中国での工場立ち上げ事例

投稿日

1. 失敗例

 1998年、ある中堅の機械部品会社が、中国で工場を立ち上げることとなりました。国内ならまだしも、言葉や文化、法制度等の異なる国でもの造りを立ち上げるのは容易ではありません。国内工場でさえ人材不足なところに、生産移転のためさらに幹部やベテランが膨大な時間を割かれることとなりました。悪戦苦闘の末、2年後同工場は稼動開始しましたが、本当の苦難はそれからでした。次から次へと発生するトラブル対応、①材料・部品・工具の欠品多発、②作業者の未熟や手抜きによる不良発生、③上手く伝わらない作業手順、④機械の故障対応の遅れ、補修パーツの行き違い・・・・等。結局最初の1~2年は極めて低い稼働率で大赤字となりました。

2. 教訓

 工場移転のためには何をすれば良かったのでしょうか。それは、「十分な現状分析に基づいた計画作成とその更新運用」であります。生産管理学では、工場立ち上げ・生産移転も「生産計画」の一つと位置づけます。すなわちこの失敗例の場合、生産計画が極めて不十分か又は、事実上存在しなかったと言えます。生産移転のような場合、通常の生産計画と比較して数十倍の計画が必要なはず、しかし、「計画作業」を軽んじた結果、取り返しの付かない混乱が生じることとなったわけです。孫子の兵法では、「戦の前に、始めに計ること」が勝敗を決すると諭し、負け戦は不十分な計画から生じると断言しています。

3. 生産管理の三要素

 生産計画において何を計画するのでしょうか。これが、生産の三要素(3M)であります。すなわち、適切に、①作業者・人材(Man)を確保、②機械設備(Machine)を準備、③...

1. 失敗例

 1998年、ある中堅の機械部品会社が、中国で工場を立ち上げることとなりました。国内ならまだしも、言葉や文化、法制度等の異なる国でもの造りを立ち上げるのは容易ではありません。国内工場でさえ人材不足なところに、生産移転のためさらに幹部やベテランが膨大な時間を割かれることとなりました。悪戦苦闘の末、2年後同工場は稼動開始しましたが、本当の苦難はそれからでした。次から次へと発生するトラブル対応、①材料・部品・工具の欠品多発、②作業者の未熟や手抜きによる不良発生、③上手く伝わらない作業手順、④機械の故障対応の遅れ、補修パーツの行き違い・・・・等。結局最初の1~2年は極めて低い稼働率で大赤字となりました。

2. 教訓

 工場移転のためには何をすれば良かったのでしょうか。それは、「十分な現状分析に基づいた計画作成とその更新運用」であります。生産管理学では、工場立ち上げ・生産移転も「生産計画」の一つと位置づけます。すなわちこの失敗例の場合、生産計画が極めて不十分か又は、事実上存在しなかったと言えます。生産移転のような場合、通常の生産計画と比較して数十倍の計画が必要なはず、しかし、「計画作業」を軽んじた結果、取り返しの付かない混乱が生じることとなったわけです。孫子の兵法では、「戦の前に、始めに計ること」が勝敗を決すると諭し、負け戦は不十分な計画から生じると断言しています。

3. 生産管理の三要素

 生産計画において何を計画するのでしょうか。これが、生産の三要素(3M)であります。すなわち、適切に、①作業者・人材(Man)を確保、②機械設備(Machine)を準備、③材料(Material)を揃えて、生産にあたることです。これを生産の三要素といいます。上述の中国工場移転の場合、工場・機械設備(Machine)を揃えても、人材(Man)確保育成や材料(Material)の調達計画が国内と同じ発想で軽視したため、トラブル多発となったわけです。

 

結論、生産管理の本分とは、生産の三要素を計画的に運用して最適化すること

   続きを読むには・・・


この記事の著者

秋山 高広

究極のムダゼロ生産を目指して!JIT生産/セル生産構築、5S活動支援から生産管理・原価管理システム構築まで多様な支援メニュー。1日工場診断、短期改善支援、1年以上の生産革新支援まで何なりとご相談ください!

究極のムダゼロ生産を目指して!JIT生産/セル生産構築、5S活動支援から生産管理・原価管理システム構築まで多様な支援メニュー。1日工場診断、短期改善支援、...


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
中国工場の実状を知る 中国工場の品質改善(その37)

 前回のその36に続いて解説します。 【第3章】(自社)中国工場、品質管理の進め方   【3.6 中国工場での人材マネジメント】 ◆...

 前回のその36に続いて解説します。 【第3章】(自社)中国工場、品質管理の進め方   【3.6 中国工場での人材マネジメント】 ◆...


強い工場を作るプログラムとは

 強い工場を作るプログラムとは一体どのようなものでしょうか、今までの工場はモノを作るための「ものづくりの現場」を大事にして来ました。ただこれからは、「もの...

 強い工場を作るプログラムとは一体どのようなものでしょうか、今までの工場はモノを作るための「ものづくりの現場」を大事にして来ました。ただこれからは、「もの...


安定生産品と特注品が混在する受注生産工場の製造原価低減策

   近年、中小製造業は受注品の多品種少量生産化傾向の中で、様々な課題が浮き彫りになっています。長期にわたって継続する安定生産品と断続的な小ロ...

   近年、中小製造業は受注品の多品種少量生産化傾向の中で、様々な課題が浮き彫りになっています。長期にわたって継続する安定生産品と断続的な小ロ...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
3次元データ加工のセオリー 伸びる金型メーカーの秘訣 (その15)

 今回紹介する部品加工メーカーは、T鉄工所です。同社は、フォークリフトの構成部品の機械加工を行っており、特に溶接製缶品の切削や穴あけに特化した加工技術が得...

 今回紹介する部品加工メーカーは、T鉄工所です。同社は、フォークリフトの構成部品の機械加工を行っており、特に溶接製缶品の切削や穴あけに特化した加工技術が得...


品質管理 中国工場管理の基本事例(その18)

  ◆ 品質管理-中国工場の品質がよくないのはなぜか(その8) 1. 中国工場の問題点を生産の3要素で捉える  中国工場で生産するとき...

  ◆ 品質管理-中国工場の品質がよくないのはなぜか(その8) 1. 中国工場の問題点を生産の3要素で捉える  中国工場で生産するとき...


刃物の摩耗管理は、中国ではなぜできない。 中国企業の壁(その6)

1. 刃物の摩耗管理は、中国ではなぜできない。   今回は、リード線をカットする刃物の管理に関する話です。セットメカや電気部品によく使われるリード線...

1. 刃物の摩耗管理は、中国ではなぜできない。   今回は、リード線をカットする刃物の管理に関する話です。セットメカや電気部品によく使われるリード線...