新しい時代のQCサークル活動の提案

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 最近、企業ぐるみのデーターねつ造・改ざんの問題が大きく報道されています。実は、QCサークル活動でも一部の企業で、体裁を重視した発表用のQCストーリー作りが何の疑問もなく続けられています。サークル活動を経験された方なら、データーねつ造問題は、実は決して他人事ではない事が理解できると思います。
 
 QCサークル活動が、今起こっている様々なデーター改ざんにつながっていないとも限りません。もし同様な体質の上に成り立っているのであれば、すぐに「嘘のない真実の姿」のQCサークル活動に戻さなければなりません。
 

1.QCサークル活動の目的

 QCサークル活動は、職場内に結成されたサークルによる日常業務も改善活動であり、自己研さん、相互啓蒙により、「人材の育成」を図ることを目的とします。
 

2.QCサークル活動の現状と問題点

 ものづくり現場の日常業務は、生産活動、およびその支援業務から成り立っています。その業務は毎日順調に進むとは限らず、様々な問題が発生しますが、それらに対処しながら生産を続けなければなりません。その障害は、放置することなく、解決に向けた動きも同時並行で行っていかなければなりません。そのための活動が、QCサークル活動であり、毎日の日常業務と密接に結びついています。一方、従来からQCサークル活動は、図1のようなステップで進めるように指導されてきました。
 
         qc35 
図1.QCサークル活動のステップ
 
 テーマ選定から始まる、いわゆるQCストーリーによる問題解決方法が広く知られるようになり、高度成長期に急速に欧米をキャッチアップできたのも、ものづくりおける品質管理手法の浸透が大いに貢献したと言っても過言ではありません。
 
 その後、バブル崩壊による経済の低迷、企業環境の変化により、QCサークル活動も下火になり、その弊害も指摘されるようになってきました。では、なぜ弊害が際立つようになったのか、その問題点を列挙してみます。
 
 ①職場や仕事の問題点をリストアップしてその中からテーマを一つに絞りこみます。しかし、この方法では、テーマ以外の問題には取り組まない事になります。製品が頻繁に入れ替わる多品種少量生産、短納期生産工場においては、このやり方では、問題が解決されないまま生産が終了してしまうのです。
 
 ②目標設定、活動計画の立案は、日常発生している問題すべてに当てはまるとは限りません。すぐ改善できるものは、すぐ、その日のうちに手を打たなければならないのであって、ほとんどの問題はこの小さな改善の繰り返しである点に注目すべきです。期間を要して、大きな問題を解決するQCストーリーを職場の小さな問題にまで適用するのは無理が生じます。
 
 ③1990年代以降急速に普及した、ISO9000は、トップダウンによるマネジメントシステムです。このトップダウンが強調されるあまり、従来のQCサークル活動を中心とするTQM活動とは融合が図られることなく発展の機会を失ってしまったのです。QCストーリーを活動の基本パターンとする限り、日常業務の実態とかけ離れた活動に陥り易いことを説明しました。この欠点を取り除くため、全く新しい形のQCサークル活動のあり方を検討することにします。
 

3.新しいQCサークル活動の提案

 QCサークル活動は、日常業務の実態に合わせ、「CAPD」を回すことを基本とします。つまり、サークルメンバーが、日常業務で担当する業務のなかでムリ・ムラ・ムダを取り除く小さな改善活動のサイクルを回すようにします。このサイクルが非常に重要なのであって、品質管理活動の基本となるのです。
 
 日常業務は、決められた製造工程で、決められた方法によって目的とする製品を作り出すための作業を行うだけでなく、その中で顕在化したむり・むら・むだを取り除く活動もルーチン業務と同時並行で行っていかなければなりません。
 
C:業務の見える化、問題点の顕在化
A:問題を取り除く取り組み
 
 通常の業務の中では、このCAの繰り返しが行われていますが、難しい問題に直面した場合は、更に
 
P:対策案を検討する
D:対策案をいくつか試行し、経過を見る
 
も加えたものが基本サイクルとなっているはずです。このCAPDの基本サイクルを踏まえて、QCサークル活動の体制と手順を以下に示します。
 
①職場サークル内で毎週一回程度、定期的な夕会(昼会)を開催します。
 議長(司会)、書記は当番制とし、議事内容は以下の項目とします。
 
・前回残された問題の進捗状況確認
・新たな問題の提案(CAサイクルの状況)
・解決方向の討論
・難しい問題はPDサイクルを回す
(担当者の明確化、時期、方法を決め、解決の推進に当たる(5W1H)
 
②定期リーダー集会(1回/月)
 QCサークル事務局は各サークルの問題解決状況を把握するため、リーダー会議を開催します。その会議の内容は
 
・サークル間で連携が必要なテーマの進め方の討議
・費用が掛かり経営判断の必要なテーマ、全社プロジェクトで解決が必要な問題の提起
・各未解決問題の解決方向の討議
・解決済みの問題の中から、サークル発表会用のテーマを決める(半年に1回)
 
③QCサークル発表会
 各サークルは解決済みのテーマの中から一つを選び、発表用にまとめます。発表会は、半年に1回程度開催しますが、発表会の前までには、様々な改善活動はすでに、サークル内で複数取り組まれていることになります。発表内容はQCストーリーにこだわらず以下のように事実の内容をまとめた内容でも可とします。
 
(1)現状(対策前の悪さ)・・・事実データー
(2)要因の調査内容
    調査1、調査2、調査3・・・原因の絞り込み
(3)手を打った内容(試行錯誤の内容)
      対策1:事実データー(良くなっているか?)
    対策2:事実データー(良くなっているか?)
   ...
 最近、企業ぐるみのデーターねつ造・改ざんの問題が大きく報道されています。実は、QCサークル活動でも一部の企業で、体裁を重視した発表用のQCストーリー作りが何の疑問もなく続けられています。サークル活動を経験された方なら、データーねつ造問題は、実は決して他人事ではない事が理解できると思います。
 
 QCサークル活動が、今起こっている様々なデーター改ざんにつながっていないとも限りません。もし同様な体質の上に成り立っているのであれば、すぐに「嘘のない真実の姿」のQCサークル活動に戻さなければなりません。
 

1.QCサークル活動の目的

 QCサークル活動は、職場内に結成されたサークルによる日常業務も改善活動であり、自己研さん、相互啓蒙により、「人材の育成」を図ることを目的とします。
 

2.QCサークル活動の現状と問題点

 ものづくり現場の日常業務は、生産活動、およびその支援業務から成り立っています。その業務は毎日順調に進むとは限らず、様々な問題が発生しますが、それらに対処しながら生産を続けなければなりません。その障害は、放置することなく、解決に向けた動きも同時並行で行っていかなければなりません。そのための活動が、QCサークル活動であり、毎日の日常業務と密接に結びついています。一方、従来からQCサークル活動は、図1のようなステップで進めるように指導されてきました。
 
         qc35 
図1.QCサークル活動のステップ
 
 テーマ選定から始まる、いわゆるQCストーリーによる問題解決方法が広く知られるようになり、高度成長期に急速に欧米をキャッチアップできたのも、ものづくりおける品質管理手法の浸透が大いに貢献したと言っても過言ではありません。
 
 その後、バブル崩壊による経済の低迷、企業環境の変化により、QCサークル活動も下火になり、その弊害も指摘されるようになってきました。では、なぜ弊害が際立つようになったのか、その問題点を列挙してみます。
 
 ①職場や仕事の問題点をリストアップしてその中からテーマを一つに絞りこみます。しかし、この方法では、テーマ以外の問題には取り組まない事になります。製品が頻繁に入れ替わる多品種少量生産、短納期生産工場においては、このやり方では、問題が解決されないまま生産が終了してしまうのです。
 
 ②目標設定、活動計画の立案は、日常発生している問題すべてに当てはまるとは限りません。すぐ改善できるものは、すぐ、その日のうちに手を打たなければならないのであって、ほとんどの問題はこの小さな改善の繰り返しである点に注目すべきです。期間を要して、大きな問題を解決するQCストーリーを職場の小さな問題にまで適用するのは無理が生じます。
 
 ③1990年代以降急速に普及した、ISO9000は、トップダウンによるマネジメントシステムです。このトップダウンが強調されるあまり、従来のQCサークル活動を中心とするTQM活動とは融合が図られることなく発展の機会を失ってしまったのです。QCストーリーを活動の基本パターンとする限り、日常業務の実態とかけ離れた活動に陥り易いことを説明しました。この欠点を取り除くため、全く新しい形のQCサークル活動のあり方を検討することにします。
 

3.新しいQCサークル活動の提案

 QCサークル活動は、日常業務の実態に合わせ、「CAPD」を回すことを基本とします。つまり、サークルメンバーが、日常業務で担当する業務のなかでムリ・ムラ・ムダを取り除く小さな改善活動のサイクルを回すようにします。このサイクルが非常に重要なのであって、品質管理活動の基本となるのです。
 
 日常業務は、決められた製造工程で、決められた方法によって目的とする製品を作り出すための作業を行うだけでなく、その中で顕在化したむり・むら・むだを取り除く活動もルーチン業務と同時並行で行っていかなければなりません。
 
C:業務の見える化、問題点の顕在化
A:問題を取り除く取り組み
 
 通常の業務の中では、このCAの繰り返しが行われていますが、難しい問題に直面した場合は、更に
 
P:対策案を検討する
D:対策案をいくつか試行し、経過を見る
 
も加えたものが基本サイクルとなっているはずです。このCAPDの基本サイクルを踏まえて、QCサークル活動の体制と手順を以下に示します。
 
①職場サークル内で毎週一回程度、定期的な夕会(昼会)を開催します。
 議長(司会)、書記は当番制とし、議事内容は以下の項目とします。
 
・前回残された問題の進捗状況確認
・新たな問題の提案(CAサイクルの状況)
・解決方向の討論
・難しい問題はPDサイクルを回す
(担当者の明確化、時期、方法を決め、解決の推進に当たる(5W1H)
 
②定期リーダー集会(1回/月)
 QCサークル事務局は各サークルの問題解決状況を把握するため、リーダー会議を開催します。その会議の内容は
 
・サークル間で連携が必要なテーマの進め方の討議
・費用が掛かり経営判断の必要なテーマ、全社プロジェクトで解決が必要な問題の提起
・各未解決問題の解決方向の討議
・解決済みの問題の中から、サークル発表会用のテーマを決める(半年に1回)
 
③QCサークル発表会
 各サークルは解決済みのテーマの中から一つを選び、発表用にまとめます。発表会は、半年に1回程度開催しますが、発表会の前までには、様々な改善活動はすでに、サークル内で複数取り組まれていることになります。発表内容はQCストーリーにこだわらず以下のように事実の内容をまとめた内容でも可とします。
 
(1)現状(対策前の悪さ)・・・事実データー
(2)要因の調査内容
    調査1、調査2、調査3・・・原因の絞り込み
(3)手を打った内容(試行錯誤の内容)
      対策1:事実データー(良くなっているか?)
    対策2:事実データー(良くなっているか?)
    対策3:事実データー(良くなっているか?)
(4)考察
   活動の総括、自己評価
 
 QCサークル発表会の目的は、金額効果の多少を競うものではありません。各サークルの苦労した内容、上手くいかなかった内容も含めありのままの姿を包み隠さず発表することに意義があるのです。繰り返しますが、問題解決は、チェック(C)アクション(A)の繰り返しで解決していることが多いのであって、必ずしもQCストーリー通りに行っているわけではないのです。それを無理やり、後からQCストーリーで取り繕う必要は全くありません。
 
 真実の発表、失敗経験の中に、必ずサークルやサークルメンバーの成長の跡が刻まれているのであって、美辞麗句で飾られたQCストーリーの発表を聞いているよりずっと充実感を得ることができるはずです。そして、そのことは自己研さん、相互啓蒙を通じて、人材育成にもつながって行きます。
 
④QCサークル活動結果のレビュー
 事務局は年間を通して、各サークルの活動状況、未解決件数を集計し、経営者へ報告します。また各サークルの未解決テーマの状況をヒヤリングして解決の促進を促します。
 

4.まとめ

 日常業務と密着した新しいサークル活動の形を提案しました。ものづくり現場の忙しい業務の中で、このような活動を根付かせることは容易ではありません。それには経営層、管理層の一層の支援、アドバイスが必要であることも付け加えておきたいと思います。
   

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この記事の著者

濱田 金男

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に取り組んでいます。

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