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1. 香味油の需要高まる
香味油といえば、オリーブ油や焙煎ごま油が一番に思い浮かぶかも知れませんが、その種類は多彩です。スーパーの食用油コーナーでは、ラー油やガーリックオイルなどもよく目にすると思います。そして、インスタントラーメンには小袋に入って同封されている商品も多くあります。比較的身近にある調味料の一つであるといえます。
もともと食用油自体が旨味や甘味の味質に近いとされ、コク味に寄与していることは知られているところです。近年では、基本5味である「甘味・旨味・塩味・苦味・酸味」の中に、第6の基本味として「脂(油)味」が加わる可能性が現実味を帯びてきました。それだけ油脂は食の風味に影響を与えることに疑いの余地はありません。
食材の特徴ある味や香気が付与された油脂が「香味油」で、調味料としては水溶性のエキスがありますが、エキスとは異なる風味を食品に付与できることが特徴で、食品の開発や調理するのに欠かせない存在となっています。
2. 香味油の需要が高まる理由
需要が高まっているのには、他にも理由があります。それは、外食・中食産業や加工食品工場の人手不足という背景があるためです。手軽に本格感を付与できる香味油。こうした製品を利用すると、手間や時間をかけて煮込んだり、炒めたりするのが難しい環境でも、大量調理では出しにくい、料理人が作ったような調理感を再現することができます。
近年、外食や中食、コンビニのチルド惣菜などでも本格的な調理感が求められるになっている一方で、調理現場に目を向けると、若年層の減少や団塊の世代の引退などを背景に従業員不足が鮮明になっています。帝国データバンクが今年1月に行った調査によると、飲食店の77%が従業員不足だと回答したこと、新型コロナウイルスの影響により、頼みの綱だった外国人労働者の受け入れが困難で、調理現場の人手不足が改善される見通しが立てられないという現実があります。
そのような背景や現実により、香味油の市場はこれからも拡大していくものと思われます。このような流れを裏付けるデータの一つとして、関連特許出願数の推移があげられます。
筆者は、特許庁・特許データベースJ-Platpatにより、香味油に関する特許出願に付与される分類記号FI(A23D9/00,504・香辛油、調味油)を有する特許文献を検索・抽出し関連特許文献出願数の推移を出願日基準で2018年以前5年間の出願数と2012年以前5年間の出願数を比較してみました。なお、この検索は2020年5月21日に行いました。そして、2019年出願の特許文献はまだ公開されていない文献が多いため、2018年以前の特許出願数で比較しています。
その結果、2012年以前5年間の特許出願数が45件に対して、2018年以前のそれは63件であり、1.4倍の伸び率であること明らかになりました。これは、市場の動きを反映しているものといえ、また、香味油開発も促進していることが伺えます。
3. 本格的な調理感を付与する香味油
それでは「本格的な調理感」を付与する香味油にはどのようなものがあるのかを少し紹介したいと思います。「ロースト・ビーフ・オイル」(焼肉、ステーキ香)が比較的代表的な香味油だと思います。
肉の調理法や加熱時間、肉感の強さが異なる味、香りを再現している香味油(シーズニングオイル)です。調理品に炭火で焼いたビーフ風味を付与ができ、醤油や香味野菜を焼いたときの風味も兼ね備えているものもあり、より強い調理感を出せるなどの特徴があります。
主な用途はハンバーグ、焼肉のタレ、もみダレ、焼きそば、焼きおにぎり、チャーシューなどで、ホテルやスーパーのバックヤードでのスチームコンベンションを使用した調理でも、炭火で焼いたような本格的なビーフの香りを付与することができます。
ガーリック、オニオン、ジンジャー、ネギ、エシャロットなど香味野菜系の香味油では、直火高温加熱製法を採用するなど、すっきりとしたシャープな香り立ちと調理感を付与する素材として、インスタントラーメンをはじめとする加工食品に幅広く使用されています。
お湯を入れるだけのスープやインスタントラーメンでは、スパイスや具材が底に沈みがちでありますが、これらの香味油を使用すると、油ですのでスープの上に浮かび、店で出来...