-活字印刷、合成ゴム- 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その1)

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【ひらめきの法則 連載目次】

  1. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その1) -活字印刷、合成ゴム
  2. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その2) -ナイロン、炭化タングステン
  3. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その3) -安全剃刀、テレビジョン
  4. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その4) -ベッセマー製鋼法、セルロイド

1.傷つけてしまった聖書の印刷用木版を見て、文字を一字ずつばらばらにした活字を発明したドイツの金属加工職人、ヨハネス・グーテンベルグ

                                                                                           katuzi1     
 現在の出版の礎をつくったのは、15世紀半ばに、活版印刷術を発明したドイツのグーテンベルグです。彼は宝石磨きの仕事をしていましたが、あるとき、ストラスブルグの僧院の図書館で『貧乏人の聖書』というペン画の書物を見せてもらい、大変感激しました。そして、このことが活字印刷発明のきっかけとなります。なぜならば、当時の書物は手書きか木版で、権力者か聖職者以外はなかなか目にすることができない貴重品でした。もっとたくさんの人に書物を見せたいという考えに取りつかれたグーテンベルグは、宝石磨きの仕事を捨てて、木版の技術を学び、苦労の末に木版の絵入り聖書を出版しました。
 
 この出版は大成功でしたが、彼はさらに大がかりな目標と計画を立てました。それは、本物の聖書を丸ごと出版しようというものです。これは、手で彫り上げる木版では30年はかかろうという大事業です。彼はコツコツと作業を続けましたが、ある晩、ついうっかり作業中の木版に傷をつけてしまいました。仕上がる間際のミスだったので、彼はくやしくて、なんとかならないかとその版を見つめていると、突然アイデアがひらめきました。「木版を一字ずつばらばらにして使えないだろうか」、こうして一字一字アルファベットを刻んだ活字が誕生し、活字の組み合わせによる印刷の技術が幕を開けました。
 

2.ストーブの上にゴムと硫黄の混合液をこぼしたことから、硬質合成ゴムの製法を発見したアメリカの発明家、チャールズ・グッドイヤー

 
 自分の名をブランド名にしたタイヤがあることで有名な、アメリカの発明家グッドイヤーは、硬質合成ゴムの製法を発見し、ゴムの利用範囲を大きく広げた功労者です。天然ゴムが中南米からヨーロッパに初めて伝えられたのは案外古く、コロンブスの時代です。その後、世界各地に広まっていった天然ゴムですが、その利用範囲はあまり広がりませんでした。19世紀になってようやくレインコートに使われたものの、暑いと表面がベトベトになる、寒いとゴワゴワになるなど、気温の変化に弱いという天然ゴムの欠点が明らかでした。
  
 そんな中、1839年のある日、金属商社社員のグッドイヤーは、天然ゴムと硫黄の混合液を運んでいて、うっかりストーブの上にこぼしてしまいました。冷えてからようすを見てみると、ゴムは黒こげになっていましたが溶けておらず、冷えても硬くならない性質に変容していました。ストーブの上にこぼした失敗で、グッドイヤーは、「加硫法」という合成ゴムの製法を発見し、ゴムの用途拡大に大きく貢献しました。
 
                                                 出典:「ひらめきの法則」 髙橋誠著(日経ビジネス人文庫)

◆関連解説『アイデア発想法とは』

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【ひらめきの法則 連載目次】

  1. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その1) -活字印刷、合成ゴム
  2. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その2) -ナイロン、炭化タングステン
  3. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その3) -安全剃刀、テレビジョン
  4. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その4) -ベッセマー製鋼法、セルロイド

1.傷つけてしまった聖書の印刷用木版を見て、文字を一字ずつばらばらにした活字を発明したドイツの金属加工職人、ヨハネス・グーテンベルグ

                                                                                           katuzi1     
 現在の出版の礎をつくったのは、15世紀半ばに、活版印刷術を発明したドイツのグーテンベルグです。彼は宝石磨きの仕事をしていましたが、あるとき、ストラスブルグの僧院の図書館で『貧乏人の聖書』というペン画の書物を見せてもらい、大変感激しました。そして、このことが活字印刷発明のきっかけとなります。なぜならば、当時の書物は手書きか木版で、権力者か聖職者以外はなかなか目にすることができない貴重品でした。もっとたくさんの人に書物を見せたいという考えに取りつかれたグーテンベルグは、宝石磨きの仕事を捨てて、木版の技術を学び、苦労の末に木版の絵入り聖書を出版しました。
 
 この出版は大成功でしたが、彼はさらに大がかりな目標と計画を立てました。それは、本物の聖書を丸ごと出版しようというものです。これは、手で彫り上げる木版では30年はかかろうという大事業です。彼はコツコツと作業を続けましたが、ある晩、ついうっかり作業中の木版に傷をつけてしまいました。仕上がる間際のミスだったので、彼はくやしくて、なんとかならないかとその版を見つめていると、突然アイデアがひらめきました。「木版を一字ずつばらばらにして使えないだろうか」、こうして一字一字アルファベットを刻んだ活字が誕生し、活字の組み合わせによる印刷の技術が幕を開けました。
 

2.ストーブの上にゴムと硫黄の混合液をこぼしたことから、硬質合成ゴムの製法を発見したアメリカの発明家、チャールズ・グッドイヤー

 
 自分の名をブランド名にしたタイヤがあることで有名な、アメリカの発明家グッドイヤーは、硬質合成ゴムの製法を発見し、ゴムの利用範囲を大きく広げた功労者です。天然ゴムが中南米からヨーロッパに初めて伝えられたのは案外古く、コロンブスの時代です。その後、世界各地に広まっていった天然ゴムですが、その利用範囲はあまり広がりませんでした。19世紀になってようやくレインコートに使われたものの、暑いと表面がベトベトになる、寒いとゴワゴワになるなど、気温の変化に弱いという天然ゴムの欠点が明らかでした。
  
 そんな中、1839年のある日、金属商社社員のグッドイヤーは、天然ゴムと硫黄の混合液を運んでいて、うっかりストーブの上にこぼしてしまいました。冷えてからようすを見てみると、ゴムは黒こげになっていましたが溶けておらず、冷えても硬くならない性質に変容していました。ストーブの上にこぼした失敗で、グッドイヤーは、「加硫法」という合成ゴムの製法を発見し、ゴムの用途拡大に大きく貢献しました。
 
                                                 出典:「ひらめきの法則」 髙橋誠著(日経ビジネス人文庫)

◆関連解説『アイデア発想法とは』

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この記事の著者

髙橋 誠

企業のイノベーション戦略の構築と実践をお手伝いし、社員の創造性開発を促進し、新商品の開発を支援します!

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