物流と管理技術 : 管理技術導入のステップ

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1. 標準化の重要性

scm
 物流業の人と話をしていると管理技術の導入がまだまだだと感じることがあります。この管理技術ですが特に物流現場を管理するための現場管理や標準化、5Sなど、物流作業を行う基礎ともいえる分野が弱いように感じます。現場作業を標準化することなく作業者任せにしていることは決してよい状態だとは言えません。標準書に基づいた作業指示を行い、その通りできているかどうかを監督者がチェックできるようにしておかなければ物流品質を保証することは不可能です。
 
 このこと端的に示しているのが冷凍・冷蔵品の宅配荷物の扱いです。ルールは決められていても、それを守らせるしくみが無かった事例が過去にありました。この事例は、日本の物流業界の管理技術の弱さが露呈していたと思われます。物流業界以外でも、この管理技術が確立されていない業界はあるものと思われます。マニュアル化しその通りに仕事をさせることが比較的容易な業種とそうでない業種があるからです。
 
 しかし、物流業はマニュアル化が容易な業種に属します。それなのに標準化が遅れているのは、比較的容易な作業が多かったために作業者に任せれば一応の仕事はでき、現場を管理するといった文化が無かったからではないかと推測します。物流品質の問題が多くの国民に知れ渡ってしまったからには、信用回復のためにも、しっかりとした管理技術を確立し、他者に誇れるような仕事をしていくことが必要だと言えるでしょう。
 
 では、何から手をつけていったらよいでしょうか。まずは物流現場で一つの仕事について複数名で作業をする場合、誰がやっても同じ仕事の仕方になるように考えていったらよいでしょう。そうすることで、原則として同じ結果が出ることが考えられます。つまり仕事を標準化し、その通りに仕事をするように変えていくことです。
 

2. 作業標準とガバナンス

 
 製造会社では作業標準が無ければその作業をしてはならないというルールをつくり、それを徹底しているでしょう。もし作業標準がないまま作業者に勝手に仕事をやらせて何か問題が起こった場合には責任をとれないからです。これは会社の内部統制、つまりガバナンスの問題になるのです。欧米ではガバナンスを非常に重視します。非常にまじめな民族である日本人は「常識」という漠とした理念の下、よもやこんなことはするまいといった暗黙の了解があるので、この面での弱さがありました。
 
 製品を放り投げるとか、傷つきやすい製品を床にじかに置くなどといったことは日本人ではまずやらないと思います。それは個々人の良識に任された結果ですが、仮にこういった行為をしたとしても、標準を定めて仕事を教えていないのであれば作業者を責められないのです。つまり日本は性善説に立脚して作業を行わせているということになりますが、欧米を中心とした海外はその反対の性悪説に立脚しています。だからこそ標準化やマニュアル化を進めないと仕事自体が成立しないのです。
 
 日本の中でも海外からの研修生を受け入れる形で外国人を作業に就かせていると思われます。こういったケースで徐々に標準化の必要性を感じている方もいらっしゃると思います。もう「そんなことは常識だ」という言い方はできなくなりつつあるのです。製造業ではそんなことまで標準作業書に記入するのか、と思われるようなことまで記載していますが、これが正しい姿であると思います。
 
 ピッキング作業であれば、この部位を上にして置く、フォーク運搬作業では荷物をバックレストに密着させる、製品のラック投入時には製品番号を声を出して読み上げながら投入するなど、一見当たり前と感じられそうなことについてもしっかりと標準書に記載するのです。『作業標準』を作成する際に、ここで手を抜くとか、当たり前と思い込んで大切なことを記述しなかったために物流品質不良を発生させてしまっては、元も子もありません。
 

3. SQDCMの水準向上に向けて

 
 物流現場にはぜひ管理ボードを設置しましょう。そのボードを見れば、現在の物流現場のS(安全)、Q(品質)、D(デリバリー)、C(コスト)、M(マネジメント)の状況が一目でわかるようにします。これが管理業務の見える化になります。それぞれの項目ごとに「目標に対する現状」が明示され、ギャップがあった場合の対策までがわかるようになればベストです。難しく考えるのではなく、今日の出荷が計画通りできたのか、作業者の労務管理は把握できているか、作業者一人当たりの生産性は向上しているか、などがわかるようになればよいのです。
 
 SQDCMの各項目のうち、このアルファベットが並ぶ順番で一歩一歩整備していきましょう。その中でも最優先されるものがS(安全)です。安全は結果系の数値、すなわち事故件数を把握するのは当然ですが、安全を確保するための活動についても管理していきましょう。たとえば安全ミーティングが計画通り実施されたか、ヒヤリハットメモは各作業者が予定通り提出しているかなどを見える化します。
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1. 標準化の重要性

scm
 物流業の人と話をしていると管理技術の導入がまだまだだと感じることがあります。この管理技術ですが特に物流現場を管理するための現場管理や標準化、5Sなど、物流作業を行う基礎ともいえる分野が弱いように感じます。現場作業を標準化することなく作業者任せにしていることは決してよい状態だとは言えません。標準書に基づいた作業指示を行い、その通りできているかどうかを監督者がチェックできるようにしておかなければ物流品質を保証することは不可能です。
 
 このこと端的に示しているのが冷凍・冷蔵品の宅配荷物の扱いです。ルールは決められていても、それを守らせるしくみが無かった事例が過去にありました。この事例は、日本の物流業界の管理技術の弱さが露呈していたと思われます。物流業界以外でも、この管理技術が確立されていない業界はあるものと思われます。マニュアル化しその通りに仕事をさせることが比較的容易な業種とそうでない業種があるからです。
 
 しかし、物流業はマニュアル化が容易な業種に属します。それなのに標準化が遅れているのは、比較的容易な作業が多かったために作業者に任せれば一応の仕事はでき、現場を管理するといった文化が無かったからではないかと推測します。物流品質の問題が多くの国民に知れ渡ってしまったからには、信用回復のためにも、しっかりとした管理技術を確立し、他者に誇れるような仕事をしていくことが必要だと言えるでしょう。
 
 では、何から手をつけていったらよいでしょうか。まずは物流現場で一つの仕事について複数名で作業をする場合、誰がやっても同じ仕事の仕方になるように考えていったらよいでしょう。そうすることで、原則として同じ結果が出ることが考えられます。つまり仕事を標準化し、その通りに仕事をするように変えていくことです。
 

2. 作業標準とガバナンス

 
 製造会社では作業標準が無ければその作業をしてはならないというルールをつくり、それを徹底しているでしょう。もし作業標準がないまま作業者に勝手に仕事をやらせて何か問題が起こった場合には責任をとれないからです。これは会社の内部統制、つまりガバナンスの問題になるのです。欧米ではガバナンスを非常に重視します。非常にまじめな民族である日本人は「常識」という漠とした理念の下、よもやこんなことはするまいといった暗黙の了解があるので、この面での弱さがありました。
 
 製品を放り投げるとか、傷つきやすい製品を床にじかに置くなどといったことは日本人ではまずやらないと思います。それは個々人の良識に任された結果ですが、仮にこういった行為をしたとしても、標準を定めて仕事を教えていないのであれば作業者を責められないのです。つまり日本は性善説に立脚して作業を行わせているということになりますが、欧米を中心とした海外はその反対の性悪説に立脚しています。だからこそ標準化やマニュアル化を進めないと仕事自体が成立しないのです。
 
 日本の中でも海外からの研修生を受け入れる形で外国人を作業に就かせていると思われます。こういったケースで徐々に標準化の必要性を感じている方もいらっしゃると思います。もう「そんなことは常識だ」という言い方はできなくなりつつあるのです。製造業ではそんなことまで標準作業書に記入するのか、と思われるようなことまで記載していますが、これが正しい姿であると思います。
 
 ピッキング作業であれば、この部位を上にして置く、フォーク運搬作業では荷物をバックレストに密着させる、製品のラック投入時には製品番号を声を出して読み上げながら投入するなど、一見当たり前と感じられそうなことについてもしっかりと標準書に記載するのです。『作業標準』を作成する際に、ここで手を抜くとか、当たり前と思い込んで大切なことを記述しなかったために物流品質不良を発生させてしまっては、元も子もありません。
 

3. SQDCMの水準向上に向けて

 
 物流現場にはぜひ管理ボードを設置しましょう。そのボードを見れば、現在の物流現場のS(安全)、Q(品質)、D(デリバリー)、C(コスト)、M(マネジメント)の状況が一目でわかるようにします。これが管理業務の見える化になります。それぞれの項目ごとに「目標に対する現状」が明示され、ギャップがあった場合の対策までがわかるようになればベストです。難しく考えるのではなく、今日の出荷が計画通りできたのか、作業者の労務管理は把握できているか、作業者一人当たりの生産性は向上しているか、などがわかるようになればよいのです。
 
 SQDCMの各項目のうち、このアルファベットが並ぶ順番で一歩一歩整備していきましょう。その中でも最優先されるものがS(安全)です。安全は結果系の数値、すなわち事故件数を把握するのは当然ですが、安全を確保するための活動についても管理していきましょう。たとえば安全ミーティングが計画通り実施されたか、ヒヤリハットメモは各作業者が予定通り提出しているかなどを見える化します。
 
 品質であれば顧客に流出してしまった不良件数、自社内で見つかった不良件数などを把握し、その数値の目標との対比を掲示します。デリバリーであれば納期遵守率や定時出発率などをKPIとして管理してみましょう。コストは構内作業の工数低減率や作業者一人当たりピッキング行数の向上率などを取ってみるとよいでしょう。そしてマネジメントは人材育成が計画通りできているか、残業やパートさんの労働時間などの労務管理が今の仕事量に見合ったものになっているかについて見ていったらいかがでしょうか。
 
 こういった現場管理を行っていく役割を担っているのが現場監督者です。センター長と名のつく人であれば、その物流センターのトップであります。その人が自分のセンターの状況を把握できていないのでは話になりません。
 
 物流業が管理に弱いことは事実です。しかし、物流にも管理技術を導入し一つひとつ管理水準を上げていくことで会社の収益向上にも必ずつながるのです。
 
 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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