一石三鳥;感染拡大防止と医療従事者の負荷軽減と経済復興
1、IEと「ヤバ・い」IEについて
IE(Industrial Engineering)はQCと共に日本が米国から学んだ管理技術(ものづくりマネジメント)の一つで、ものづくりにおける「流れ(工程)」と「価値の付加(作業)」を観察・分析し、無駄を省いて生産性を上げる方法です。米国はテーラーの科学的管理法に始まって、日本ではトヨタ生産方式のJIT(Just in Time)、ゴールドラットのTOC(Theory of Constraints)、サプライチエーン・マネジメントに至るものです。
ここで「ヤバ・い」としたのは、世界でいま最も注目すべき気鋭の経済学者スティーヴン・D・レヴィット博士の「超ヤバい経済学」に因んで、また、旧来の“やばい=ひどい”と若者の“ヤバイ=すごい”の2つの意味を込め、皆さんにIEへの新しく実践的な考察を提供するものです。
2、新型コロナ危機第2波入口戦略と「ヤバ・い」IE
これまで7回シリーズで、QCによる「新型コロナ危機への対応・・第2波入口戦略」について考察してきました。結論は、(無症状だが感染力の強い感染者(スーパースプレッダー)がいて無意識のうちに多くの人に感染を広めていること、検査能力は技術的には十分あることから)、まず感染の震源地(エピセンター)とされる新宿で「全員検査を実施して感染者を早期に見付け隔離し、街中にコロナが居ない<安心>街づくりをする」ことが急務であるとし、新宿区長に決断を促す緊急の書面を速達・親展で送っていますが一向に動きが見えません。
この問題を「ヤバ・い」IEで考察し、更なる働き掛けをしています。
3、流れ(工程)を考察し、ボトネックを解消する
今の流れは、検査(症状あり+濃厚接触者)→陽性者自宅待機(保健所による療養・入院調整待ち)→自宅療養or施設療養or入院。
併せて「検査特区」では、全員検査→陽性者はすぐに指定施設へ(保健所による医療検査・調整)→陰性者解放or施設療養or入院。
<検査>
技術的には東京都には5万件/日の検査能力(大学等にある検査機器を動員し、PCR検査に抗原検査を加え、10人分の検体を混ぜて行うロット検査で能力10倍。これらを合せて)があるといわれるが、検査件数は最高で5,000件/日。ボトルネックは何処?何が制約?
今の検査は厚労省管轄の感染者を検査し治療する“医療目的”のPCR検査なので、検査は一人ひとりする必要があり、文科省管轄の大学の検査機器は使えないのです。
この制約を取り払うには、1.検査を2段構え(①社会目的の検査と②医療目的の検査)にし、①は感染拡大防止のための「全員目的」で、②は今の検査(症状あり+濃厚接触者)に①の陽性者を加えたものと位置付け、2.新宿区を「検査特区」にして①社会目的の「全員検査」を実施します。社会目的の検査は医療行為ではないので、全ての検査機器を動員し、ロット検査(1次)+陽性ロット個人検査(2次)を組み合せて、東京の5万件/日の検査能力をフルに活用できます。これで新宿区の住民と働く人53万人の検査も(十分に準備をして)10日余で可能になります。
ここで、2つの厄介な(心理的)制約も考慮する必要があるのです。一つは、隔離した陽性者が疑陽性の場合に人権侵害で訴えられる恐れ・・これは「社会目的の検査で陽性になった人は、指定施設で一時休養することが感染拡大防止のための国民の義務で、必要な補償が得られる」というコンセンサスをつくることで解決する。もう一つについては次項で考察します。
<陽性者収容>
今は、陽性者が出ると一人ひとりについて、保健所が入院先や療養先など調整(残業・休日出勤で限界まで努力)しているにもかかわらず手が回らなくなり、7/23の調整待ちは717人、自宅待機が392人の計1,109人が待機中に感染を広げてしまう危険性を持っています(下表左側)。これを(下表右側のように)、「全員の検査」の陽性者は(保健所の調整なしに)自動的に宿泊休養施設に入り、施設滞在中に医療検査を受ける。宿泊施設を十分準備することで、陽性者は全員が施設に直行(空室に順番に入るシンプルなルールで調整不要)でき、新たな感染者を出す危険性がゼロになります。医療検査で疑陽性者は陰性が確定し一時休養から解放され、感染者は指定病院に入院する。宿泊施設で十分となるため、全員検査して陽性者が多く出たら収容先がないという(心理的)恐れもなくなります。小池百合子東京都知事の目指す2,000室を早く実現させ、先を見た準備をし...