行おうとするとこの様なズレが現実に問題となってきます。目標が達成されるか、そうでないかの判断基準となるので、S&OPの実現においては重要な機能です。しかし、商流と物流に大きな差がないと判断される場合には、この様な読み替えを行わずにS&OPを行っている場合もあります。
 
 A2は、年度予算策定のプロセスにおいて予算(カネ)に対するSCMオペレーションの実現可能性を担保するためのシミュレーション機能です。
 
  売上げ・原価の予算に対して、それが実際にサプライチェーンで実現可能が検証する機能です。予算で想定されている製品が供給可能かSCMシステムを用いてシミュレーションする事になります。サプライヤーや自社工場の能力あるいは海外から調達リードタイムなど供給可能性、つまり実際にモノが供給できるかSCMシステムを用いて検証します。シミュレーションの結果、供給のボトルネックが明らかになれば、そこに重点的に手を打つことで事業計画達成の確度は大幅に高まることになります。逆に予算に対する供給可能性が担保できないことが判明した場合、代替製品の検討、仕向けの配分の変更など、予算の微調整を繰り返しながら、その実現可能性を高めていきます。
 
 予算に対する供給可能性が担保されなければ、それは単なる絵に描いた餅です。通常、一般のの企業でも概要レベルの供給可能性の確認は行っているはずですが、詳細な確認を行っているわけではなく、実行してみてできないことが発覚する事も少なくありません。
 
 これらを実現するためには、予算(カネ)策定とSCMオペレーション検証を行うためのITシステムの連携が必須です。上記2つの機能を駆使しながら徐々に予算の精度を高めていき、最終的に予算を確定します。
  

B. 日常SCMオペレーション

 
 次は、裏付けの取れた予算の実行によって発生する予実の差異への対応する機能です。
 
scm
 
 B1では、日々のSCMオペレーションの実績を予算と「金額」で比較します。そこで発生する差異に対する対応方針をトップマネジメントと現場が共有の上、決定します。
 
 B2では、対応方針に基づき対応策の具体的なSCMシミュレーションを行い、結果を再度共有し、対応アクションを最終的に決定します。
 
 この様なトップマネジメントを巻き込んだ日常のSCMオペレーションが行えるようになるので、サプライチェーン環境の変化への対応が格段に速くなります。
 

C. 年度予算の見直し

 
 Cでは、日常の対応ではカバーしきれない需要変動や供給環境の変化への経営レベルの対応を実施す...
 前回のその5に続いて解説します。
 

3. S&OPで実現される業務

 
 現在行われているS&OPではどのように「数量」と「カネ」の整合を図ろうとしているのでしょうか。テクニカルな話になりますが、基本的な内容のみに絞って概要を説明します。以下に、標準的なS&OPの機能を示します。
 
scm
 

A. 年度予算の策定

 
 S&OPは、年度予算策定における予算に対する数量ベースでSCMオペレーションの裏付けを取るプロセスから始まります。
 
scm
 
 A1は、売上げ・原価の発生タイミングとモノの動きを整合する機能です。つまり、物流と商流におけるモノとカネの動きを連携・並行して計画する機能です。
 
 一般的には、モノの動きは必ずしも売上げや原価の発生と一致しません。事業目標の管理を行おうとするとこの様なズレが現実に問題となってきます。目標が達成されるか、そうでないかの判断基準となるので、S&OPの実現においては重要な機能です。しかし、商流と物流に大きな差がないと判断される場合には、この様な読み替えを行わずにS&OPを行っている場合もあります。
 
 A2は、年度予算策定のプロセスにおいて予算(カネ)に対するSCMオペレーションの実現可能性を担保するためのシミュレーション機能です。
 
  売上げ・原価の予算に対して、それが実際にサプライチェーンで実現可能が検証する機能です。予算で想定されている製品が供給可能かSCMシステムを用いてシミュレーションする事になります。サプライヤーや自社工場の能力あるいは海外から調達リードタイムなど供給可能性、つまり実際にモノが供給できるかSCMシステムを用いて検証します。シミュレーションの結果、供給のボトルネックが明らかになれば、そこに重点的に手を打つことで事業計画達成の確度は大幅に高まることになります。逆に予算に対する供給可能性が担保できないことが判明した場合、代替製品の検討、仕向けの配分の変更など、予算の微調整を繰り返しながら、その実現可能性を高めていきます。
 
 予算に対する供給可能性が担保されなければ、それは単なる絵に描いた餅です。通常、一般のの企業でも概要レベルの供給可能性の確認は行っているはずですが、詳細な確認を行っているわけではなく、実行してみてできないことが発覚する事も少なくありません。
 
 これらを実現するためには、予算(カネ)策定とSCMオペレーション検証を行うためのITシステムの連携が必須です。上記2つの機能を駆使しながら徐々に予算の精度を高めていき、最終的に予算を確定します。
  

B. 日常SCMオペレーション

 
 次は、裏付けの取れた予算の実行によって発生する予実の差異への対応する機能です。
 
scm
 
 B1では、日々のSCMオペレーションの実績を予算と「金額」で比較します。そこで発生する差異に対する対応方針をトップマネジメントと現場が共有の上、決定します。
 
 B2では、対応方針に基づき対応策の具体的なSCMシミュレーションを行い、結果を再度共有し、対応アクションを最終的に決定します。
 
 この様なトップマネジメントを巻き込んだ日常のSCMオペレーションが行えるようになるので、サプライチェーン環境の変化への対応が格段に速くなります。
 

C. 年度予算の見直し

 
 Cでは、日常の対応ではカバーしきれない需要変動や供給環境の変化への経営レベルの対応を実施する事になります。
 
 scm
 
 Bとは意思決定のレベルの違いがありますが、使用する道具は基本的に同じです。 意思決定の結果が事業目標の再設定となる場合は、Aのプロセスを再実行することになります。 以上が、現在一般的に行われているS&OPの業務機能の概要です。
 
 次回は、事業目標管理におけるS&OPの対象領域から解説を進めます。
  

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この記事の著者

小山 太一

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