先日、お客様と話をしているとき、こんなことを話されていました。その方は、長年の努力の末に手掛けた、新製品の発表イベントに立ち会うために、会場へと足を運んだそうです。そこには、数々のステイクホルダーが集まり、新製品の成功に高い興味を抱いていたとのこと。その方は、胸が高鳴り、これから始まるポジティブな成果に夢を馳せていたそうです。
そして、イベントが進行する中、顧客の代表がその方に近づき、突然こう言ったそうなんです。「○○さん、ぜひ一言、スピーチをお願いできませんか?」その瞬間、彼の心臓は一瞬で凍りついたそうです。何も準備していなかった彼は、何を話せば良いのか分からず、頭が真っ白になってしまったそうです。
とりあえずその方は、ひな壇には立ったそうなのですが、来場者の期待に応えられるかという不安で、胸が締め付けられる思いを抱いていたとのこと。また、喉の奥が乾いていくのを感じ、言葉が出てこない自分に焦りを感じ始めたとも。周囲の視線が自分に集中する中、何とか話し始めたそうなのですが、言葉は断片的で、明確なメッセージを伝えられず、少々落ち込んでしまいました。今回は「スピーチの悩みを心理学で解決、スマートトークのコツとは」のテーマで解説します。
1. スマートトークのコツ
スマートトークのコツは、上手く話すのでなく、身近なことから話し始める。
スマートに話し始めると、あなたの信頼が高まり、あなたの話しに耳を傾けてくれます。難しいことを言うより、あなたの周りで起きていることを話しながら共感を作り上げましょう。この時私は、この方の悩みを聞きながら、いくつかの質問をさせていただきました。質問を通して、無意識のうちにとっている行動や思考パターンのプロファイルを行いました。
プロファイルは、LABプロファイル(影響言語)注1.という心理学や脳科学をベースとしたツールを用いました。そして、お互いの対話を続けながら、その方の行動や思考のタイプを特定することができました。
2. LABプロファイル
この方は、周囲の状況や人々の言動を細かく感じ取り、無意識のうちに分析を行うタイプでした。(反映分析型...
このタイプの場合、分析の結果として、失敗や周囲の反応に対する恐怖を感じやすく、適切な言葉が見つからなくなるケースが多くあります。また、人はプロセスを順序立てて考えるタイプと、発想を広げて考えるタイプに分かれますが、その方は前者でした。
あらかじめ準備をして、プログラムや流れを想定することを得意とするタイプだったのです。さらには、自分の価値を低く評価しがちで、内向的な傾向があるため、自己効力感が低くなることが多い様子でした。さらに解ったこととして、その方は内的基準タイプでもありました。このタイプは、周囲の意見を聞いてモノゴトを決めるというより、自分で判断してモノゴトを決めることで、モチベーションが高まるタイプです。
3. トーク力改善の3つのポイント
LABプロファイルは、その人の思考や行動を司るメタプログラム(脳内のプログラムのようなもの)を特定することができ、明確になったプログラムをもとに、コーチングを行うことができます。私は、プロファイリングを終えたあと、トーク力を改善するための3つのポイントお伝えしました。
(1)挨拶をする
スマートな話を進めるための第一歩は、挨拶です。挨拶は相手の存在を認め、相互承認を促します。この心理的な繋がりが会場に形成されると、話しやすい雰囲気が生まれ、双方の緊張がほぐれます。
(2)難しく考えない
難しく考えると、話す側も聞く側も気分が重くなります。特に話し始めは注意が必要です。誰もが直近で経験していそうなことをテーマに話し始めると、スマートな話し始めができます。例えば、暑い日には「今日は暑いですね。」と話すことで、相手も「うん、確かに暑かった。」と共感し、あなたの話を聞く準備が整います。お互い直感的に理解できる話題ネタを話すことが効果的です。
(3)実況中継をしてみる
会場内にあるものをネタにして話すのも一つの手です。例えば「大きなスピーカーから私の声が出ていると思うと、ちょっと緊張します。」と話すことで、話しを聞く側もスピーカーがあることを感じます。会場に共通する話題ができ、雰囲気が和みます。
これらのポイントを取り入れることで、人前でのトーク力が向上し、ビジネスシーンでのコミュニケーションが、よりスマートになることをお伝えしました。
そして後日・・・・・この方は、難しく考えることをやめる!もっと気軽に話す!という気持ちに切り替えて、突発的な依頼にも、冷静に対応するよう努力されたそうです。その結果、明確で自信に満ちたスピーチを行えるようになり「自信がつきました!」と報告をしてくださいました。
難しいことを言うより、あなたの周りで起きていることを話ながら共感を高めると、その場の雰囲気が味方となって、あなたのスマートトークを助けます。難しく考えず、周りを見渡して、身近なことから話してみましょう。
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注1. NLP( 神経言語プログラミング ):コミュニケーションを磨くために、 多くのビジネスパーソンが学んでいるのが NLP( 神経言語プログラミング )です。NLP では、 脳の言語処理パターンをカテゴリー分けされており、 なんと約 150 個あります。この 150 個のカテゴリーをシッカリと学び、 使いこなすことができれば、 究極の説明力と説得力を手に入れることができます。そう、 150 個を使いこなせればの話です。学問というのは、 時には残酷で「 これを学べば完璧! 」という知識体系も、 あまりにも複雑すぎたり、 理論ばかりで仕事や生活の実践で使えないケースが少なくありません。
そこで、 150 個のカテゴリーを最小数まで絞り込み、 実践的に使えるよう整理された知識体系が LABプロファイル® 注2.なのです。LABプロファイル®では、 150 個のカテゴリー を 14 個のカテゴリーに整理し、 より学びやすくなっております。
注2.LABプロファイル®:脳のプログラムに該当するプログラムは、メタプログラムと呼ばれていますが、67個のプログラムがその研究からわかっています。また、文献よっては、メタ・メタ・プログラムというさらに詳細に分けられた研究結果も発表されていて、その数は、なんと!154個にもなります。ロジャー・ベイリーは、これらを日常で実用的に使うためにはという考えで整理を進め、14個のメタプログラムを理解し応用することで、相手のモダリティーやサブモダリティー形成にストレス無く対話を進めることができるようにしました。この、実用的で効果的な知識体系が LABプロファイル® です。 LABプロファイル® は、言葉の魔術を使いこなす、シェリー・ローズ・シャーベイにより、書籍「影響言語で人を動かす」で全世界に発信されています。