持続可能な社会の実現に貢献できる体制の構築目指す
株式会社日阪製作所(大阪府大阪市)
目次
- どんな業務もCSR活動の一つ
- CSRの樹「より高く、より広く、より深く」
- CSR-SDGs:6つのビジョン
- 環境と食への安全に対する現在と未来像
- 社会貢献実践に向けた社内外の取り組み
- “日阪”の総合力で「持続可能な社会の実現」を
1. どんな業務もCSR活動の一つ
産業機械製造と販売業を営む日阪製作所(大阪府大阪市・竹下好和代表取締役社長)では、2016年2月にCSR(企業の社会的責任)活動をより、社内に浸透することを目的にCSR推進準備室を設置。翌年にはCSR推進室として活動を始めました。
同社では「どんな業務(活動)でも、それはCSR活動の一つ」ととらえ、社員一人ひとりがそれを認識できる環境づくりを行うため2018年、それまで取り組んでいたQC(品質管理)サークルの名称を「CSRサークル」と改名。「QCだけでなく、取引先はじめ、地域社会や環境などに対し、社会的責任を果たす役割を担っていることを、社員一人ひとりが認識していこう」と活動内容を広げ、さらなるCSRの推進を目指しています。これら活動による成果を具体的にイメージしたものが、同社の「CSRの樹」です。
2.CSRの樹「より高く、より広く、より深く」
「CSRの樹」は、地域社会や環境などを「空」に置き換え、これらに対する日々の事業活動を「根」、活動を通じた社会との繋(つな)がりを「葉や幹」とし「社員が主体的・自発的に取り組むことで、社内に強い組織風土(土壌)が醸成され、ステークホルダーや社会貢献に繋がり、結果として企業の成長と持続的発展を生む」という、事業活動により得られる成果の好循環をイメージしています。デザインは社内公募によるもので、完成まで半年を要したそうです。
【写真説明】日阪製作所の掲げる「CSRの樹」(同社提供)
現在、同社にはCSRサークルが50組ほど存在し、それぞれが自分たちの日々の業務・業務カテゴリーを見直し、サークルごとに「CSRの樹」を毎年作り替えながらメンバー間で共有し、目標に向けた取り組みが行われています。これら活動結果は活動報告書として提出され、CSR推進室の一次評価、リスク管理委員会(リスク管理委員会については後述)の二次評価を経て下記のように
- 活動手順や手続きが秀でていた活動…「プロセス賞」
- 他部門への展開可能性など定性的な成果があった活動…「定性賞」
- 紙や時間、材料などに対する軽薄短小化によって削減された時間や炭酸ガス削減量が多い活動…「定量賞」
- 社内への特別紹介したい活動など…「特別賞」
の4賞が用意され、受賞サークルは年1回開催される社内CSR大会で、取り組みの発表ほかSDGsに関する講演が行われています。
【写真説明】社内勉強会㊧とCSR大会の様子(同)
3. CSR-SDGs:6つのビジョン
2020年度にはこれまでのCSR活動を基にSDGsへの取り組みを追加した「CSR-SDGsビジョン」を策定。同社の3カ年計画の将来の姿として「社会課題を解決し、持続可能な社会の実現に貢献できる企業」を目指すことになりました。
同社ではまず、SDGsで掲げる17目標のゴールを達成するためのターゲット169項目について「事業推進の中で貢献できるもの」、「社内的活動を通じて寄与できるもの」に分類したうえで、自社で取り組み可能な目標を選定。CSR-SDGsビジョンと紐(ひも)づける(目標1・貧困をなくそう以外の)ことで、16の目標について取り組みを進める事を決めたといいます。
CSR-SDGsビジョンは、
- 日阪の保有技術を活用したソリューションの提供(SDGs目標:2、3、6、7、9、11~15)
- 多様性(働き方、性別・国籍、障がい等を含む個性)を活(い)かし、みんな(社員)が健康で活躍できる会社に(同目標:3~5、8、10)
- 災害対応力の強い会社に(同目標:11~13)
- MOTTAINAI(もったいない)活動でCO2排出量削減を推進(Reduce:減らす、Reuse:繰り返し使う、Recycle:再資源化する)、(同目標:6、11~14)
- ガバナンス向上による成長と健全かつ適正な業務運営(コンプライアンス)、(同目標:16)
- パートナーシップによる社会課題の解決、ソリューションの提供(同目標:17)
以上、6つのビジョンで構成され①と⑥は顧客やサプライチェーンなどと協働する事業を通じたビジョンを、②~⑤は社員が“持続可能な会社”にするための社内活動を通じたビジョンが設けられています。
4.環境と食への安全に対する現在と未来像
そんな同社のCSR-SDGsビジョンで掲げる社会課題解決に対する取り組みの中から「CO2削減」と「食品」、「節水」の3つに注目します。
① 「CO2削減」…プレート式熱交換器は化学、電力、製鉄、船舶、食品など幅広い産業へ、熱回収による省エネルギー用途に使用され、CO2排出量削減に貢献しています。また世界共通課題のCO2排出量削減に対応するため、同社では、CCS(Carbon Capture and Storage:カーボン・キャプチャー・アンド・ストレイジ)という、化学工場などで燃焼した排ガスからCO2を回収し、地中に貯留するプロセスの中で使われるアミン系水溶液の加熱や冷却用途として、熱交換効率が高いプレート式熱交換器を開発・製造しています。
②「食品」…昨今「食への安心・安全」への関心が高まる中、同社では長期常温保存が可能なレトルト食品や缶詰といった、食品を密封してから高温高圧下で加熱殺菌する調理殺菌装置を製造しており、そのシェアは「60%近くになる」(同社)といいます。また、コンビニエンスストアなどで売られているチルド食品の殺菌にも同社の装置が一役買っており、現在、賞味期限をさらに延ばすためのプロセス開発が行われるなど、食品ロス低減の対策に大きく貢献しています。
③ 「節水」…ポリエステル製の反物など、一般的に「染めにくい」といわれる合成繊維の染色装置を製造している同社ですが、現状では染生地の重量「1」に対し、5~10倍の水が必要で、染色後はすべて排水となってしまうことから、水質汚染防止など環境面からみて、いかに少ない水で、均一に染め上げるかが染色工程の課題となっています。この問題を解決するため、同社では染色工程で、染色後の排水を一切出さない、環境に配慮した超臨界染色処理装置の開発に日々取り組んでいます。
これは、CO2を使用し、高圧の超臨界状態で染色する近未来の技術ですが、高圧処理を行うことから、装置が高価格となるため、汎(はん)用機として使用するためには、コストダウンと生産性向上が今後の課題となっているそうです。また「いかに少ないエネルギーで装置を動かし、高品質の製品を作っていくかが大目標」と、生産性向上と省エネの両立を目指しています。
5.社会貢献実践に向けた社内外の取り組み
CSRサークルを軸に活動を進めてきた同社ですが、さらに2018年から「リスク管理委員会」を設け、リスクアセスメント[1]の運用を始めています。同社ではSDGs目標の16番「平和で公正な社会」との関連性もあることから、これらの抑止力となる企業ガバナンスやコンプライアンスの強化に力を入れ、社員向けにメールマガジンを配信(月に1回)し、周知に努めています。
表. 同社が進める2020年度リスクアセスメントの一例(同)
また、翌年からは環境ビジネスに関する常設展示場「おおさかATCグリーンエコプラザ」(大阪市)内のSDGs研究会に入会。同社製品の常設展示を始めています。さらに、2020年のCSR-SDGsビジョン発表後は、社外広報の一環として関西経済連合会などが運営する「関西SDGsプラットフォーム」や内閣府の「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」にも登録。メンバー間の情報共有に努める一方、社員向けのe-ラーニングも始めるなど、社内浸透のほか社員教育も図っています。
開始から3年が経過したCSR活動ですが、これまでの3年間を振り返り、開始初年度と比べCSRに対す...