今回のテーマは、CAMとマシニングセンターの作業オペレーターが分業体制になったことで、多くの加工メーカーや金型メーカーで聞かれる、ドリルやエンドミルの寿命判定が難しくなった件について事例解説します。
【目次】
1、金型・部品加工:分業でドリルやエンドミルの寿命判定が難しくなった
(1)どのように対処していくべきか
(2)工具を引き続きどう使用するか判断
1、金型・部品加工:分業でドリルやエンドミルの寿命判定が難しくなった
状況としては、マシニングのオペレーターがワーク交換の段取り時に、引き続き次のワークの加工で使用するエンドミルやスローアウェイカッター、ドリルなどの摩耗状態について、交換や再研磨の時期が来ているかどうか判断することが難しいということです。
その原因として、機械オペレーターが必要な知識を持っていない、または別のCAMオペレーターがNCデータを作成しているため、次の加工内容・ボリュームが分かりにくく、常にベテランに確認しないといけない、判断に時間がかかる、まだ使える状態なのにすぐ交換してしまうなど、業務に様々な支障が出ているという実態です。
理想は、限界ギリギリまで使いきりたいというのが、皆さんの本音だと思いますが、もう少し行ける、もう少し行けるとそのまま次のワークの加工で使用して、結果最後までもたず、工具が破損し、ワーク自体も加工不具合になってしまうという事例があるようです。
(1) どのように対処していくべきか
実際に加工が終わった後の工具刃先の状態を見てみると、様々な状況がみてとれます。
ある工具では、コーティングが剥がれ少しカケが見られるものや、刃先の角だけが摩耗しているもの、先端がつぶれるように摩耗しているものなど色々な状態が確認されます。これらの工具について、一体あとどのくらい使えるのか、この判断が最も難しいと思います。
前述したように、できれば限界ギリギリまで使いきりたいという思いがあります。そこで本来は、次に加工する内容とボリュームによって判断し、摩耗状態によって使い分けるのが望ましいと思うのですが、私は次のように3段階の作業パターンによって使用済み工具を引き続きどう使用するか判断する方法が良いと思っています。
- ① 日中昼間など、オペレーターが機械に張り付いて作業している状態
- ② オペレーターが機械付近で別の作業をしているが、張り付いて加工を見ているわけではない状態
- ③ 夜間など完全な無人で自動加工している状態
① 日中昼間など、オペレーターが機械に張り付いて作業している状態
①のパターンですが、最も限界ギリギリまで工具を使用できる作業形態です。分かりやすい例でいえば、スローアウェイカッターを使って荒取り加工する場合です。
私は日中の昼間で他の機械の段取りがなく、荒取り加工している機械に張り付いて見ている状態であれば、一部コーティングが剥がれ、少し摩耗が進んでいるチップでも、もう少し使えるようであれば、加工中に音が大きくなったり、加工面がひどく荒れてくる手前のところまで使い、経済性を優先します(途中で止めます)。もしくはCAMデータを使わず、手動やMDIの操作で加工するような場合も同様です。
後述する②や③のような無人状態で使うのはちょっと怖いなと思える工具でも、捨ててしまうのはもったいないため、この①の張り付いて見れる有人加工で、なるべく使用済みの工具を積極的に使用するのが良いと思っています。
② オペレーターが機械付近で別の作業をしているが、張り付いて加工を見ているわけではない状態
②のパターンですが、機械の近くで作業しているとはいえ、異音がした際、即ストップボタンを押せるというわけではないので、あまり摩耗が進んでいない工具を選んで使うということになります。この①で使う工具と、②で使える工具との見極めがポイントになります。例えば、限度見本を用意し、判別しやすくするなどの方法が考えられます。
さらに言えば、単純に「まだ使える」「もう使えない」という2択の判断でもないといえます。
③ 夜間など完全な無人で自動加工している状態
③のパターンですが、基本的に安全面を考慮すると、ほとんど新品、もしくはそ...