第7回 道具5「物流評価シート」(上)
前回のその6に続いて解説します。
1.物流評価の目的を理解しよう
海外で物流支援を行う際に大変役に立つのが「物流評価シート」です。現地人を納得させるためにも、物流会社の客観的パフォーマンスを把握するためにも無くてはならない存在です。そこで今回はこの「物流評価シート」について解説します。
評価というとあまり良いイメージを持たれない方も多いのではないでしょうか。昔から学校では成績評価が行われ、社会人になると業績評価が行われています。この評価は単に今の実力を測定するだけにとどまりません。自分の強み、弱みを明確にするとともに弱点を補強していくためのツールであることは明白です。心情的には「評価される」ことはあまり気持ちの良いものではないかもしれません。しかし、それを上手く活用することで自分を成長させることが可能であることは誰しもわかっているはずです。
海外物流支援を行う際にも現地工場の業務のパフォーマンスを評価し、弱点を修正していくことにより厳しい企業間競争に打ち勝っていかなければなりません。ぜひ前向きにとらえて進めましょう。
さて本題ですが、ある物流評価の目的について考えてみましょう。現地物流業務が果たして社内・社外の顧客から見て満足できる水準にあるのでしょうか。これに自信を持って答えられなければなりません。顧客は概して自分が期待しているレベル以上の仕事をしてもらって初めて満足するものです。この期待値以上のレベルの仕事をしていくためには最低でも「現状の実態を把握」しておかなければなりません。これが第一の目的です。
では顧客の期待値以上のレベルとはどういった水準なのでしょうか。これはベンチマーク活動を行う中で見えてくるものです。物流評価を行う際にはぜひベンチマーク値を考慮してハードルを設定しましょう。現在は、Aの水準だが、来年は、Bの水準まで向上しベンチマークを達成しようといった「段階的レベルアップの動機づけ」が第二の目的です。
さらに自社にとどまらず、自社グループ全体の底上げが必要です。つまり協力会社やアウトソース先の物流会社を含めてレベルアップしなければ競争に勝ち残ることは難しいのです。この「自社のパートナーの現状把握と改善活動」も必要で、こういった活動を行っていくためにも物流評価は必要になるのです。これが第三の目的ということになります。
現状を把握し、ステップアップのためのハードルを設定し、自社だけでなくパートナーまで広げグループ全体で厳しい競争に打ち勝っていくことが物流評価の目的なのです。
2.結果系評価項目と要因系評価項目
物流評価を行う際には「結果系評価項目」と「要因系評価項目」の2種類が必要になります。「結果系評価項目」は日常の物流業務を行った結果として表れる項目です。これには売上高物流費比率や誤供給発生率などが含まれます。「要因系評価項目」は結果系評価項目につながる要因となる項目で、これにはトラック積載率や標準作業遵守率などが含まれるます。結果系項目は今の実力を示すことができるが、その実力を向上するためには要因系項目を見ていかなければなりません。つまり、この2種類をバランスよく把握していくことがステップアップには欠かせないのです。何を結果系の評価項目とし、何を要因系の評価項目とするかについて考えてみましょう。
3.物流評価シート作成時のポイント
設定しようとする項目には出来ている、出来ていないといった百かゼロかといったものもあるでしょう。しかし大抵の場合には水準を評価することになります。その値が小さければ良いとされる「売上高物流費比率」を例にとれば、ベンチマークは2.5%だが現状は、3.5%だったとします。一気に、2.5%まで改善することが困難な場合にはその中間点を設けましょう。評価は、4段階で行うことをお勧めします。今の例でいけば、2.5%は4点、3.0%が3点、現状の3.5%を2点、それよりも悪い値であれば1点とすることが考えられます。併せて、項目ごとに重みづけをして、より重要な項目は評価点を倍にするなどで、総合点を集計するにあたってメリハリをつけていくと良いのです。評価シート作成のポイントは、図1を参照して下さい。
図1.物流評価シート作成時のポ...