1. 改善戻りに対する歯止めとは
いろいろな会社で物流改善のお手伝いをさせていただく過程で、非常に重要だと感じることがあります。それが「本気で会社が変わろうという意識」です。実際のところ、物流現場に外部の人間が入ってきて、改善と称して今までと違った業務のやり方に変えていくことに対する抵抗はあって当然だと思います。しかし、経営者が何としても物流改善を行って自社を変えていきたいという思いがあるからこそ、外部の力を借りてでも実践したいと考えるのです。
よく、自社内でできるはずの仕事を外部に依頼することがあります。それは自社で考えていることを外部からお墨付きをもらいたいということが考えられます。「やっぱり外部のコンサルタントも同じことを考えているな」と確認することで、安心することができるのです。また外部にそれを言わせることで、社内の嫌われ者になることを避けることもできます。これもある種上手なコンサルタントの使い方だと言えるでしょう。
一方で、外部に頼った改善で注意しなければならないことに改善の「歯止め」があります。努力して改善をしたのはいいものの、時が経つにつれ元に戻ってしまうことがあるのです。要は昔やり慣れた方法に戻してしまうことですが、これを避けるためにはしくみ化したり物理的な制約を設けたりすることで「歯止め」をかけることが重要です。
さて話を「本気で会社が変わろうという意識」に戻しましょう。表面面の改善は上記のとおり後戻りの可能性を秘めていることに注意が必要です。しかし本気で会社を変えたいのであれば、取り組み方も変わってきます。これは会社が危機的状況に陥り、死に物狂いで改善に取り組んだことのある人ならわかると思います。そういった人はあまりいらっしゃらないと思われますので、本気で会社を変えるための取り組みについて解説したいと思います。
2. 社員みんなが本気になる
会社を変えるために最も必要だと思われることが「社員みんなが本気になる」ということでしょう。よく社員に危機意識が欠けているという話を経営者の方がされていることを耳にします。たしかに社員の末端まで危機感が浸透しておらず、会社が徐々に悪い方向に傾いて行ってしまうことがあります。しかしまず危機感を浸透させるのは経営者の役割であると認識すべきではないでしょうか。そうならないように経営者の方は会社の仕組みを変えなければならないのです。社員みんなが本気になるためには、社員全員に明確なタスクを与え、その出来具合をきちんと評価すべきだと思います。
物流現場の各作業者にもそれぞれ目標を与え、それに対する実績をチェックして評価するようにしていくのです。たとえばAさんは一人一日当たり運搬量を30㎥とする、またBさんには一人一日当たり梱包数を40ケースとする、などといった目標値を設定するのです。そして毎月目標に対する実績をチェックして評価します。最終的には年度での実績を評価し、それを人事評価につなげるようにします。
いわゆる実力主義に基づく人事評価制度です。日本ではこのような評価は一般的ではありませんでした。みんなが平等であることを良しとした文化は昔はよかったのかもしれませんが、時代は変わりました。企業間競争も厳しさを増していきますので、優秀な人にはどんどん伸びていって欲しいものです。ですからこのような実力主義に基づく評価でやる気を引き出すことも会社にとっては重要な課題だと言えそうです。
目標値を達成した人、達成できなかった人、それぞれに対して明確な信賞必罰を与えることで危機感の共有化を行うことも必要です。やってもやらなくても評価に大きな差が出なければ大抵の人は楽な道を選ぼうとするものです。こういった状況は何としても避けなければならないでしょう。
3. 責任と権限をセットで与える
社員みんなが本気になることで物流改善を通して会社を変えていくことができるようになります。そしてもう一つ本気度を上げるためのしかけが「責任と権限をセットで与える」ということです。できればどんどんと下の階層に権限移譲していくことを考えたいものです。そして同時にそれに対する責任もセットで持たせることが重要です。
よく責任は取らされるが、それに見合った権限を与えられないという話を聞くことがあります。これでは人間やる気は出ません。そこで「権限と責任」は常にセットで与え、その人の裁量を広げてあげることを考えていきましょう。権限を与えられればそこに責任感が芽生え、仕事に好循環が生まれることでしょう。
この「権限と責任のセット化」は仕事のスピードも上げることにつながります。何もかも上司の承認を求めなければ仕事が進まないようでは会社の動きも鈍いと言わざるを得ませ...