1. 無視できない物流コスト
会社全体の物流がどのレベルなのかをきっちりと把握しておくことが望ましいと思います。しかし多くの会社でその実態を数字で把握できていないと言わざるを得ません。その大きな理由の一つとして会社が物流に興味を示していなかったことが挙げられると思います。会社が物流に関心が無いと担当者もあえて物流に関するデータを取ろうとはしません。
しかし物流コストは会社の営業利益に匹敵する規模だということに気づいていただきたいのです。日本ロジスティクスシステム協会の調査によりますと、会社の売上高に対する物流コストの比率は5%程度になっています。
御社の現在の物流の実態はどうなっていますか?このような漠然とした質問に対してどのように回答できますでしょうか。御社の売上高営業利益率は5%を大きく上回っていますでしょうか。これが倍以上である10%規模の利益であればまだしも、ほぼ同水準あるいは営業利益率の方が低いとなった場合、物流は全く無視できない存在となるのです。
もちろん物流はコストだけという考え方は正しくありません。物流は顧客に対するサービスでありバリューでもあります。一定の物流コストをかけてでも会社のバリューを高め、売り上げを伸ばしていくことも十分にありえます。
そうは言いつつも物流の実態がわかっていないということは望ましい姿ではありません。そこで物流の現状を把握する必要性が出てくるのです。一方で物流とは何を指すのかという定義も議論を呼びます。この定義は必要であるとともにやや難しい領域でもあります。
そこでまず物流として現状を把握すべき機能について考えてみたいと思います。物流では一般的に5つの機能があると言われています。それは、輸送・保管・荷役・包装・流通加工の5つです。
さらに情報という機能を加えて5機能プラスワンと呼ばれます。これらの機能が皆さんの会社の中であるいはアウトソース先で発生していたとしたらその実態について把握するとよいでしょう。ではどのような把握方法があるでしょうか。保管を例にとって考えていきましょう。
2. 保管の現状把握
物流の重要機能である保管について、保管機能を4M(人、もの、設備、方法)の4つの視点から現状把握をしてみましょう。この時にまず保管に関わるコストを見ていくとよいでしょう。人はまさにその保管機能に関わる人件費です。その倉庫あるいは保管エリアで入出庫作業や在庫管理などを行っている作業者の方の人件費を把握します。
社員であれば法定福利費や福利厚生費などを含めたすべての人件費で把握するということがポイントです。パートやアルバイトであれば実際の支払賃金に採用にかかったコストを加えればよろしいのではないでしょうか。
ものであれば入出庫に使うフォークリフトの燃料、棚番表示などにつかう器材、安全保護具や消火器などの安全対策用品など倉庫運営に関わるもののコストを把握します。設備は倉庫建屋やラック、自動倉庫やフォークリフトなどの機器が対象になります。
情報はその保管場で必要な情報、例えば入出庫指示情報や在庫管理情報など、保管を管理するための情報投資のコストが対象になります。さらにそこで発生している地代、自社倉庫であれば償却費や近隣の地代などで明らかに発生しているコストを明確にしていきます。
また水道光熱費や固定資産税、保険料、補修費などいろいろなコストが発生していると思われます。これらについて一度調査を行い、その保管にかかっているトータルコストを明らかにしましょう。
意外とここまで気を配ってみることは少ないかもしれません。しかしこれらが積もり積もると大きなコストとなることも考えられます。まずは現状を正しく把握してみましょう。これができましたら自社の他の保管場とデータ比較してみましょう。
A倉庫とB倉庫を比較してみたところ、コストに大きな差があったとします。その要因を分析し、もし余分なコストが発生していたとしたらそれを改善していく活動につなげます。これができるのも物流の現状把握ができたからこそです。
この保管の例にならって他の機能についても現状把握をしていきましょう。もちろん会社によっては5機能プラスワンよりも別の方法の方がわかりやすい場合もあります。その場合はそのわかりやすい分類でも一向に構いません。要は会社として発生している物流のすべてについて現状を把握することが大切なのです。
3. 荷役の現状把握
フォークリフトで物を出し入れしたり、ピッキング作業を行ったりする荷役作業は、保管や輸送を行う際にそれに付随して発生する作業です。人の行う作業が中心になりますので作業が効率よく行われているかどうかがポイントになります。
物流作業では個々の作業が効率よく行われているかどうかを確認するとともに、作業と作業の組み合わせが効率よくできているかについても確認する必要があります。前者の場合は稼働分析を行って現状把握を行います。手法はワークサンプリングを行えばよいでしょう。ワークサンプリングとは一定の間隔で調査対象が何を行っているかを確認していく方法です。
たとえば15秒おきにピッキング作業者を観察し、その時に何をやっているのかをチェックします。物を取っているのか、歩行しているのか、オーダーシートを確認しているのかなど、その時点で作業者が実施していた内容を記録用紙に書いていきます。
作業と作業の組み合わせが効率よくできているかについてですが、これは作業編成の問題です。一人の作業者が一日複数の作業を行う時に作業と作業の間隔が空きすぎないようになっているかがポイントになります。この間隔が空くとその時間は「手待ち時間」になります。つまり付加価値を生み出すことのできない時間となるわけです。
本来であれば手待ちが発生したらその時は「何もやらずにその場に立っている」ことが望ましいのですが、実際はそうではないケースがあります。たとえば掃除をしたり、...