サプライチェーンマネジメントは、企業のキャッシュフローのスピードを上げて、企業の生命力を強くすることが最終目標です。血液の流れが円滑であることが生命力の源であり、水の流れが川の生命としての清い流れを作り、自然界の空気の流れと燃料の流れの合流が美しい炎になるように、物流とともにキャッシュの流れが淀みなく続くことによって企業としての生命は力強いものになります。この水の流れと炎の例は、複雑系のモデルとなった散逸構造論のメタファです。同じように、企業のキャッシュの流れのスピードを表わすのがスループット(キャッシュを生む物の流れ)、サプライチェーンの中にあるキャッシュがインベントリー(在庫)、その流れを作る駆動ボンプを動かす別系統の流れがエクスペンス(経費)です。
この三つの指標を決める生産や販売の現場でサプライチェーン経営指標となるものが、納期達成率、在庫回転率、稼働率、リードタイム、サイクルタイム、充足率……などです。これらは、多くのサプライチェーンマネジメント(SCM)ベンダーの成功事例の中でアピールされている指標です。
コンピュータを応用する歴史の中では自動化、省力化、経費削減、生産性、効率向上が主目標であったために、未だにサプライチェーンマネジメントの導入効果として、プランナーの数を減らして人件費を削減したとか、サプライチェーンのオペレーティングコストを削減したということが注目されていますが、サプライチェーンマネジメントの経営指標としては、それはほんの一部の効果でしかありません。それよりも、プランニングのサイクルタイムが月次から週次になり、二週間の作業計画が二日で可能となる場合の在庫回転率やスループットの向上のほうが、はるかにインパ...