フールプルーフを導入しよう 物流品質の向上 (その6)

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1.フール・プルーフとは何か

 工場で物流品質を最高水準に保つためには「人が間違いを犯しにくいしくみ」や、「品質向上に対する意識づけ」、「物流現場における品質マネジメントシステム」が必要になってきます。物流現場の作業者がそれぞれ品質に関する意識を持ち、監督者が日々の現場マネジメントを行っていくことを続けていくことが、工場における物流品質向上には最も効果的であると考えられます。
 
 しかし、人間は100%ミスを発生させないかというと、必ずしもそうとは言い切れないでしょう。このヒューマンエラーを最後に補うものが、フール・プルーフと呼ばれるものです。フール・プルーフとは「よく知らない人が操作を行っても間違いを犯さないしかけのこと」です。身近な例として次のようなものがあります。
 
・自動車のエンジンはトランスミッションレバーがパーキングに入っていないとかからない。
・電子レンジは扉が閉まっていないと加熱できない。
 
 つまり、危険を伴う設備には設計段階から安全対策を織り込み、利用者が誤った操作を行っても危険にさらされることのないように、手を打っておくのです。物流品質不良も誤った作業によって発生する確率が格段に高まります。そこでこのようなフール・プルーフを物流工程に施し、「設備系」でミス発生を防止するしくみも考えていくべきです。
 
 物流工程におけるフールプルーフとは、作業ミス及びそれに起因する種々のトラブルを防止するための作業方法に関する総合的な工夫と言えます。ここでの作業ミスとは、次の3つの条件を満たしている作業において、散発的に発生する記憶・知覚・判断・動作における標準作業からの逸脱です。
 
① 標準作業が確立している。
② 標準作業通り行なえば、目的通りの成果が得られ、物流作業に伴う人的・物的損傷が生じない。
③ 標準作業通りに作業することは、普通の状態であれば、大多数の人にとって簡単である。
 
 また作業方法とは、作業を行なう手順であり、次の要素から構成されます。
 
(1)物流作業の対象となる部品・材料・半完成品 及びこれらの供給方法
(2)物流作業を行なうために使用する設備、機器
(3)作業指示票・標準書・記録票・チェックリストなど、作業に必要な情報及びその提示法
(4)物流作業の手順・順序
(5)物流作業を行う場所の広さ・照度・騒音・障害物・危険物など
 

2.物流フール・プルーフの原則

物流工程でフール・プルーフを導入するには、次の3つの原則を考慮する必要があります。
 
(1)「作業を行わなくてもすむようにすること」  (排除の原則)
(2)「作業を人間に任せないようにすること」   (代替化の原則)
(3)「作業を人間にとって容易なものにすること」 (容易化の原則)
 
 これらについて、図1、図2を参照しながら一つずつ見ていきましょう。まず「排除の原則」について。これはある作業を行わなくてもすむようにすることで、その作業に伴うミスを取り除こうということを意味します。たとえば製品を一つひとつ個装していたとすると、この工程には、個装忘れや個装する際に製品に傷を付けてしまうリスクがあることを考えなければなりません。そこで製品容器に製品形状にくり抜いた緩衝材をあらかじめセットしておくことで個装作業そのものを排除することが可能となります。
 
 次に「代替化の原則」ですが、これは人任せにしている作業を機械化することで作業の精度を向上したり、工数を削減したりすることを指します。たとえば従来はリストに基づき人が判断しながらピッキングを行っていたものをデジタルピッキングに変更し、リストを出力したり、リストを見て判断したりすることをなくしてしまうことが考えられます。
 
                 scm
図1.エラー防止をサポートするツール(1)
 
 最後に「容易化の原則」ですが、これは作業を人間にとって容易化することで作業負荷を軽減することを指します。たとえば重量秤を導入し、ピッキングのダブルチェックをなくすことで作業者の作業精度保持に関する負担を軽減しようとすることが考えられます。
 
                 SCM
図2.エラー防止をサポートするツール(2)
 

3.物流設備投資についての考え方

 物流工程で品質をつくり込むためには、やはり人間の能力だけに頼ることは得策とは言えません。ある程度の導入コストがかかったとしても作業者の肉体的・精神的負荷を緩和してあげるとともに...

1.フール・プルーフとは何か

 工場で物流品質を最高水準に保つためには「人が間違いを犯しにくいしくみ」や、「品質向上に対する意識づけ」、「物流現場における品質マネジメントシステム」が必要になってきます。物流現場の作業者がそれぞれ品質に関する意識を持ち、監督者が日々の現場マネジメントを行っていくことを続けていくことが、工場における物流品質向上には最も効果的であると考えられます。
 
 しかし、人間は100%ミスを発生させないかというと、必ずしもそうとは言い切れないでしょう。このヒューマンエラーを最後に補うものが、フール・プルーフと呼ばれるものです。フール・プルーフとは「よく知らない人が操作を行っても間違いを犯さないしかけのこと」です。身近な例として次のようなものがあります。
 
・自動車のエンジンはトランスミッションレバーがパーキングに入っていないとかからない。
・電子レンジは扉が閉まっていないと加熱できない。
 
 つまり、危険を伴う設備には設計段階から安全対策を織り込み、利用者が誤った操作を行っても危険にさらされることのないように、手を打っておくのです。物流品質不良も誤った作業によって発生する確率が格段に高まります。そこでこのようなフール・プルーフを物流工程に施し、「設備系」でミス発生を防止するしくみも考えていくべきです。
 
 物流工程におけるフールプルーフとは、作業ミス及びそれに起因する種々のトラブルを防止するための作業方法に関する総合的な工夫と言えます。ここでの作業ミスとは、次の3つの条件を満たしている作業において、散発的に発生する記憶・知覚・判断・動作における標準作業からの逸脱です。
 
① 標準作業が確立している。
② 標準作業通り行なえば、目的通りの成果が得られ、物流作業に伴う人的・物的損傷が生じない。
③ 標準作業通りに作業することは、普通の状態であれば、大多数の人にとって簡単である。
 
 また作業方法とは、作業を行なう手順であり、次の要素から構成されます。
 
(1)物流作業の対象となる部品・材料・半完成品 及びこれらの供給方法
(2)物流作業を行なうために使用する設備、機器
(3)作業指示票・標準書・記録票・チェックリストなど、作業に必要な情報及びその提示法
(4)物流作業の手順・順序
(5)物流作業を行う場所の広さ・照度・騒音・障害物・危険物など
 

2.物流フール・プルーフの原則

物流工程でフール・プルーフを導入するには、次の3つの原則を考慮する必要があります。
 
(1)「作業を行わなくてもすむようにすること」  (排除の原則)
(2)「作業を人間に任せないようにすること」   (代替化の原則)
(3)「作業を人間にとって容易なものにすること」 (容易化の原則)
 
 これらについて、図1、図2を参照しながら一つずつ見ていきましょう。まず「排除の原則」について。これはある作業を行わなくてもすむようにすることで、その作業に伴うミスを取り除こうということを意味します。たとえば製品を一つひとつ個装していたとすると、この工程には、個装忘れや個装する際に製品に傷を付けてしまうリスクがあることを考えなければなりません。そこで製品容器に製品形状にくり抜いた緩衝材をあらかじめセットしておくことで個装作業そのものを排除することが可能となります。
 
 次に「代替化の原則」ですが、これは人任せにしている作業を機械化することで作業の精度を向上したり、工数を削減したりすることを指します。たとえば従来はリストに基づき人が判断しながらピッキングを行っていたものをデジタルピッキングに変更し、リストを出力したり、リストを見て判断したりすることをなくしてしまうことが考えられます。
 
                 scm
図1.エラー防止をサポートするツール(1)
 
 最後に「容易化の原則」ですが、これは作業を人間にとって容易化することで作業負荷を軽減することを指します。たとえば重量秤を導入し、ピッキングのダブルチェックをなくすことで作業者の作業精度保持に関する負担を軽減しようとすることが考えられます。
 
                 SCM
図2.エラー防止をサポートするツール(2)
 

3.物流設備投資についての考え方

 物流工程で品質をつくり込むためには、やはり人間の能力だけに頼ることは得策とは言えません。ある程度の導入コストがかかったとしても作業者の肉体的・精神的負荷を緩和してあげるとともに、結果として品質を保証するための物流フール・プルーフの導入が必要となる工程もあるでしょう。そして最後には「必要な所にはお金をかける」といった措置も必要でしょう。短絡的に収益確保のための余分な出費ととらえ、本来かけるべきお金を節約したために「物流品質不良」を発生させ、大きな損失を招いてしまったのでは、本末転倒です。工場管理者の皆さんには大局的な見方をすることでぜひ物流品質を保証するしくみを確立していただきたいと思います。
 
 それでは今回の改善のテーマをお伝えします。ぜひ工場で実践して下さい。
 
◆物流品質保証を作業者の判断のみに頼っている工程がないかチェックしよう
①リストやオーダーシートを見て判断している工程はないだろうか
②何度も数え直して数量をチェックしている工程はないだろうか
 
◆物流のフール・プルーフを考えてみよう
①デジタルピッキング装置の導入が有効な工程はないだろうか
②重量秤を導入すればミスが減る工程はないだろうか
 
  この文書は、『日刊工業新聞社発行 月刊「工場管理」掲載』の記事を筆者により改変したものです。
 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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