輸送・保管・荷役・包装・流通加工 物流現状把握の重要性(その2)

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SCM

 

前回の物流現状把握の重要性(その1)に続けて解説します。

 

4. 物流設備投資時の注意事項

運搬の自動化を行うことで運搬工数を削減することは、物流作業を効率化するための投資の発生です。この時にこの会社では運搬工数が無くなったことでコストが下がっています。一方で自動化のための無人運搬車を導入していますのでその分の投資が発生しています。したがいましてこのコストメリットと投資による発生費用をオフセットして(差し引きして)トータルメリットを考える必要があります。

 

このケースでは「お金をかけて効率化」を実施したことになります。もちろんお金をかけずに効率化することがベストですが場合によってはお金をかけてでも実施すべき改善はあると思われます。この会社の物流の現状把握時には投資金額も考慮する必要があるということです。投資自体が何年で回収できるか気になるところです。この点を頭に入れて投資は慎重に実施する必要があります。

 

投資を行った後に発生するコストについても投資する段階できっちりと計算をしておくことが重要です。自動化設備のイニシャル投資だけに目を奪われてランニングコストをおろそかにしている会社があります。自動化設備ですから常日頃の点検整備にお金がかかります。補修費用もかかります。システムの入れ替えや部品交換でもお金がかかります。

 

場合によっては「プリンタービジネス」的なことになる可能性もありますから注意が必要です。それは何かというと、導入コストは安価でも導入後に発生するコストが膨大だということです。皆さんもご経験があるものと思いますが、プリンターは初期購入費用が安くても後から購入するインク代が大変高いのです。

 

物流設備投資を行う場合にはその設備を使っているトータル期間で全体でいくらかかるかについてきちんと計算しておくことが望ましいと考えられます。物流設備投資を行っている場合、それが実際にコストダウンに寄与しているかどうかはしっかりと見定めることが必要です。皆さんは物流を効率化するために投資したのだから儲かって当たり前だと思っていませんでしょうか。実はこの思い込みが落とし穴なのです。

 

設備投資時の検討が甘かったり、会社を取り巻く環境が変わったりして本当は儲かっていない投資も存在している可能性があるのです。

SCM

 

5. 非効率な物流自動化

ムダな投資が実際に発生している事例を紹介します。ある工場では工程間運搬を効率化するために無人運搬車を導入していました。運搬距離は15m程度です。この無人運搬車の上にパレットに載せられた部品を積む必要があるのですがその作業は人がフォークリフトで行っていました。わずか15mですが無人運搬車で運ぶために人がわざわざフォークリフトを使って荷物を載せ降ろししていたのです。

 

明らかにフォークリフトで運んだ方が効率も良ければコストも小さいと思われます。しかしこの工場では無人運搬車を投資してしまった手前それを使わざるを得ない状況にあったものと思われます。このようなムダな投資が実際に発生しているのです。

 

もう一つの事例です。ある倉庫で自動仕分け機を導入していました。作業者が投入した段ボール箱についているバーコードを読み取って指定レーンに自動仕分けを行う機械です。これも見ていてどうかと思ってしまいました。人が投入するのであればその際に仕分けてしまっても問題は無いからです。

 

しかしこの仕分け機を動かして仕分けを行い、レーンで引っ掛かりがあれば人が修正し、仕分け終わったものを回収して運搬しているのです。倉庫によってはレーンの出口に作業者が張り付いている場合もあるのです。これも機械に人が使われてしまっている例だと思います。

 

物流現状把握時にはこういった事例が自社内で発生していないかどうかを確認しましょう。場合によっては自動化設備を停止するケースも出てくるかもしれません。非効率な物流自動化だからです。

 

物流自動化では物流工程の一部のような部分的な投資はこのように非効率を招く可能性があります。ということで全体の効率化に寄与するための設計を考えるとともに、できるだけ周辺で人手による作業が発生しないように注意する必要があることを認識しておきましょう。

 

次に視点を変えて「容器」について見ていきましょう。容器を見ることでその会社の物流の実力が見えてくることがあります。容器は一般的に「通箱」として製品を入れて発送した後に回収し、また製品を入れて発送を繰り返します。この容器ですが何度も使っている内に劣化や汚れが発生してきます。これはその箱の中に入れる製品品質にも影響を与えてしまうのです。

 

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6. パフォーマンスを示すKPI

社内で同じ業務をやっている、やっていない、やっていてもやり方にバラつきがあるといった事例は多々あるのではないでしょうか。今行っている物流作業が本当に必要な作業なのかどうかも現状把握を実施していくと見えてきます。「必要だからやっているんじゃないか」という声が聞こえてきそうですね。

 

でもここは盲点になりがちです。ためしに会社の別の拠点や職場を見て下さい。その必要と思われる作業を実施していないかもしれません。仮にやっていたとしても別のやり方で実施しているかもしれません。その別のやり方の方が効率がよいかもしれません。

 

そこで複数拠点、複数職場がある会社の場合には類似業務の洗い出しと比較をやってみるとよいのではないでしょうか。業務の洗い出しとともに「作業の方法」「その作業に要している時間」できれば「原単位」つまり1部品あたりの作業時間や1㎥あたりのコストなどを調査するとよいでしょう。

 

もしかしたら社内で業務にばらつきがあるということは標準化できていないということかもしれません。これは問題です。標準化はすべての物流作業に必要ですが意外と行われておらず現場任せ...

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前回の物流現状把握の重要性(その1)に続けて解説します。

 

4. 物流設備投資時の注意事項

運搬の自動化を行うことで運搬工数を削減することは、物流作業を効率化するための投資の発生です。この時にこの会社では運搬工数が無くなったことでコストが下がっています。一方で自動化のための無人運搬車を導入していますのでその分の投資が発生しています。したがいましてこのコストメリットと投資による発生費用をオフセットして(差し引きして)トータルメリットを考える必要があります。

 

このケースでは「お金をかけて効率化」を実施したことになります。もちろんお金をかけずに効率化することがベストですが場合によってはお金をかけてでも実施すべき改善はあると思われます。この会社の物流の現状把握時には投資金額も考慮する必要があるということです。投資自体が何年で回収できるか気になるところです。この点を頭に入れて投資は慎重に実施する必要があります。

 

投資を行った後に発生するコストについても投資する段階できっちりと計算をしておくことが重要です。自動化設備のイニシャル投資だけに目を奪われてランニングコストをおろそかにしている会社があります。自動化設備ですから常日頃の点検整備にお金がかかります。補修費用もかかります。システムの入れ替えや部品交換でもお金がかかります。

 

場合によっては「プリンタービジネス」的なことになる可能性もありますから注意が必要です。それは何かというと、導入コストは安価でも導入後に発生するコストが膨大だということです。皆さんもご経験があるものと思いますが、プリンターは初期購入費用が安くても後から購入するインク代が大変高いのです。

 

物流設備投資を行う場合にはその設備を使っているトータル期間で全体でいくらかかるかについてきちんと計算しておくことが望ましいと考えられます。物流設備投資を行っている場合、それが実際にコストダウンに寄与しているかどうかはしっかりと見定めることが必要です。皆さんは物流を効率化するために投資したのだから儲かって当たり前だと思っていませんでしょうか。実はこの思い込みが落とし穴なのです。

 

設備投資時の検討が甘かったり、会社を取り巻く環境が変わったりして本当は儲かっていない投資も存在している可能性があるのです。

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5. 非効率な物流自動化

ムダな投資が実際に発生している事例を紹介します。ある工場では工程間運搬を効率化するために無人運搬車を導入していました。運搬距離は15m程度です。この無人運搬車の上にパレットに載せられた部品を積む必要があるのですがその作業は人がフォークリフトで行っていました。わずか15mですが無人運搬車で運ぶために人がわざわざフォークリフトを使って荷物を載せ降ろししていたのです。

 

明らかにフォークリフトで運んだ方が効率も良ければコストも小さいと思われます。しかしこの工場では無人運搬車を投資してしまった手前それを使わざるを得ない状況にあったものと思われます。このようなムダな投資が実際に発生しているのです。

 

もう一つの事例です。ある倉庫で自動仕分け機を導入していました。作業者が投入した段ボール箱についているバーコードを読み取って指定レーンに自動仕分けを行う機械です。これも見ていてどうかと思ってしまいました。人が投入するのであればその際に仕分けてしまっても問題は無いからです。

 

しかしこの仕分け機を動かして仕分けを行い、レーンで引っ掛かりがあれば人が修正し、仕分け終わったものを回収して運搬しているのです。倉庫によってはレーンの出口に作業者が張り付いている場合もあるのです。これも機械に人が使われてしまっている例だと思います。

 

物流現状把握時にはこういった事例が自社内で発生していないかどうかを確認しましょう。場合によっては自動化設備を停止するケースも出てくるかもしれません。非効率な物流自動化だからです。

 

物流自動化では物流工程の一部のような部分的な投資はこのように非効率を招く可能性があります。ということで全体の効率化に寄与するための設計を考えるとともに、できるだけ周辺で人手による作業が発生しないように注意する必要があることを認識しておきましょう。

 

次に視点を変えて「容器」について見ていきましょう。容器を見ることでその会社の物流の実力が見えてくることがあります。容器は一般的に「通箱」として製品を入れて発送した後に回収し、また製品を入れて発送を繰り返します。この容器ですが何度も使っている内に劣化や汚れが発生してきます。これはその箱の中に入れる製品品質にも影響を与えてしまうのです。

 

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6. パフォーマンスを示すKPI

社内で同じ業務をやっている、やっていない、やっていてもやり方にバラつきがあるといった事例は多々あるのではないでしょうか。今行っている物流作業が本当に必要な作業なのかどうかも現状把握を実施していくと見えてきます。「必要だからやっているんじゃないか」という声が聞こえてきそうですね。

 

でもここは盲点になりがちです。ためしに会社の別の拠点や職場を見て下さい。その必要と思われる作業を実施していないかもしれません。仮にやっていたとしても別のやり方で実施しているかもしれません。その別のやり方の方が効率がよいかもしれません。

 

そこで複数拠点、複数職場がある会社の場合には類似業務の洗い出しと比較をやってみるとよいのではないでしょうか。業務の洗い出しとともに「作業の方法」「その作業に要している時間」できれば「原単位」つまり1部品あたりの作業時間や1㎥あたりのコストなどを調査するとよいでしょう。

 

もしかしたら社内で業務にばらつきがあるということは標準化できていないということかもしれません。これは問題です。標準化はすべての物流作業に必要ですが意外と行われておらず現場任せになっている可能性があります。標準化できていない場合には効率がよくない可能性があります。

 

また標準が無ければそれに対する効率、すなわち仕事のパフォーマンスが測定できないことになります。同じ仕事をしていても職場で効率に差があるはずなのにそれが見えないということは問題です。

 

仕事のパフォーマンス=標準からの乖離度とも考えられます。仕事のパフォーマンスに差があるにもかかわらず同じ給料をもらうとするとこれは平等とは言えません。

 

一方でこのような状態を放置しているということは現場を管理できていないということになります。ということで作業の標準化は現状把握と同時に並行して進めていくことが望ましいでしょう。一気に標準化は難しいとしたら第一歩としてその作業のボリュームを示すKPIを設定しましょう。これはこれで難しいという会社もあるでしょう。

 

では簡単にある程度のパフォーマンスが見えるKPIの把握方法について考えてみましょう。次回に続きます。

 

 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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