-ベッセマー製鋼法、セルロイド- 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その4)

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【ひらめきの法則 連載目次】

    1. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その1) -活字印刷、合成ゴム
    2. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その2) -ナイロン、炭化タングステン
    3. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その3) -安全剃刀、テレビジョン
    4. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その4) -ベッセマー製鋼法、セルロイド

1.反射炉の運転でミスをしたことから、新しい製鋼法を発見した、イギリスの発明家 ヘンリー・ベッセマー

 
 製鋼法で画期的な発明を成し遂げたのが、イギリスの発明家・企業家です。ヘンリー・ベッセマーは、父親の活版工場で、切手印刷機、活字鋳造機、植字機などを次々と発明し、数々の特許をとっています。彼は1856年、反射炉を運転する仕事をしていたとき、不注意から、炉に送り込む燃料のコークスが足りず、銑鉄が十分に溶けないという事故を起こしてしまいました。
 
 そこで、ベッセマーは反射炉の炉壁に張りついた銑鉄だけでも落とそうと考えます。空気を送り込んで、炉壁をきれいにしようとしたのです。空気を送ると、炉壁に張りついた溶けかかったままの銑鉄の赤みが増し、溶けはじめます。そのようすに興味を持った彼がさらに空気を送ると、銑鉄はやがてドロドロに溶けました。そこで鋳型に流してその日は帰宅し、次の日、鋳物になった鉄をいつものようにハンマーで叩いたところ、カーンカーンと鋭い金属音が聞こえます。銑鉄の中の炭素や燐、マンガンなど不純物が燃焼によって除去され、良質の鋼ができ上がっていたのです。これが世界の製鋼技術を大きく変えた「ベッセマー製鋼法」で、今までより安価で質のよい鋼を速く生産することに貢献しました。
 

2.傷口に貼る水絆創膏のびんを倒したことから、セルロイドを発明した、アメリカの印刷工 ジョン・ハイヤット

 
 1886年のアメリカは南北戦争が終わり、世の中が平和になるや否や巷では、ビリヤードが大流行します。ところがあまりにも盛んになりすぎて、ビリヤードの玉の材料となる象牙が品薄となってしまいbiriyad1ます。そこで、懸賞の好きなアメリカ人らしく、象牙の代替品を発明した人には1万ドルの賞金が出るという話まで持ち上がったのでした。印刷工場で働くジョン・ハイヤットは、懸賞の話を聞いて、ある経験を思い出しました。それは指先を怪我して、水絆創膏を塗ったときのことだった。水絆創膏は、コロジオンという液体の薄膜をつくる性質を利用したものだが、ハイヤットはついうっかり水絆創膏のびんを倒してしまいました。するとベタベタする液体はいつの間にか固まって、指先でころがすと玉状になったのです。この失敗をヒントに、ハイヤットはセルロイドを発明しますが、実験の際、偶然も彼に味方します。ふわふわした未完成の玉が机から落ちないように、虫除けの樟脳をつっかえ棒にしたところ、樟脳が触れたところが硬くなったのです。こうして、コロジオンに樟脳を加え、象牙の代替品・セルロイドが誕生しました。
 
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【ひらめきの法則 連載目次】

    1. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その1) -活字印刷、合成ゴム
    2. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その2) -ナイロン、炭化タングステン
    3. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その3) -安全剃刀、テレビジョン
    4. 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その4) -ベッセマー製鋼法、セルロイド

1.反射炉の運転でミスをしたことから、新しい製鋼法を発見した、イギリスの発明家 ヘンリー・ベッセマー

 
 製鋼法で画期的な発明を成し遂げたのが、イギリスの発明家・企業家です。ヘンリー・ベッセマーは、父親の活版工場で、切手印刷機、活字鋳造機、植字機などを次々と発明し、数々の特許をとっています。彼は1856年、反射炉を運転する仕事をしていたとき、不注意から、炉に送り込む燃料のコークスが足りず、銑鉄が十分に溶けないという事故を起こしてしまいました。
 
 そこで、ベッセマーは反射炉の炉壁に張りついた銑鉄だけでも落とそうと考えます。空気を送り込んで、炉壁をきれいにしようとしたのです。空気を送ると、炉壁に張りついた溶けかかったままの銑鉄の赤みが増し、溶けはじめます。そのようすに興味を持った彼がさらに空気を送ると、銑鉄はやがてドロドロに溶けました。そこで鋳型に流してその日は帰宅し、次の日、鋳物になった鉄をいつものようにハンマーで叩いたところ、カーンカーンと鋭い金属音が聞こえます。銑鉄の中の炭素や燐、マンガンなど不純物が燃焼によって除去され、良質の鋼ができ上がっていたのです。これが世界の製鋼技術を大きく変えた「ベッセマー製鋼法」で、今までより安価で質のよい鋼を速く生産することに貢献しました。
 

2.傷口に貼る水絆創膏のびんを倒したことから、セルロイドを発明した、アメリカの印刷工 ジョン・ハイヤット

 
 1886年のアメリカは南北戦争が終わり、世の中が平和になるや否や巷では、ビリヤードが大流行します。ところがあまりにも盛んになりすぎて、ビリヤードの玉の材料となる象牙が品薄となってしまいbiriyad1ます。そこで、懸賞の好きなアメリカ人らしく、象牙の代替品を発明した人には1万ドルの賞金が出るという話まで持ち上がったのでした。印刷工場で働くジョン・ハイヤットは、懸賞の話を聞いて、ある経験を思い出しました。それは指先を怪我して、水絆創膏を塗ったときのことだった。水絆創膏は、コロジオンという液体の薄膜をつくる性質を利用したものだが、ハイヤットはついうっかり水絆創膏のびんを倒してしまいました。するとベタベタする液体はいつの間にか固まって、指先でころがすと玉状になったのです。この失敗をヒントに、ハイヤットはセルロイドを発明しますが、実験の際、偶然も彼に味方します。ふわふわした未完成の玉が机から落ちないように、虫除けの樟脳をつっかえ棒にしたところ、樟脳が触れたところが硬くなったのです。こうして、コロジオンに樟脳を加え、象牙の代替品・セルロイドが誕生しました。
 
                                               出典:「ひらめきの法則」 髙橋誠著(日経ビジネス人文庫)

◆関連解説『アイデア発想法とは』

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髙橋 誠

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