「設備保全・TPM」とは、キーワードからわかりやすく解説

 

1. 「設備保全」とは

設備は適切に保全しないと永遠に動いてはくれません。 計画的な予知保全、予防保全、事後保全、TPMなどを組み合わせて最適化を図る必要があります。

 

2. 「TPM」とは

TPM(Total Productive Maintenance)とは、装置の保守やメンテナンスを専門要員に任せるのではなく製造作業者が自ら実施する事で、設備効率向上、品質向上などを通じて究極のコスト削減を目指す全員参加型の組織的改善活動です。戦後、生産性向上を図る重化学工業で設備のメンテナンス、信頼性、保全性を確保するためにアメリカのPM(Preventive Maintenance:予防保全)を導入したことを発端に、日本独自の組織活動として発展していったもので、単なる保全の方法論に留まらず、生産哲学、組織論と人財育成までも包含したまさにTotal(総合的)な活動です。

 

3.「TPM」今後の展望

TPMは、製造業の中で非常に成功した生産効率向上手法として広まってきました。しかし、現代のデジタル変革の波を受けて、TPMも進化しつつあります。今後の展望を以下に整理します。まず、IoT(Internet of Things)の導入がTPMの未来を大きく変える要因となるでしょう。製造機械や設備がネットワークに接続されることで、実際の動作データや状態をリアルタイムで収集することが可能になります。これにより、機械の故障を予測する「予知保全」が進化し、生産のダウンタイムをさらに削減することが期待されます。

 

次に、AI(人工知能)の活用が進むでしょう。データ分析の能力を持つAIは、膨大な量のデータから異常の兆候や最適な保全タイミングを予測します。また、過去のデータから最適な生産条件を学習し、品質の向上や生産効率の最適化に貢献することが期待されます。さらに、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)技術の活用も拡大する可能性があります。例えば、ARグラスを使用して、作業者がリアルタイムで設備の情報や修理手順を表示させることで、迅速かつ正確な保全作業をサポートするシステムが普及してくるでしょう。

 

しかし、これらの技術の導入は、新しいチャレンジももたらします。データのセキュリティやプライバシーの問題、高度な技術スキルの必要性、そして新しい技術への適応能力を持つ人材の育成など、企業にとっては大きな課題となることでしょう。結論として、TPMはこれからも製造業の中心的な役割を果たしつつ、デジタル技術の導入と統合によって新しい局面を迎えるでしょう。この変革を成功させるためには、従来のTPMの考え方を継承しつつ、新しい技術や手法を柔軟に取り入れる姿勢が求められます。

 


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