最近、年齢を重ねたせいなのか、イライラすることが増えてきました。これは、前頭前野の情報処理能力が落ちて、イライラ感を感じやすくなるんだそうです。先日も、出張先に向かう際、駅の階段で「この電車に乗らないと、新幹線に間に合わない!」と思いながら、人の流れに乗って階段を降りていたのですが、なにかおかしい。とにかく、流れが遅い。めちゃくちゃ遅い。そして、流れが遅いのはなぜだろうと前を見たら、スマホ歩きをしている人がいて、その人がボトルネック(停滞箇所)になっていました。流れを邪魔することもそうなのですが、これは危険だなぁ~と感じました。今回は、マインド・ワンダリングとは、歩きスマホが招くリスクについておはなしします。
1. 歩きスマホの危険性を紐解く
私が体験したように、あなたも日常生活の中で「歩きスマホ」をしている人を目にすることが多いのではないでしょうか?
スマートフォンは私たちの生活に便利さをもたらしましたが、一方で新たなリスクも生じています。そのリスクについて、心理学や脳科学の視点から考えてみたいと思います。まず、脳の働きに注目してみましょう。私たちの脳は、情報を処理するための認知資源が限られています。
つまり、使えるエネルギーが限られているのです。スマホを使用していると、その注意の大部分にエネルギーを使ってしまいます。そうすると、周囲の状況を認知することにエネルギーを回せず、周囲への集中が散漫になります。この現象は「選択的注意」と呼ばれ、特定のタスクに集中すると他の情報に気づきにくくなります。
歩きスマホをしていると、交通信号や他の歩行者、車の動きなど、重要な情報を見逃す危険が高くなるのです。そして、スマホの使用は脳内の報酬系を刺激します。特にソーシャルメディアやゲームは、このコラムの中でもたくさん登場しているドーパミンの分泌を促進し、快感や報酬感を引き起こします。
ドーパミンは注意を引き付け、集中力を維持する役割もあるのですが、スマホ使用中は周囲への注意が散漫になりがちです。歩行中にスマホを操作すると、周囲の危険に対する認識が鈍くなり、事故のリスクが高まります。
2. マインド・ワンダリングとは
スマホの使用は「マインド・ワンダリング(心の彷徨)」を引き起こしやすくなります。「マインド・ワンダリング」とは、次のような例が挙げられます。
- 会議中に、今日のランチは何を食べようか考えている
- 読書中なのに、ストーリーに集中できず、仕事のことを考えている
- 機械の操作中に、人間関係の悩みを考えたりする
「マインド・ワンダリング」は、創造性や問題解決時の”ひらめき”など、時には良い方向に繋がることがあります。しかし、SNSをスクロールしている時や、ゲームをしている時など、意識がスマホに完全に向けられている状態では、現在の環境から意識が離れ、内的な思考やファンタジーに入り込みやすくなります。
歩行中にこの状態に陥ると、足元の障害物や周囲の動きに気づきにくくなり、転倒や衝突のリスクが高まります。視覚と聴覚が、主にスマホの情報に集中することで、周囲の音や動きに気づきにくくなります。例えば、イヤホンを使用して音楽を聴いていると、周囲の会話や警告音などを聞き逃す可能性が高まります。歩きスマホをしていると、マインド・ワンダリング(こころがさまよい)、交通音や他の歩行者の動きに気づかなくなるのです。
私たちの脳は、スマホの使用に対して多くのリソースを割いてしまうため、周囲の状況に対する意識が薄れがちです。歩きスマホは、自分自身だけでなく、周囲の人々にとっても危険を伴います。あなたも、歩行中はスマホを使わず、周囲の状況に注意を払い、...