【目次】
1、多発するヒューマンエラー
2、ヒューマンエラー多発問題の考え方
3、ヒューマンエラー多発対策手順
4、ヒューマンエラー多発対策まとめ
◆ 小ロット・個別加工品のヒューマンエラー対策
今回は、当事務所にいただいた個別課題の質問に対する回答事例をご紹介する型式で、小ロット・個別加工品の多発するヒューマンエラー不具合対策を解説します。質問事例は次のようです。
1、多発するヒューマンエラー
『当社は機械部品の製造を行っており、主に扱っているワーク材質はSUSやSS、銅やアルミなどです。小ロットかつ多品種を扱っており大きなロットの加工は行っていません。自社で設計は行わず、客先から提供される図面を元に、内製や外注にて加工しています。自社で行っている機械加工、特にマシニングセンターやNCフライス、ワイヤーカット加工などでヒューマンエラー(ポカミス)や加工不具合が多発しており、担当者からの報告書を元に、不具合の集計・原因究明・対策立案などを行っておりますが、現状を改善させるには至っていません。』
どこに焦点を当て、改善を図っていくのがよろしいでしょうか。このような質問でした。
2、ヒューマンエラー多発問題の考え方
量産部品のように継続して流れる加工の場合は、試し加工を行いながら、寸法精度や外観品質などを調整していけるのですが、一品モノや小ロット品の多くは、試し加工を行わず一発勝負になることが多いようです。
したがって、いざ加工してみた後に問題が発覚したとか、思い込みでミスをしてしまったという事例が多く発生します。ではミスや思い込みを予防するために、試し加工をするかというと、予算や工数的にも現実的ではないため、現実は一発勝負になるのが一般的だと思います。
3、ヒューマンエラー多発対策手順
個々の案件の再発防止策を考えるよりも、社員共通で使える加工前ルールの整備を検討します。その理由は、一品モノでリピート性の低い多品種の加工を行っているのにもかかわらず、個々の案件で不具合対策を作っていくと、出番が少ない対策だけがどんどん増えていき、形式上だけの処置になってしまうためです。再発防止策を書き込んだ不具合報告書を書くなどの手続きをきちんと行っている割には、社内の不良・ミスは一向に減らないという状況に陥ってしまいます。そこで、私から提案した方針は、次のようになります。
<危険予知・リスク管理をベースとした加工工程の検討を加工開始する前に必ず行う>
ただし安価な案件まで全て行うことは効率的ではないため、売値や材料費に応じて、検討にかける工数は判断します。
例えば薄い材料で大きなポケット加工を行うと、仕上げ後に歪みで寸法が狂うのではないか、したがって数ミリ残して一旦仮で仕上げて測定したのち本仕上げを行うなど、形状や材質に応じたリスク管理を行うことなどが該当します。
ある事例では、現場に製造手配を行う事務員さんが、その都度過去のトラブルを検索し、加工指示書に過去の不具合事例を何件か図面とともに添付し、担当者に注意を促して、リスク管理をしています。
<作業者のスキルに応じた関所を設定する>
ここでいう関所とは、おおよそこの手順を踏めば、ほとんどのポカミスは発見できるという定形の確認手順のことです。
<全員が共通して使える「過去トラ・データベース」を整備する>
「過去トラ」とは、過去に発生したトラブルのことです。その一覧を作りますが、データベースということですので、部品名や材質、加工内容などで、過去のミスや不具合を即座に検索できる仕組みを作ります。色々な材料や一過性でリピート性の低い加工品を扱っておりますので、リスク対応について個々の作業者の記憶に頼るのは危険です。
また、この過去トラデータベースは、KYT(危険予知トレーニング)の社内教育や加工工程の検討、案件ごとの作業チェックリスト作成にも使用できます。
<ダメージ金額に応じて手作業とCAMの使い分けをする>
一定金額以上の加工品はCAMの使用を義務付けるということです。汎用機を使用した手加工は、CAMデータを作成しない分、加工に入るまでの時間を短縮できますが、寸法間違いなどのイージーミスが即、不具合につながってし...