ものづくり企業にとって、クリーン化は品質を確保するうえでの基本ですが、まだ十分に浸透していないのが実情です。例えば、「私の専門はクリーン化です」と言うと、「クリーン化とはお掃除のことですね」という返事が返ってくることが多々あります。今回からクリーン化の具体的な項目を順次個別に解説いたします。第1回は、クリーン化の総論です。
1.クリーン化の技術と活動
富士山の麓に行けば、富士山クリーン作戦と言う幟を見かけることがあります。その活動では、瓶や缶、ペットボトルだけでなく粗大ゴミも沢山出て来ます。一般の方は、そのような報道やPRからクリーン化=掃除という言葉を連想するのだと思います。
しかし、ここで言う『クリーン化(技術・活動=以下略)』は単に掃除、或いは綺麗にすることだけを指すのではありません。ものづくりの現場では、ゴミ起因で製品が不良になったり、品質の低下を招きます。製品品質が不安定では、思ったような利益が得られないとか、お客様の信頼を損ねることになります。その結果企業の存続が危うくなります。そのゴミを如何に減らして、良い製品を作るかということがクリーン化です。
このクリーン化は、特に小さなゴミを嫌う製品、例えば半導体や水晶デバイス、液晶表示体などを製造している企業、その他精密機器製造など、主にクリーンルームを保有している企業ではある程度認知されています。
しかし、国内全体では限られた人が関係しているだけですので、一般には認識が薄いのが現状です。また、そういった企業でも、現場や技術、品質など、ものづくりに関わる部門では一般的であっても、管理部門などでは認知度が低かったり、理解がされていないところが多いと思います。この他、これらの企業の外注会社や下請け会社では認知度が低いところが多いようです。クリーンルームであっても、管理方法がわからないとか、その必要性すら理解していないなどです。
ゴミを如何に減らして、良い製品を作るかということがクリーン化だという認識が、なかなか拡がらない、浸透しないのには理由があります。半導体は米国から日本に入って来て、日本の大手電気(機)メーカーがこぞって作り始めました。製品によってはどのメーカーも同じものを製造していることがありました。ところが、全く同じ製品を作りながら、高い歩留まりを得ている企業となかなか歩留まりが向上しない企業とがありました。
このことは低歩留まりの企業であっても作る技術はあるということですが、利益面でみると歩留まりが高いほど利益が出る。逆に低歩留まりの企業では利益が出ません。この沢山利益を出している企業は裏で何をしているのかわかりませんが、そのわからないことの一つが恐らくクリーン化であろうと言われてきました。
当時は低歩留まりの主な原因はゴミであり、そのゴミを減らすことが歩留まり、品質向上に繋がると考えられて来ました。ゴミが減ることで製品品質が向上し、利益創出に繋がる。故に経営に直結するのです。クリーン化技術は企業の競争力ですから、取引相手や他社には教えない、手の内を見せないということが当たり前になりました。
2.クリーン化技術は非公開
クリーン化のノウハウは、他社に教えて貰うとか、指導して貰うことが期待出来ません。自分たちでクリーン化技術を構築していくことが必要になります。このようにクリーン化は門外不出の技術と言われて来たので、一般に拡がることはなく、閉鎖的な技術であり認知度は低いのです。これが、クリーン化が広く浸透しない理由の一つです。だから仕方がないというのではなく、自分たちでオリジナルなクリーン化技術を作り上げていただきたいと願います。そのために必要であれば、お手伝いさせていただきたいと思っています。
企業間取引では、クリーン化技術を持っている企業でも、取引相手にはクリーン化技術は指導しないのが一般的です。例え、取引先に、歩留まり、品質が向上するからと言って、クリーンルーム化を要求しても、その管理方法やクリーン化技術は、安易には公開してくれません。
公開すると、長い年月をかけて...