日々のコンサルティング業の合間に、お問い合わせいただいた金型メーカーや部品加工メーカーの皆さんに行っている無料診断ですが、全国の色々な金型メーカーを診断させていただく中で、生産性に関わるある共通した現象があることに気づきました。病(やまい)ということですので、本来は望ましくない現場のある特徴になります。その病とは特に、あるメーカーのマシニングセンターを使っている金型メーカーに発生していました。
◆ 病にかかった金型メーカーにおける具体的な現象
そのあるメーカーのマシニングセンターには、近年多くのマシニングセンターの制御盤に装備されている対話ソフトがありません。そもそも対話ソフトとは、マシニングセンターの制御盤に添え付けられたCAMのようなソフトで、MAZAKさんのマザトロールが有名です。
タップやリーマ穴などの加工において、センター穴・下穴加工・面取り・タップ(リーマ)などといった複数の工具を使う加工においても、「M10 タップ」など加工種類と、座標位置を打ち込むだけで、簡単に一連の加工プログラムを作ることができます(Gコードプログラムを出力するものもあります)。
しかし、この対話ソフトが装備されていないマシニングセンターについては、元々、金型意匠面など倣い形状(3D形状など)を高精度に切削するための機械というコンセプトであったのだと思います。プレス金型、プラスチック金型、ダイカスト金型など、金型種類を問わず、どの金型も2D加工、つまりプレート部品などの穴あけ加工やポケット加工など、3D加工以外の構造部の切削加工が多く存在します。
もちろん、加工現場ではそういった2D加工も同じマシニングセンターで加工しなければならないのですが、対話ソフトのない機械では、ジョグ送りを使った手動による加工もしくは、Gコードプログラムを手編集して対応するしかありません。もしくは、加工条件や加工する座標位置を入力するだけで済むような、Gコードによるマクロプログラムを打ち込んで利用するということもあります。
しかし、そういったスキルを持った機械オペレーターがいない加工現場では、例えば、たった2、3か所のキリ穴をあけるようなプレート加工においても、別のCAMオペレーターにより、加工プログラムと段取り図、条件表、工具一覧表などを作ってもらい、それを使ってマシニング加工を行うという分業体制をとっています。また、複雑でもなんでもない軌跡のエンドミル加工についても同様です。プレートの厚みや段差の切削など、一本線で済むような軌跡の加工でも、CAMでプログラムを提供して加工している場合があります。
このような加工であれば、手動送りやジョグ送りを使った加工で充分です。また、きれいな仕上がり面が必要ない加工であれば、ラフィングエンドミルを使えば何回もスライスせずに一回の切り込みで済んだりします。したがって、簡単な加工にまでCAMデータを提供するプロセスは、非常にムダな間接コストがかかっていると言わざるを得ません。特に、設計に工数をかけて部品図を作成し、それを現場に渡しているにもかかわらず、別途CAMでデータを作成しているという金型メーカーについては、特にそう思います。
こうして余剰にかかった間接工数は、金型ごとの原...