1.物流現場マネジメントによる品質管理の実践
前回の第4回に続いて解説します。工場では製造部門ではきっちりとした標準作業書が作成され、監督者による日々の作業観察が行われています。現場マネジメントがしっかりと回っているため、世界最高水準の品質と、競争力を誇ることができるのです。一方で物流現場はどうでしょうか。製造現場と同レベルの管理ができていれば問題ないでしょうが、往々にして物流はそこまでの水準に至っていないことが多いようです。一般的に製造会社ではものづくりに対する関心は高くても、物流に対しては気が回らないことがほとんどです。ものづくりは加工と運搬の繰り返しであり、物流も製造の一部であるという意識があればそのようなことにはならないのでしょう。
もし御社も同様であるならば、物流現場にもしっかりとしたマネジメントシステムを導入すべきです。若干の工数を要しますが難しいことは一切ありません。物流作業に対する現場マネジメントツールを作成し、それをもとに監督者がマネジメントしていくことを実践していきましょう。第一歩として「物流版標準作業書」と、図1のような「物流品質管理項目一覧表」を作成します。「物流版標準作業書」の中には特に物流品質を保持するために気をつけるべき急所を記載し、できれば文字だけではなく、写真を入れることをお勧めします。たとえば供給時には「投入間口の製品番号」と通箱に添付されている「ラベルの製品番号」とを声を出して照合する、という作業上の急所を写真と文字で示すのです。
図1.物流品質管理項目一覧表
「物流品質管理項目一覧表」には、特に物流品質で留意すべき作業について、監督者が何をどれくらいの頻度でチェックすべきかを記載します。たとえば、供給作業について作業者が先に示した通りの作業点順で行っているのかを日に2回チェックする、といった具合に記載するのです。また監督者が確実に「物流品質管理項目一覧表」に基づく作業観察を実施した記録も残しておく必要があるでしょう。
2.物流QRQC活動の実践
QC活動は、今や製造部門にとどまらず、スタッフ部門にまで浸透しているものと思われます。職場での小集団で問題解決するための活動は多くの工場で一般的になっています。物流も例外でありません。おそらく小集団活動としてQCサークルを結成して取り組んでいるでしょう。物流現場ではこのQC活動に加えて「QRQC」活動も導入したいところです。「QRQC」とは「Quick Response Quality Control」の略で、職場で発生した品質問題を「直ちに」解決するための手法です。この活動の責任者は物流監督者です。メンバーは自職場の作業者のみならず関連部門のスタッフも含みます。やり方としては、品質問題が発生した日または翌日中に関係者で集まり、その場で対策と歯止めを決定していくことになります。
たとえば、供給時に誤品投入をしてしまったために組立工程で誤組み付けが発生してしまったとします。このケースでは、供給担当の物流監督者、供給担当者、組立工程の監督者、組立作業者そして品質保証担当者がメンバーになるでしょう。このメンバーが集まり、特性要因図などを活用し誤品投入の真の要因を把握し、その場で対策を決定します。もちろん歯止めをかけることも忘れてはなりません。原則としてQRQCミーティングは30分程度で終わらせることが望ましいものです。ミーティング後に間を空けることなく、対策を実施することになります。このケースでは、供給準備場で紛らわしい部品が隣同士に置かれていたためそれを間違って供給してしまったのであれば、すぐに部品置場のレイアウトを変更します。供給作業者が標準作業を怠ってしまったのであれば、その場で作業をやらせて問題を修正させるように指導します。この活動のポイントは徹底した「Quick Response」なのです。
3.物流品質管理ボードの設置
もし物流現場に、図2のような物流品質管理ボードが設置されていないのであればすぐに設置しましょう。このボードは更衣室や食堂など誰もが目にすることができる施設の近辺か通り道に設置することが望ましいです。皆が物流品質に関心を寄せるようなしかけづくりも、重要な品質マネジメントといえます。
図2.物流品質管理ボード
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