1980年代から1990年代の20世紀末は日本のものづくり経営が世界で注目されましたが、バブル崩壊で日本経済が低迷し、日本的経営への自虐的批判が噴出して、ものづくり現場が海外移転するなど、日本的経営の底力が弱まっているように見えます。
しかし、この時代にトヨタ式経営を研究した故ゴールドラット博士が、ベストセラー「ザ・ゴール」を書いてサプライチェーンマネジメント(
SCM)の基礎理論
TOC(制約理論)を作り、筆者始め何人かの専門家によって日本に紹介されました。
筆者はこれをきっかけに
トヨタ式経営を研究し、大野耐一氏から豊田綱領や豊田佐吉の思想、遡って二宮尊徳の思想、江戸時代の「三方良し」の近江商法、その元の思想を創った三河武士出身僧侶鈴木正三の思想にたどり着きました。一方で戦後のGMへのコンサルテイングから「会社とは何か」を書いて製造業マネジメントの本質を抽出したピーター・F・ドラッカーに注目して、ものづくりの中にマネジメントの本質があると確信しました。
ドラッカーが企業や、政治や、一人ひとりの人生まで俯瞰的なマネジメントを発明したように、日本のものづくりは縄文文化を反映した古事記の物語を源流に、社会を生命体として一体化した「こめづくり、ものづくり、ひとづくり、くにづくり」を統合するマネジメント思想です。
生命現象が流れであるように、SCMも組織機能を横断したネットワーク連携でモノやカネの流れに焦点を当てます。生命体が「心と頭と身体」でモデル化できるように、SCMとしての経営モデルも「精神・戦略・実戦」で体系化します。ものづくりが材料などの資源を顧客価値に変換する仕事の連鎖としてモデル化できるように、ことづくりも情報資源を顧客価値であるサービスに変換するネットワークタスクの連鎖でモデル化します。生命、あるいは生態系...