外国人に「外国人なのに日本語お上手ですね。」女性に「得意料理は何ですか?」障害を持っている人に「頑張っているね。」など。日常的に聞くことがあるこれらの会話に、何か問題があるのか。と感じられるかもしれません。現代社会においては日常会話に【マイクロアグレッション】という無意識の差別が含まれている可能性があることを注意する必要があります。今回は、私たちの中にある思い込みが招く【マイクロアグレッション】について解説します。
【目次】
1. マイクロアグレッションとは
2. 自覚なき差別
3. 思い込みとなりえるもの
4. マイクロアグレッションを防ぐためには
5. まとめ
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1. マイクロアグレッションとは
マイクロアグレッションとは、特定の属性の人に対する先入観や、固定概念による勝手な解釈によって、否定的なメッセージを与えてしまうこと。意図しなくても、かけてしまう言葉によって相手を傷つけてしまう行為です。
マイクロアグレッション(Microaggression)という言葉は「小さな」を意味する【マイクロ:micro】と「攻撃する」を意味する【アグレッション:Aggression】が掛け合わされた言葉で、1970年代にアメリカの精神医学者であるチェスター・ピアス氏が提唱しました。
アフリカ系の人に対し、アフリカ系以外の人が日常的に使っていた言葉の中に、人種差別的な要素が含まれている。と警鐘をならしたことが始まりでした。日本でもここ数年、多くのメディアが発信するようになり、学校教育や、社内研修でもコミュニケーションのあり方を見直すテーマとして取り上げられるようになりました。
2. 自覚なき差別
2.1 攻撃をしている?
故意に投げつける差別的な言動は別途その闇を語る場が必要ですが、マイクロアグレッションとされる小さな攻撃の多くは意図しない無意識下の行為です。自分ではしている意識がない無自覚の状態で、相手を傷つけてしまう厄介な差別です。本人なりには褒めたつもりの言葉だったとすれば、身を正すのは不本意であり、テーマとして振り返ってみましょうと投げかけることは「瞬間的なことで誰も気づいていることではない」「攻撃だなんて考えすぎだ」「取り上げる必要もない些細なことだ」と反論があるのも確かです。
2.2 隠されたメッセージ
冒頭の言葉に隠されたメッセージとはどのようなものでしょうか。
- 外国の人に「外国人なのに日本語お上手ですよね。」の裏メッセージは《外国人は日本語が苦手》
- 女性に「得意料理は何ですか?」の裏メッセージは《 女性なら料理が出来て当たり前》
- 障害を持っている人に「頑張っているよね。」の裏メッセージは《 障害を持っている人は不自由》
「~なのに」「~だから、〇〇」という思い込みや決めつけが隠れているとはいえないでしょうか。
2.3 思い込みによって少ない情報を補完している
「外国人」「女性」「障害を持っている人」に属性をあてはめてしまうのは思い込みといえます。
情報がない人(たち)とコミュニケーションとるとき、目の前の情報から想像し、スムーズな伝達を試みるのは間違いではありません。しかし、情報の少なさから、〇〇だろう。〇〇に違いない。とカテゴライズするのは、経験値や不特定多数のイメージで補完するため、確かさは二の次となり、目の前の人を無視したことになります。
2.4 受けた側
たとえ些細な言葉であっても、継続的に聞いたり、周囲に誤解として広がれば、受けた側はストレスを感じ、パフォーマンスも落ちます。自尊心が傷つき、モチベーションが下がっても、日常の些細な事と認識されるため、声を上げることが出来ず、我慢するしかありません。
3. 思い込みとなりえるもの
人は、生きていく様々な場面で選択をするとき、自分の中の知識を総動員しています。実際に経験をしなくても、相対的な知識としてあらゆる情報を検索することが可能になりました。しかし、人が知りえる情報には限りがあります。
知り得た情報が必ずしも正しいとはいえませんし、今の正しさが1年後の正しさとはならない不透明さも持っています。どの国の、いつの時代の、誰にとっての正しさなのかを検証するのは不可能に近いといえるでしょう。
私たちは確かな情報知識や経験則の中で生きていると思いがちですが、多種多様、多角的な世の中にあっては、それらの見識は思い込みと表裏一体であることを自覚する必要がありそうです。
4. マイクロアグレッションを防ぐためには
4.1 想像してみる
冒頭の場面。もしかしたら外国の人は日本生まれで日本語しか話せないかもしれません。女性は先端恐怖症で包丁が持てないのかもしれません。障害を持っている人は、その状況をまだ受け止め切れていないかもしれません。もちろん真実は分かりませんし、冒頭の声掛けを「悪意がある」と決めつけて糾弾を促したいわけではありません。それぞれの背景や立場を想像してみると、思い付きやイメージだけではない関わり方のヒントが得られる...
4.2 回避
自動車の運転で「かもしれない運転」というものがあります。危険予測運転とも言い換えられ、危険な事態を予測することで事故を回避するのに有効な手段です。「こうなるかもしれない」と予測することは人との関りおいても大切なポイントになり、マイクロアグレッションにも効果は期待できます。
4.3 疑う
もっとも重要だとお伝えしたいのは「どうなるだろうか」と疑ってみることです。
「かもしれない」の軸は自分にありますが「どうなるだろうか」は自分の行為の先にある相手の情報を想像する必要があるため、軸は相手に向います。相手に気持ちを寄せることは、自分と向き合うことにもなり、決めつけたり思い込んだりする以外の選択肢が広がることに期待が持てます。客観的な視点は人と関るあらゆる場面でも活きてきます。
5.まとめ
4項で、軸を相手にすることが有効とお伝えしましたが、何事も一朝一夕に事は運びません。大事なのは気づいて、行動するきっかけを得ることです。ご意見をお待ちしています。