サプライチェーンにおける収益向上のメカニズム

更新日

投稿日

 オペレーションの連携、すなわちシンクロナイゼーションがサプライチェーンマネジメントの課題です。一般的なジャストインタイムの定義は、必要なものを、必要な時に、必要な量だけ、必要なところへ、供給することですが、そのためには需要の速度に合わせて供給連鎖のオペレーションが同期化されていなければなりません。同期化されていない場合の状態を理解すれば、同期化の本質を理解できます。病気のメカニズムを理解することによって、健康状態についての知識が初めて分かるからです。 

 需要と供給が同期化されていなければ、資材過多・生産能力不足による「過剰在庫」からリードタイム(納期)が長くなり資金が滞留し、一方、稼動率低下という「機会損失」もおきます。一般的に非同期化現象によって発生する現象は、「欠品」や「過剰在庫」、すなわち、製品があっても販売力がない、販売力があっても製品がない、生産力はあっても販売力がない、生産力はあっても部品がない、部品があっても副資材がないなどが挙げられます。こういった現象がキャッシュフローであるスループット、すなわちサプライチェーンを通して流れる物量のスピードを落とす原因になります。

 資機材と人を含む限られた経営資源能力の同期化の問題が、化学プラント建設のプロジェクトをどれだけこなせるかを決定する一番大きなファクターとなります。会計上の収益構造でみれば、一定期間あたりの出荷、すなわち売り上げ(プロジェクト案件数×契約金額)や原材料費はスループットから影響を受けますし、保管費用や運転資金コストは在庫(未成工事支出金)に影響を受けます。

 シンクロナイズドされたオペレーションの実施によるサプライチェーン通過のリードタイム短縮から、スループットを増大させることができます。またスループットは、プロダクトミックス(プロジェクトミックス)を、サプライチェーン上の能力制約・材料制約のもとで、需要に合わせてどのように選ぶかの選択によっても増大します。固定費(管理販売費)の対売上比率が低下するので、スループットの増大により収益性が上がります。入札価格政策・営業拠点や営業マンの販売力のマネジメントは、需要が制約となる場合の需要を上げる手段となります。

 プロジェクトマネジメントの最重要課題は、時間軸上で需要に同期化するサプライタイミングの決定ではないでしょうか。化学装置の調達拠点・物流拠点の政策や配置政策、代替材料・代替供給対策、また汎用品の見込み手配、輸送手段や設備の有効活用など、化学プラントのプロジェクトマネジメントのインフラとして組織機能を設計することや、リードタイム短縮のバッチサイズ縮小で「流れ」をつくる同期化手法が、収益向上につながります。 

 収益構造のそれぞれの会計要素とは対応せずに、サプライ...

 オペレーションの連携、すなわちシンクロナイゼーションがサプライチェーンマネジメントの課題です。一般的なジャストインタイムの定義は、必要なものを、必要な時に、必要な量だけ、必要なところへ、供給することですが、そのためには需要の速度に合わせて供給連鎖のオペレーションが同期化されていなければなりません。同期化されていない場合の状態を理解すれば、同期化の本質を理解できます。病気のメカニズムを理解することによって、健康状態についての知識が初めて分かるからです。 

 需要と供給が同期化されていなければ、資材過多・生産能力不足による「過剰在庫」からリードタイム(納期)が長くなり資金が滞留し、一方、稼動率低下という「機会損失」もおきます。一般的に非同期化現象によって発生する現象は、「欠品」や「過剰在庫」、すなわち、製品があっても販売力がない、販売力があっても製品がない、生産力はあっても販売力がない、生産力はあっても部品がない、部品があっても副資材がないなどが挙げられます。こういった現象がキャッシュフローであるスループット、すなわちサプライチェーンを通して流れる物量のスピードを落とす原因になります。

 資機材と人を含む限られた経営資源能力の同期化の問題が、化学プラント建設のプロジェクトをどれだけこなせるかを決定する一番大きなファクターとなります。会計上の収益構造でみれば、一定期間あたりの出荷、すなわち売り上げ(プロジェクト案件数×契約金額)や原材料費はスループットから影響を受けますし、保管費用や運転資金コストは在庫(未成工事支出金)に影響を受けます。

 シンクロナイズドされたオペレーションの実施によるサプライチェーン通過のリードタイム短縮から、スループットを増大させることができます。またスループットは、プロダクトミックス(プロジェクトミックス)を、サプライチェーン上の能力制約・材料制約のもとで、需要に合わせてどのように選ぶかの選択によっても増大します。固定費(管理販売費)の対売上比率が低下するので、スループットの増大により収益性が上がります。入札価格政策・営業拠点や営業マンの販売力のマネジメントは、需要が制約となる場合の需要を上げる手段となります。

 プロジェクトマネジメントの最重要課題は、時間軸上で需要に同期化するサプライタイミングの決定ではないでしょうか。化学装置の調達拠点・物流拠点の政策や配置政策、代替材料・代替供給対策、また汎用品の見込み手配、輸送手段や設備の有効活用など、化学プラントのプロジェクトマネジメントのインフラとして組織機能を設計することや、リードタイム短縮のバッチサイズ縮小で「流れ」をつくる同期化手法が、収益向上につながります。 

 収益構造のそれぞれの会計要素とは対応せずに、サプライチェーンの経営課題は複雑にからみあっています。例えばスループットを上げるための在庫削減はリードタイム短縮につながり、原材料コスト(直接工事費)削減にも、在庫コスト削減にも、売上増大にも、また固定費低減すなわち減価償却費・労務費などにも寄与します。そのメカニズムは複雑系のパラダイムで説明する必要があるので、要素に分割して理解する分析的方法には基づきません。キャッシュフローに関するサプライチェーンに関し、たとえば化学装置の設計・製造を担当する技術者であったとしても無関心で済まされる時代ではなくなっているのです。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

今岡 善次郎

在庫が収益構造とチームワークの鍵を握ります。人と人、組織と組織のつながり連鎖をどうマネジメントするかを念頭に現場と人から機会分析します。

在庫が収益構造とチームワークの鍵を握ります。人と人、組織と組織のつながり連鎖をどうマネジメントするかを念頭に現場と人から機会分析します。


「サプライチェーンマネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
最先端のSCMテーマ、S&OP SCM最前線 (その6)

 前回のその5に続いて解説します。   3. S&OPで実現される業務    現在行われているS&OPではどの...

 前回のその5に続いて解説します。   3. S&OPで実現される業務    現在行われているS&OPではどの...


化学装置のサプライチェーンとキャッシュフロー

 ビジネスは企業間もしくは企業内の金の流れと、その反対方向のモノの流れと、それらの流れを制御するデマンドとサプライを駆動させる情報系でモデル化でき、供給オ...

 ビジネスは企業間もしくは企業内の金の流れと、その反対方向のモノの流れと、それらの流れを制御するデマンドとサプライを駆動させる情報系でモデル化でき、供給オ...


サプライチェーンマネジメントの最終目標とは

 サプライチェーンマネジメントは、企業のキャッシュフローのスピードを上げて、企業の生命力を強くすることが最終目標です。血液の流れが円滑であることが生命力の...

 サプライチェーンマネジメントは、企業のキャッシュフローのスピードを上げて、企業の生命力を強くすることが最終目標です。血液の流れが円滑であることが生命力の...


「サプライチェーンマネジメント」の活用事例

もっと見る
グローバルサプライチェーンへの貢献(その1)

 製造業を中心に日本に留まらず世界で戦うことが求められてきています。製造業が海外進出することに伴って物流会社の海外進出も珍しくなくなってきました。 ...

 製造業を中心に日本に留まらず世界で戦うことが求められてきています。製造業が海外進出することに伴って物流会社の海外進出も珍しくなくなってきました。 ...


物流に加わる情報機能 新たな発想で仕事を広げる・仕事を変える(その1)

◆ 物流5機能にとらわれるな  どのような仕事でも長年従事していると仕事の進め方、やり方に慣れてしまい、それが当たり前になってしまいます。また、仕事...

◆ 物流5機能にとらわれるな  どのような仕事でも長年従事していると仕事の進め方、やり方に慣れてしまい、それが当たり前になってしまいます。また、仕事...


行動につながる「見える化」とは 本当の見える化で効率向上(その1)

◆ 物流作業の急所を端的に示す  物流現場がすっきりしたところで今度は物流活動の各アクションにつながるように「見える化」を進めていきましょう。アクシ...

◆ 物流作業の急所を端的に示す  物流現場がすっきりしたところで今度は物流活動の各アクションにつながるように「見える化」を進めていきましょう。アクシ...