クリーンルームのレイアウトを考える

 クリーンルーム内には、設備、作業台など色々なものを設置するので、予めレイアウト設計をします。高い清浄度を必要としないクリーンルームは、物の流し方、つまりライン設計が主体に検討されていることが多いと思います。室内を如何に有効に使うか。物を効率的に流動するにはどんなレイアウトにすればよいか。また、単位面積当たりの生産量や売り上げ迄見積る場合もあるかもしれません。或いはそのラインの前後工程との接続などが検討され、配置が決まると思います。
 

1. 乱流方式のクリーンルームについて

 気流についてはこの検討項目に含まれていないのが実情ではないでしょうか。気流は目に見えないので見落としやすいのです。しかし設備等が設置され生産活動が始まってから、その見えないものに苦しめられてしまうことがあります。ゴミによる品質問題の原因が気流であることですら気づかないこともあります。
 
 清浄度が低いクリーンルームの構造は、主に乱流方式を採用しています。基本的には天井から清浄な空気が床に向かって噴き出す考え方ですが、清浄な空気は天井の所々からしか供給されません。また床も所々にしか吸い込みがないので、気流が乱れます。
 
 その気流が設備や作業台など色々なものにぶつかって、横や斜めなど様々な方向に流れます。従ってこういうクリーンルームは『乱流方式』と言われます。加えて清浄度を上げる補助として、或いは湿度コントロールのため、パッケージエアコンが設置されているクリーンルームも多いので、乱流が増幅したり横方向の気流が強くなる場合もあります。
 
 これらの気流の上流に管理職の席を設置してしまうと、どうしてもそこに人や書類が集まることになります。それらの起因で発生したゴミは下流に流れます。そこに製品加工ラインや、製品置き場があると製品に汚れが付着します。従って気流の流れも含めたレイアウト設計が重要です。
 
 クリーンルームの中では、人はゴミの最大の発生源で、汚染源と言われます。人の動作・行動や防塵衣(クリーンスーツ)の着用方法が悪いとゴミが発生、飛散します。それらをどう管理するかというのが、クリーンルームの4原則です。レイアウトが悪いと、4原則視点で様々な改善をしても効果が出にくいようです。最初から気流も考慮してレイアウトを構築する。つまりレイアウト設計の中に気流の上流から発塵を最小限に抑える考え方をすることです。
 
 乱流式のクリーンルームの清浄化メカニズムは希釈です。天井から少しずつ綺麗な空気を取り込み、室内の汚れを少しずつ薄める希釈の考え方です。そこに発塵するものを持ち込んだり、発塵させる行為をしたり、気流の流れが悪かったりすると、希釈が間に合わず、清浄度が改善されません。クリーンルームという形をしたただの箱になってしまいます。
 

2. ダウンフローのクリーンルームについて

 清浄度の高いクリーンルームはどうかというと、こちらも気流の管理は重要です。清浄度の高いクリーンルームは一方向流とかダウンフローなどと言われます。天井全面から清浄な空気が供給され、床全面の穴から排出されます。上から下に真っ直ぐに気流が落ちるので、このように呼ばれます。しかしこの場合も、クリーンルームに何も設置してない時のことで、様々な設備などが設置されるとやはり気流が乱れます。
 
 このほか、クリーンルームの中での最大の発生源、汚染源は人であるという考え方から、可能な限り人の入室を制限し、代わりに製品の搬送は天井搬送であったり、ロボットが運搬したりします。天井搬送では、レールが取り付けられているので、それに気流がぶつかったり、ロボット搬送では、その後ろで気流が巻く等の現象が起きます。
 
 客先監査で、厳しいところでは、この搬送中に製品がどのくらいのパーティクルの影響を受けるのかという...
ことをデータで示すよう要求するところもあります。気流も重要な監査項目なのです。
 

3. 天井搬送

 ある大病院での体験です。そこでは、1階で受付を済ませ、該当の科へ行くと、カルテはもう届いていました。ここは受付からカルテが天井搬送され、どの階のどの科にもきちんと届くような仕組みになっていました。いわゆる住所が入力されるのでそこに届くということです。行くカルテ、戻るカルテは、レールが電車の待避線のようになっている箇所ですれ違い、相互にぶつかることはありませんでした。なるほどと感心しながら長時間眺めましたが、ゴミの落下はないのか心配になりました。ここでは品質視点ではなく、安全視点で気になりました。擦れにより発塵したものが上を見た人の目に入らないのか、飛散したものを吸ってしまうことはないのかということです。もちろん清浄度の高いクリーンルーム内の天井搬送は、この発塵に対しても考慮されています。
 

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