前回のリスクマネジメント「釜石の奇跡」『気付きと行動』が命を救った‐1に続けて、『気付き』そして『行動』を促すに至るまでの粘り強い活動について見てみましょう。
4.気付き・試行錯誤・気付き・『行動』の津波防災教育
「釜石の奇跡」第3章、片田教授が本格的に防災教育に乗り出したのは(大津波の怖さを知っている三陸で)大地震の際に高台に避難した人が殆どいないというショッキング事実を知ってから。どこか1ヶ所でも「犠牲者ゼロ」を目標に津波防災のひな型を作ろうと声をかけ・・・釜石市だけが手をあげ・・・2004年防災講演会から始め・・・肝心の若い世代が来てくれない!?・・・思いついたのは「子ども」・・・学校の反応はシオ・・・思案に暮れた片田先生は加藤教育長に・・・教育長の英断「2006.1.23午後、市内の全小中学校を休校にし、すべての教職員に対して職務として片田教授の津波防災講演会に出席させ・・・先生たちの意識が変り・・・2年かけて「津波防災教育の手引き」作成・・・釜石小が津波防災教育に取り組んだのは2008年加藤校長が着任して・・・ 『一番役に立ったの』は「下校途中で『地震発生』のサイレンを鳴らし、『大津波警報』を流した、まさに本番さながらの『下校時津波避難訓練』だった。」と。p.143-6
5.反面教師
石巻市の「大川小の悲劇」は、学校の管理下にあった児童108名の内74名・先生11名の内10名が犠牲になった痛ましい災害で、2度と起さないための検証が行なわれています。実は釜石市でも、中心街地区の浸水区域外と鵜住居地区は前記の防災センターなどで多くの犠牲者が出ています。また、鵜住居湾の北部に位置する大槌町では対策会議中の町長と40名の職員が犠牲になり、多くの市民が犠牲になりました。以下を検索してご覧ください。
釜石市防災センターで犠牲になった妻「あの日、『休んで』と言っていれば…」 | 文春オンライン (bunshun.jp)
“35分間”に何が 大槌町の真実 | 特集記事 | NHK政治マガジン
いずれのケースも、津波防災が「津波の本質と怖さへの真の『気付き』」になっておらず、「イザという時の『行動』に結び付く実戦的な訓練」になっていなかったものと考えられます。
6.企業の危機管理に活かす
震災後1年が経った頃から片田教授のもとには企業からの講演依頼が殺到したそうです。「喉もと過ぎれば熱さ忘れる」との諺がありますが12年経った今はどうでしょうか。ポストコロナのリスクマネジメントを考える上で、『気付きと行動』が命を救った「釜石の奇跡」を改めて学び直しみる意義があるのではないでしょうか。
‟・・・これは、まさに『マネジメントの本質』だ”と評価している野中教授は、片田教授の実践を評価して「人間の『正常性バイアス』について、『自分は大丈夫』『まだ大丈夫』などと考えてリスクを先送りし、まっとうに向き合おうとしない・・・。まず自分の命に責任を持ち、自ら率先して逃げる。これが『津波てんでんこ』の本当の意味で・・・昔の人に知恵・・・。釜石の小中学校では、避難の仕方を実践しながら考えさせ・・・知識を『身体化』させ、柔軟で応用のきく『実践知』を身に付けて・・・。子供たちは、自分が体験したこと、学んだことを親に話し・・・。・・・子供たちを通じて結果的に親も学んで・・・。いかにして防災を地域文化として定着させるか。・・・見事です。」と。「釜石の奇跡」P.245-7
おわりに;フリートーキング(サロンDX)のご案内
サロンDXは、2022-05-20公開事例;ポストコロナDX『賢い』社長の戦略<未来>からのアプローチ(その4- 続き)で紹介したもので、今回の事例を読んで頂いた皆さんに(事例は要約ですので)元になった資料 ① DVD「釜石の‟奇跡”」NHKスペシャル、② 書籍「釜石の奇跡」NHKスペシャル、③ 書籍「命を守る教育」片田敏孝著の3つを読んでいただいて*(出来ればメールで読後の感想をいただいて)、それを元に60分程度のサロン形式の(無料)Zoomフリートーキングで気軽な交流をしようというものです。
*これら3つの資料が手に入らない方は以下のネット情報がお役に立つと思います。以下を検索してご覧ください。
東日本大震災:「釜石の奇跡」と「大川小の悲劇」 葛藤と苦悩、分かち合う 遺族ら現地訪問し交流 /...
[東日本大震災10年 秘話]<5>避難誘導 釜石の奇跡、共助のリレー : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)
釜石の奇跡は奇跡じゃない! 防災教育が実を結んだことだった。 (bousai.press)
(11) 釜石の奇跡〜子どもたちを救った「津波てんでんこ」【PRESS民主ch】 - YouTube
サロンDXは、3.11の12周年の後、喉元すぎて忘れる前に、3月半ば以降に出来るだけ多くの方が参加できるように3回程度(出入り自由の形で)開催したいと考えております。お問い合せ・読後の感想など、鈴木宛 h.suzuki@dr-practice.com まで、気軽にメールを下さい、よろしくお願い致します。これまでにミニセミナー等のご案内をさせていただいている方、今回メールを下さった方には事前にZoom招待メールを差し上げます。