PEST分析とは?意味や目的、やり方をわかりやすく解説
1. PEST分析とは
PEST分析とは、マーケティング界の第一人者であるケロッグビジネススクールのフィリップ・コトラー教授が提唱したもので、事業戦略や商品戦略等を検討する際に必須のマクロ環境分析を効率よく、網羅的に実施ためのフレームワークです。 Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)という4つの観点から分析するので、それぞれの頭文字をとりPEST分析と呼ばれます。 PEST分析を実施することで、世の中の流れに沿った戦略、企画を立案し、成功の確率を高めることが可能となります。
(1)マクロ環境分析とは
マクロ環境とは、企業ではコントロールできないけれども企業活動への影響が避けられない「政治」「経済」「社会」「技術」などの要因で構成されます。マクロ環境分析の視点として、PESTの変形版のPESTELがマクロ環境分析を行う上では、より良い分析です。
(2)ミクロ環境分析とは
ミクロ環境は、自社に直接影響を与える「顧客」「競合他社」などの要因が中心となります。自社が属する業界がほぼこれに相当しますが、このミクロ環境分析での競争状態を、他社との敵対関係だけで見ていると大事な側面を見落としてしまうことがあります。たとえば、売り手(納入業者)や買い手(顧客)が新たに競合として参入してくる可能性もあります。
2. PEST分析の変形版、PESTELとは
マクロ環境分析の視点として、PESTの変形版のPESTELがマクロ環境分析を行う上では、より良い分析です。PESTELは、PESTのPolitical(政治)、Economical(経済)、Societal(社会)、Technological(技術)に、Environmental(環境)とLegal(法律)を加えたものです。
3. マクロ環境分析と政治
PESTELの議論において重要な点が、Politicalは他の構成要素、すなわちEc(Economical)、S、T、En(Environmental)、Lにも影響を与えるものであるということです。PoliticalによりLegalが生み出され、また米国の政治(P)が米中の貿易戦争や原油価格の高騰などにより経済(Ec)に大きな影響を与えます。政治(P)により、法律(L)を通し、社会構造(S)が変わる(少子化対策による子供数の増加)やAI技術(T)の促進や、環境対応製品(En)の拡大機会が生まれるなどの影響が生み出されます。
一方で、他の構成要素が政治(P)に影響を与えます。例えば地球温暖化(En)によりドイツの緑の党が得票率を拡大すること(P)や少子化(S)により少子化対策を積極的に進める小池百合子氏が東京都知事に選ばれたり(P)、中国政府のAI開発推進を受け(T)、日本政府も同様の政策を展開する必要性の発生(P)などが考えられます。
この点はPだけでなくPESTEL全般にも言えることで、PESTELの構成要素は、それぞれ構成要素間で因果関係を持ちながら存在するという点を忘れないようにしましょう。
4. L(Legal)はマクロ環境を想定する有効なツール
PESTELの中で、極めて明確な形の影響力を持つのが法律です。法律や政策は多くの場合(時限的なものを除き)、長期にわたり存在しつづけることを前提に施行されるもので、また官公庁で十分な将来の予測(まさにマクロ環境分析)の下に作られるので、不確実性がかならずついて回るPESTELの中でも、かなり明確な形でマクロ環境に影響を与えるものであるという特徴があります。したがって、現状存在する法律や政策、また現状で議論されている法律や政策は、将来を想定する上で、極めて有効なツールということができます。
5. PEST分析のやり方
ステップ1: 要素の特定
まず、政治、経済、社会、技術の4つの要素を特定します。それぞれがビジネスにどのような影響を与えるかを理解することが重要です。
ステップ2: 要素の評価
次に、各要素がビジネスに及ぼす影響を評価します。例えば、政治的な変化がビジネスに与えるリスクや機会を考えます。
ステップ3: 外部環境の分析
外部環境の要素がビジネスにどのように影響するかを分析します。これにより、市場の動向や競合状況を把握することができます。
ステップ4: チャンスとリスクの特定
PEST分析を通じて、ビジネスにとっての機会やリスクを特定します。これにより、戦略的な意思決定を行うための情報を得ることができます。
ステップ5: 戦略の策定
得られた情報を元に、ビジネス戦略を策定します。外部環境の変化に適応するための戦略を検討し、実行に移します。
ステップ6: モニタリングと評価
最後に、PEST分析の結果をモニタリングし、定期的に評価します。外部環境の変化に応じて戦略を調整することが重要です。
6. PEST分析を行う際の注意点
(1)全体像を見失わないこと
PEST分析は政治(Political)、経済(Economic)、社会(Social)、技術(Technological)の4つの要素を総合的に考慮するものです。各要素を個別に分析するだけでなく、それらが相互にどのように影響し合うかを理解することが重要です。
(2)情報の信頼性を確認すること
PEST分析においては、正確な情報が重要です。政治的、経済的、社会的、技術的な要素に関する情報は常に変化しているため、最新のデータや信頼性のある情報源を使用することが必要です。
(3)未来予測に過度に依存しないこと
PEST分析は環境分析の一つであり、将来の状況を予測するための手法ではありません。過去や現在の状況を踏まえつつ、将来の可能性を考慮することは重要ですが、確実な予測を行おうとすると誤解を招く可能性があります。
7. PEST分析とあわせて活用したいフレームワーク
(1)SWOT分析
SWOT分析とは、1960年代に考案された、組織のビジョンや戦略を企画立案する際に利用する現状を分析する手法の一つ。SWOTは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の頭文字を取ったものです。 SとWは内部環境即ち自分たちの組織を分析し、OとTは外部環境即ち自分たちでは動かし難状況を分析します。 ここから戦略を作成するには、内部環境と外部環境を掛け合わせた4つの組合せに関する検討が有効で「クロスSWOT分析」と呼ばれます。
(2)5フォース分析
5F分析とは、M.ポーターが提唱する競争分析のフレームワークであり、競争相手の力(フォース)には5種類あるという理論で、①同業他社、②買い手、③売り手、④新規参入、⑤代替の5つの視点を検討します。 まず自社の業界で重要な競争視点を評価し、その中での競争ポジションを決定します。同業他社を見逃すことはまずありませんが、代替品は軽視しがちで対応が遅れると致命的になるので、注意が必要です。
(3)3C分析
3C分析とは、顧客と競合の分析からKSF(Key Success Factor =成功要因)を見つけ出し、自社の戦略に活かす分析をするフレームワークです。なお、3Cとは「顧客(customer)」「競合(competitor)」「自社(company)」の頭文字のことを指します。
(4)4P分析
4P分析とは、ある製品やサービスを販売するに際して4つのPすなわちProduct(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(宣伝)を整合させて企画するフレームワークです。 他人のケースは良く分かるのに、自社になると全く統一感のない戦略になりがちです。フレームワークから、客観的に考えてみましょう。
8.まとめ
PEST分析において重要な点が、Politicalは他の構成要素にも影響を与えるものであるということです。政治(P)により法律を通し社会構造が変わることやAI技術の促進、環境対応製品の拡大機会が生まれるなどの影響が生み出されます。PEST分析全般にも言えることで、PESTの構成要素は、それぞれ構成要素間で因果関係を持ちながら存在するという点が重要です。