物流工程設計の基本

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1. 物流工程設計の必要性

 物流は最初が肝心です。オペレーションが始まる前にどこまで詳細な設計を行ったか、それ次第でオペレーションが始まった後の効率が大きく変わってきます。たとえば物流拠点や工場などの立地。どこに拠点を設置するのかによって、輸送距離という最も物流コストのかかる領域について変わってきます。この物流設計の出来具合でオペレーションに伴う「物流コスト」の発生のレベルに大きな差が出てきます。一度拠点の位置を定めてしまうと、その後の改善にはとても苦労します。そして苦労の割に効果は大きくない可能性があります。
 
 ですから私たちは物流設計に大いに気を配る必要があるのです。たとえば拠点設計。その判断要素には物流コストが大きなポーションを占めるようにしなければなりません。というか、物流担当者はこの物流設計そのものに大きくかかわる必要があるのです。積極的に物流的視点でデータを分析し、比較し、経営判断に影響を与えなければなりません。物流工程設計の内、大きいものは拠点設計でしょう。国内、海外に関わらず、どこに拠点を置くのかについて検討します。小さいものでは拠点内のレイアウト設計があります。工場内レイアウトや倉庫内ロケーション設計があります。
 
 そして、その中間にあるのが工場建屋設計や倉庫建屋設計があります。もっとミクロの視点からは運搬手段の設計や物流工数の検討、物流必要機器の検討や荷姿設計などがあります。これらの物流工程設計について意識が薄い会社や、意識はしていても実行できる人材がいない会社などさまざまです。しかしオペレーション時に発生する可能性のあるロスを考えると、一定の人件費をかけてでも実行するに値するのが物流工程設計です。できれば会社の中にこの設計ができる人財を確保したいものです。では具体的にどのような仕事をしていったらよいのかにつきましてお話を続けさせていただきます。
 
 SCM
 

2. 工場内の物流設計

 大きな物流であれ小さな物流であれ、それを発生させないように計画することが重要なのです。一度それを失敗すると永遠に物流が発生し続けますので。工場の中の工程設計といえば生産技術部門の本来業務です。工場のどこで、どのような設備を使ってものを生産するのかを企画します。この際にものづくりのSQDCの目的を達成すべく、生産技術の担当者は腕を振るいます。設備レイアウトを決め、設備仕様を決め、作業手順や品質基準などを設定していきます。
 
 しかし、多くのケースで置き去りにされてしまうものがあります。それが「物流設計」なのです。たとえばその工程に部品を供給するときの部品置場や供給通路などです。レイアウトが決まり、設備を設置する場所も決まったにもかかわらず、部品を置く場所が無いという笑えないケースが多々あります。工程と工程の間が離れてレイアウトされたために、その間を運搬しなければならなくなったということも山ほどあります。それらが問題であるという認識は生産開始の直前に持たれることが多いようです。その結果、生産技術ではなく物流部門の担当者や製造部門の担当者がその課題解決のためにいろいろと検討することが多いのです。
 
 正論から言えば生産技術の担当者が設備仕様や品質基準の設定などと同時に、物流条件や運搬の発生しないレイアウトなどを設計すべきでしょう。現実問題として生産技術にその認識が無く、スキルもノウハウもないということが実態ではないでしょうか。そうなるとその認識を持つ人が早め早めに生産技術に協力する形で物流設計を行っていくしかありません。可能であれば物流担当者が生産技術部門に籍を移して、そこの担当者と一緒に物流を検討していくことが望ましいと思います。
 
 その仕事のポイントとしては、工程間運搬が発生しないレイアウト、必要となる部品置場、運搬が発生する場合の通路、必要在庫が置けるスペースなどが挙げられます。これらについて知恵を絞って検討していくのです。そしてさらに工場レイアウトの出来栄えを評価できる何かしらの指標を設定しておくことが望ましいと思われます。
 

3. 出来栄え評価

 工場内物流設計時には以下のような指標を設けて、その設計の出来栄えを評価するとよいと思います。
 
・部品1個当たり運搬距離
・工場内物流工数
・工場内通路比率
・工場内物流エリア比率
 
 レイアウトを新たに設計した時には、以前に比べてこれらの指標がよくなったのかどうか、どれくらいよくなったのかなどについて数値化して評価していくとよいでしょう。物流工程設計時には同時に荷姿設計を行うことが求められます。ものを保管したり運搬したりするときには、品質を維持するためにどうしても荷姿が必要になります。
 
 特に長距離輸送が必要になると、その荷姿の出来栄えが物流コストに大きな影響を与えます。工程設計と同様、最初が肝心ですから入念につくり込むことが重要です。荷姿の効率がよければ、保管エリアの効率も向上します。つまり小さなスペースで済むということになるわけです。荷姿効率の一つに圧縮できる容器が挙げられます。ものが入っていない空の状態のときには折りたたむなどして圧縮すれば保管スペースも小さくて済みます。
 
 工程設計と...

1. 物流工程設計の必要性

 物流は最初が肝心です。オペレーションが始まる前にどこまで詳細な設計を行ったか、それ次第でオペレーションが始まった後の効率が大きく変わってきます。たとえば物流拠点や工場などの立地。どこに拠点を設置するのかによって、輸送距離という最も物流コストのかかる領域について変わってきます。この物流設計の出来具合でオペレーションに伴う「物流コスト」の発生のレベルに大きな差が出てきます。一度拠点の位置を定めてしまうと、その後の改善にはとても苦労します。そして苦労の割に効果は大きくない可能性があります。
 
 ですから私たちは物流設計に大いに気を配る必要があるのです。たとえば拠点設計。その判断要素には物流コストが大きなポーションを占めるようにしなければなりません。というか、物流担当者はこの物流設計そのものに大きくかかわる必要があるのです。積極的に物流的視点でデータを分析し、比較し、経営判断に影響を与えなければなりません。物流工程設計の内、大きいものは拠点設計でしょう。国内、海外に関わらず、どこに拠点を置くのかについて検討します。小さいものでは拠点内のレイアウト設計があります。工場内レイアウトや倉庫内ロケーション設計があります。
 
 そして、その中間にあるのが工場建屋設計や倉庫建屋設計があります。もっとミクロの視点からは運搬手段の設計や物流工数の検討、物流必要機器の検討や荷姿設計などがあります。これらの物流工程設計について意識が薄い会社や、意識はしていても実行できる人材がいない会社などさまざまです。しかしオペレーション時に発生する可能性のあるロスを考えると、一定の人件費をかけてでも実行するに値するのが物流工程設計です。できれば会社の中にこの設計ができる人財を確保したいものです。では具体的にどのような仕事をしていったらよいのかにつきましてお話を続けさせていただきます。
 
 SCM
 

2. 工場内の物流設計

 大きな物流であれ小さな物流であれ、それを発生させないように計画することが重要なのです。一度それを失敗すると永遠に物流が発生し続けますので。工場の中の工程設計といえば生産技術部門の本来業務です。工場のどこで、どのような設備を使ってものを生産するのかを企画します。この際にものづくりのSQDCの目的を達成すべく、生産技術の担当者は腕を振るいます。設備レイアウトを決め、設備仕様を決め、作業手順や品質基準などを設定していきます。
 
 しかし、多くのケースで置き去りにされてしまうものがあります。それが「物流設計」なのです。たとえばその工程に部品を供給するときの部品置場や供給通路などです。レイアウトが決まり、設備を設置する場所も決まったにもかかわらず、部品を置く場所が無いという笑えないケースが多々あります。工程と工程の間が離れてレイアウトされたために、その間を運搬しなければならなくなったということも山ほどあります。それらが問題であるという認識は生産開始の直前に持たれることが多いようです。その結果、生産技術ではなく物流部門の担当者や製造部門の担当者がその課題解決のためにいろいろと検討することが多いのです。
 
 正論から言えば生産技術の担当者が設備仕様や品質基準の設定などと同時に、物流条件や運搬の発生しないレイアウトなどを設計すべきでしょう。現実問題として生産技術にその認識が無く、スキルもノウハウもないということが実態ではないでしょうか。そうなるとその認識を持つ人が早め早めに生産技術に協力する形で物流設計を行っていくしかありません。可能であれば物流担当者が生産技術部門に籍を移して、そこの担当者と一緒に物流を検討していくことが望ましいと思います。
 
 その仕事のポイントとしては、工程間運搬が発生しないレイアウト、必要となる部品置場、運搬が発生する場合の通路、必要在庫が置けるスペースなどが挙げられます。これらについて知恵を絞って検討していくのです。そしてさらに工場レイアウトの出来栄えを評価できる何かしらの指標を設定しておくことが望ましいと思われます。
 

3. 出来栄え評価

 工場内物流設計時には以下のような指標を設けて、その設計の出来栄えを評価するとよいと思います。
 
・部品1個当たり運搬距離
・工場内物流工数
・工場内通路比率
・工場内物流エリア比率
 
 レイアウトを新たに設計した時には、以前に比べてこれらの指標がよくなったのかどうか、どれくらいよくなったのかなどについて数値化して評価していくとよいでしょう。物流工程設計時には同時に荷姿設計を行うことが求められます。ものを保管したり運搬したりするときには、品質を維持するためにどうしても荷姿が必要になります。
 
 特に長距離輸送が必要になると、その荷姿の出来栄えが物流コストに大きな影響を与えます。工程設計と同様、最初が肝心ですから入念につくり込むことが重要です。荷姿の効率がよければ、保管エリアの効率も向上します。つまり小さなスペースで済むということになるわけです。荷姿効率の一つに圧縮できる容器が挙げられます。ものが入っていない空の状態のときには折りたたむなどして圧縮すれば保管スペースも小さくて済みます。
 
 工程設計と同時に物流標準作業書も作っていってしまうと効果的です。標準作業書の中には物流標準時間も入れていきます。この標準時間から、以前のレイアウトに対してどれくらい物流が改善されたのかが一目瞭然となります。ぜひ標準時間は設定し、物流工程設計の評価も行いましょう。
 
 物流工程設計で落としてはならないものが出荷場と受入場の設計です。ものづくりと少し離れているため注目度が高くないかもしれません。工場の玄関であるこの2つについては荷量やトラック台数の条件によって大きく差が出てきますので、将来的なこれらの「量」のデータをベースにしっかりと設計しましょう。
 
 トラック台数の割にトラックポートが少なすぎればトラックの順番待ちが発生してしまいます。トラックポートと荷降ろし場が離れていると、フォークリフトによる長距離運搬が発生してしまいます。このような問題点について工場の中で意識している人は極めて少ないと思います。ですからここは物流スタッフが中心となり、抜かりなく設計しておくべきでしょう。
 
 繰り返しになりますが、物流は最初が肝心です。間違った設計や手抜き設計は後々長年にわたって大きなロスを生じさせます。ぜひタイミングを逃さずに物流を効率化すべく、物流工程設計をしっかりと実行していきましょう。
 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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