ハードからソフト・ソリューションへの潮流は本質か?(その2)

更新日

投稿日

ハードからソフト・ソリューションへの潮流は本質か?(その2) 

 

◆ ハードからソフト・ソリューションへの潮流は本質か?

前回の(その1)では日本の製造業は新興国だけではなく欧米企業にも負けている現実を共有化しました.そして国内の製造業がハードからソフト・ソリューションへの事業シフトを経営戦略にしている現状もお伝えしました.

 

私は,ソフト・ソリューションへのシフトという戦略では中長期的にはグローバル競争で生き残れないと思っています.なぜならばハードもソフトも手段であって,それ自体が価値ではないからです.富士通でのハードディスク事業では,オフィス向けのPCという成長市場がすでに存在し,そこにハードディスクという単体製品を提供するとことを目的として技術開発や製品設計をしていたのです.記録密度や回転数などの技術特性の達成だけを目指していました.

 

技術ロードマップに従って与えられた目標スペックだけが全てであり,我々のハードディスクがお客様にどのように使われるかなど誰も意識していませんでした.具体的な数値目標がないと仕事が始まらないと思っている技術者がほとんどですが,この与えられた数値目標を達成するという仕事の進め方が日本が国際競争力を低下させた大きな要因の一つだと思うのです.

 

我々が持っている技術の特長を活かす市場を想像し,想像した市場のお客様の潜在ニーズを実現するために技術手段を創造あるいは設計するという活動が今後の日本の技術者に求められます.

 

例えばハードディスクを携帯音楽プレーヤーに活用する,家庭の録画装置に活用するなどは,既に実現されていますが,当時の富士通にはこのような自由な発想が生まれる雰囲気がありませんでした.企画部門だけではなく技術者が自らの生き残りのためにこのような発想をしても良いと思うのです.そしてPCと番組録画では使われ方がまったく異なるので要求される技術特性や目標レベルも異なるはずです.もし現在の技術だけでは新しい市場向けの製品設計ができないのであれば,それが技術開発のテーマになるのです.既存市場のロードマップだけではなく,新たな市場を創るための技術開発です.

 

『ハードからソフト・ソリューションへ』は本質ではなく,本質は『お客様に新しい価値を提供する』ことであり,それが今後の競争軸になると思うのです.狩野モデルの一元的品質で圧倒する,あるいは魅力的品質を実現することです.ウオークマンやカップ麺など,現在の日本企業よりもかつての日本企業の方が得意だったような気もします.そこには...

ハードからソフト・ソリューションへの潮流は本質か?(その2) 

 

◆ ハードからソフト・ソリューションへの潮流は本質か?

前回の(その1)では日本の製造業は新興国だけではなく欧米企業にも負けている現実を共有化しました.そして国内の製造業がハードからソフト・ソリューションへの事業シフトを経営戦略にしている現状もお伝えしました.

 

私は,ソフト・ソリューションへのシフトという戦略では中長期的にはグローバル競争で生き残れないと思っています.なぜならばハードもソフトも手段であって,それ自体が価値ではないからです.富士通でのハードディスク事業では,オフィス向けのPCという成長市場がすでに存在し,そこにハードディスクという単体製品を提供するとことを目的として技術開発や製品設計をしていたのです.記録密度や回転数などの技術特性の達成だけを目指していました.

 

技術ロードマップに従って与えられた目標スペックだけが全てであり,我々のハードディスクがお客様にどのように使われるかなど誰も意識していませんでした.具体的な数値目標がないと仕事が始まらないと思っている技術者がほとんどですが,この与えられた数値目標を達成するという仕事の進め方が日本が国際競争力を低下させた大きな要因の一つだと思うのです.

 

我々が持っている技術の特長を活かす市場を想像し,想像した市場のお客様の潜在ニーズを実現するために技術手段を創造あるいは設計するという活動が今後の日本の技術者に求められます.

 

例えばハードディスクを携帯音楽プレーヤーに活用する,家庭の録画装置に活用するなどは,既に実現されていますが,当時の富士通にはこのような自由な発想が生まれる雰囲気がありませんでした.企画部門だけではなく技術者が自らの生き残りのためにこのような発想をしても良いと思うのです.そしてPCと番組録画では使われ方がまったく異なるので要求される技術特性や目標レベルも異なるはずです.もし現在の技術だけでは新しい市場向けの製品設計ができないのであれば,それが技術開発のテーマになるのです.既存市場のロードマップだけではなく,新たな市場を創るための技術開発です.

 

『ハードからソフト・ソリューションへ』は本質ではなく,本質は『お客様に新しい価値を提供する』ことであり,それが今後の競争軸になると思うのです.狩野モデルの一元的品質で圧倒する,あるいは魅力的品質を実現することです.ウオークマンやカップ麺など,現在の日本企業よりもかつての日本企業の方が得意だったような気もします.そこにはマネジメントの問題もありそうです.

 

【出典】QECompass HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

◆[エキスパート会員インタビュー記事] 品質工学の魅力とその創造性への影響(細川 哲夫 氏

 

◆関連解説記事:品質工学による技術開発 【連載記事紹介】

◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!
 【ものづくり セミナーサーチ】 セミナー紹介:国内最大級のセミナー掲載数 〈ものづくりセミナーサーチ〉 はこちら!

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

細川 哲夫

お客様の期待を超える感動品質を備えた製品を継続して提供するために、創造性と効率性を両立した新しい品質工学を一緒に活用しましょう。

お客様の期待を超える感動品質を備えた製品を継続して提供するために、創造性と効率性を両立した新しい品質工学を一緒に活用しましょう。


「事業戦略」の他のキーワード解説記事

もっと見る
技術企業の高収益化: 現状追認型経営になっていないか

◆ 成果を刈りつくした社長になるか、畑を残す社長になるか  今回の解説は上司と部下の仕事の視野についてです。A社の開発会議で「長くかかるよ」と呟いた...

◆ 成果を刈りつくした社長になるか、畑を残す社長になるか  今回の解説は上司と部下の仕事の視野についてです。A社の開発会議で「長くかかるよ」と呟いた...


「言語データ解析七つ道具」とは 【快年童子の豆鉄砲】(その10)

  【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その9)なぜ、「言語データ解析」なのか (5)へのリンク】 1.はじめに 前回予告した「言...

  【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その9)なぜ、「言語データ解析」なのか (5)へのリンク】 1.はじめに 前回予告した「言...


デザインによる知的資産経営:企業理念の具体化(その3)

 具体性のある企業理念の策定(見直し)と、企業理念を具体的な規範に落とし込む手法について解説します。今回は、その3です。   3.企業理念の...

 具体性のある企業理念の策定(見直し)と、企業理念を具体的な規範に落とし込む手法について解説します。今回は、その3です。   3.企業理念の...


「事業戦略」の活用事例

もっと見る
儲ける経営より儲かる経営とは、価値を提供した結果としての儲かる経営

     ▼さらに深く学ぶなら!「事業戦略」に関するセミナーはこちら! 「儲けるよりも儲かる経営」これはリコー創業者の...

     ▼さらに深く学ぶなら!「事業戦略」に関するセミナーはこちら! 「儲けるよりも儲かる経営」これはリコー創業者の...


人的資源マネジメント:ソリューション営業の先にあるもとは

 エンタープライズ・セリング(Enterprise Selling)・ビジネスを立ち上げるお手伝いをしています。特定の相手にプロダクトやサービスを販売する...

 エンタープライズ・セリング(Enterprise Selling)・ビジネスを立ち上げるお手伝いをしています。特定の相手にプロダクトやサービスを販売する...


ポストコロナDX『賢い』社長の戦略<未来>からのアプローチ(その2)

  はじめに 2月3日掲載の前稿で『賢い』社長Fさんの戦略として<タカの目>経営戦略・<アリの目>基盤固めのその後と<未来>からのアプロ...

  はじめに 2月3日掲載の前稿で『賢い』社長Fさんの戦略として<タカの目>経営戦略・<アリの目>基盤固めのその後と<未来>からのアプロ...