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「無印良品」の(株)良品計画から発売された「コオロギせんべい」を知っているという方はおられるのではないでしょうか。徳島大学と連携して商品化したとのことですが、注目を集めています。なぜ「コオロギ」を素材として活用したのでしょうか?そこには、世界的な問題点とその課題解決に向けたメッセージが込められている非常に考えさせられる理由がそこありました。※1
1. 昆虫食が地球を救う
コオロギのような昆虫食が地球を救うわけとは、マクロ視点で述べると次の3点です。
(1)人口増加と食糧の確保
国連によれば、2050年には世界人口が100億人になることが予測され、その手前の2030年にはたんぱく質の需要量が、その供給量を追い越すといわれています。つまり、2030年にたんぱく質の供給が不足すると予想されているのです。たんぱく質はヒトが生きていく上で必要不可欠な栄養素であることはご存知のとおりです。そこで、たんぱく質の新たな供給源として「昆虫」が注目されています。
(2)昆虫の栄養素
動物性たんぱく質源である「鶏、豚、牛」のたんぱく質量は100gあたり23.3g~21.2g。対して、コオロギの100gあたりのたんぱく質量は「60.0g」とのこと。鶏、豚、牛のそれと比較しておよそ4.5倍のたんぱく質量となります。このことから、先にお話しした、たんぱく質不足問題を解消できるのではないかと期待されているのです。
(3)環境への負荷
家畜を飼育するには多くの飼料、水が必要で、そして二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスを多量に排出します。しかし、コオロギを飼育する場合は、これらと比較して少ないことから、環境への負荷軽減に期待されています。ミクロ視点でいうと「飼育が...
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「無印良品」の(株)良品計画から発売された「コオロギせんべい」を知っているという方はおられるのではないでしょうか。徳島大学と連携して商品化したとのことですが、注目を集めています。なぜ「コオロギ」を素材として活用したのでしょうか?そこには、世界的な問題点とその課題解決に向けたメッセージが込められている非常に考えさせられる理由がそこありました。※1
1. 昆虫食が地球を救う
コオロギのような昆虫食が地球を救うわけとは、マクロ視点で述べると次の3点です。
(1)人口増加と食糧の確保
国連によれば、2050年には世界人口が100億人になることが予測され、その手前の2030年にはたんぱく質の需要量が、その供給量を追い越すといわれています。つまり、2030年にたんぱく質の供給が不足すると予想されているのです。たんぱく質はヒトが生きていく上で必要不可欠な栄養素であることはご存知のとおりです。そこで、たんぱく質の新たな供給源として「昆虫」が注目されています。
(2)昆虫の栄養素
動物性たんぱく質源である「鶏、豚、牛」のたんぱく質量は100gあたり23.3g~21.2g。対して、コオロギの100gあたりのたんぱく質量は「60.0g」とのこと。鶏、豚、牛のそれと比較しておよそ4.5倍のたんぱく質量となります。このことから、先にお話しした、たんぱく質不足問題を解消できるのではないかと期待されているのです。
(3)環境への負荷
家畜を飼育するには多くの飼料、水が必要で、そして二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスを多量に排出します。しかし、コオロギを飼育する場合は、これらと比較して少ないことから、環境への負荷軽減に期待されています。ミクロ視点でいうと「飼育が容易」「成長が早い」「雑食」であることがメリットとしてあげられ、特に「雑食」いう点では、食料廃棄物の問題を解決する可能性が大いにあります。
2. 昆虫食の世界と食用油脂の繋がり
このように壮大かつ有利な理由を持つ、今後が楽しみな昆虫食の世界。この世界と食用油脂とは、どのような繋がりがあるのでしょうか?まず初めに、2021年1月にこのようなニュースがありました。
「【食用 虫油】発売。植物性でも動物性でもない第3のオイル!!2021年1月28日発売」※2
コオロギ、蚕から油脂を得て、加工、充填したアブラとのことです。「衛生的に飼育された虫をギュッと絞った100%ピュアオイルです。」このようにホームページに記載されていました。
違和感を持つ方もおられるかも知れませんが、すでに「虫油」なる商品が存在しています。その食用「虫」油について、少し掘り下げていきましょう。実は過去の2012年に、以下のような提案がなされておりました。
「昆虫(ゴキブリ)を生物資源に活用した保全策の提案」※3
非常にショックを受けておられましたら申し訳ございません。タイトルの如く、コオロギの方ではなく「ゴキブリ」を活用するというものですが、私が初めてこの提案を知った時にはショックを受けると同時に、なんと理に叶ったことなのか、と深く感銘を受けたのも事実です。それ以来、可能であれば取り組みたいテーマとなっております。
この提案資料を抜粋してお話しますと、たんぱく質量では乾燥ベースでオウシュウイエコオロギが55%、ゴキブリが77%、比較として大豆が40%で、現在の主要たんぱく質源である大豆よりも昆虫は高いたんぱく量を有し、さらにゴキブリはコオロギのそれより上をいっています。
注目の「アブラ」ですが、乾燥ベースでオウシュウイエコオロギが18%、ゴキブリが21%、比較として大豆が22%で、主要油糧原料である大豆とほぼ同量の油脂含量となっております。これらのデータからも、虫も立派な油糧原料と成り得ると思います。肝心の「アブラ」はどのような油なのでしょうか?
この提案資料に記載のゴキブリオイルの脂肪酸組成をみてみますと、飽和脂肪酸が多く、オレイン酸も比較的多い印象で、パーム系油脂に液油を配合したような組成と感じました。そのため、通常の液油白絞油やサラダ油と比較して、加熱安定性が良い油ではないかと思います。
現在の油糧原料の生産事情はパーム油、大豆油、菜種油、ひまわり油が主流ですが、これらの種子を生産するには広大な土地が必要にとなります。先にも述べましたように、世界人口が増加し、たんぱく質同様に油脂も不足するといわれています。そのような中で、さらに現在主流の油糧原料を生産する必要があるのですが、地球規模の気候変動などにより耕作面積を思うように増やせない現実もそこにあります。
一方で、「藻類」から油脂を生産しようという試みも現在、活発に進められていますが、汎用性の油脂ではなく、機能性、希少性の高い油脂の生産に向いていると考えられます。このような背景から、容易に飼育ができ、極めて効率的に生産(成育)可能な「虫」に寄せられる期待は、今後大きくなるのではないかと思います。
【参考文献】
※1:無印良品「コオロギせんべい」「コオロギが地球を救う?」株式会社良品計画ホームページ https://www.muji.com/jp/ja/feature/food/460936 DL2021.2.12
※2:「【食用 虫油】発売。植物性でも動物性でもない第3のオイル!!2021年1月28日発売」PR TIMES(昆虫食通販サイト バグズファーム), https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000059.000036525.html, DL2021.2.12
※3:「昆虫(ゴキブリ)を生物資源に活用した保全策の提案」 財団法人 油脂工業会館(WEB),長谷川義博(花王), 2012.2.21, https://www.yushikaikan.or.jp/assets/files/ronbun4.pdf, DL2021.2.12
【出典】中谷技術士事務所 HPより、筆者のご承諾により編集して掲載