技術資源の有効活用: 事例紹介 (その1)

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 今回から2回に分けて、TRMによる活動の事例紹介をいたします。TRM(Technical Resource Management)は自社が保有する潜在的な技術又は技能といった資源を顕在化し、商品開発や安定生産に活かす為の方法、扱い方及び、技術開発の方向付けを行って、併せてそれらの検討プロセスを継続推進していくための技術資源活用のしくみを構築するプログラムです。1回目は、工業用砥石を開発生産販売している国内工場の事例です。
R&D 
 活動導入の背景ですが、日本国内ユーザーの海外進出に伴い、現地/海外メーカー製品との競合、及び国内市場におけるコンペチタ―との競合が激しいものとなっておりました。そんな中、この企業ではベテラン社員の退職により、知識、技能、技術の散逸が懸念され、開発、改善、設計といった技術面における対応力の低下が憂慮されておりました。従って、自社の保有する技術の整備と共有化を図り、優位技術の強化、不足技術の補強を行うことによって、ユーザーニーズへの対応力を向上させて販売に結びつけることが急務となっていました。そこでこれらの経営課題に対して、3つの目的を掲げ活動をスタートさせました。
 
1. 顧客が要求する砥石の開発、生産を短納期で行い、満足する品質に仕上げて提供出来るようにする。
 
2. 自社が保有する技術ノウハウを技術者間で共有し、製品開発生産の効率を向上させる。
 
3. 市場ニーズ対応型の製品開発生産を可能にする能力を備え、市場優位性をもって販売拡大を図る。
 
 この目的を果たすべく活動を進めていった結果、今後強化すべき重点テーマが3つに絞られました。
 
(1)製造技術の共有化(伝承継承) ⇒ 製造スキルの向上と不良低減
(2)掘り起こし技術の展開(技術戦略) ⇒ 応用技術の商品化
(3) 技術の共有化システム構築 ⇒ 品質設計技術のレベルアップ
 
 TRMの最初のステップに保有技術の棚卸しと技術の定義というものがあります。今回はこれらの重点テーマに沿って、砥石を造るのに必要な技術のロジックツリーを作成し、技術を顕在化したのちにそれぞれのテーマにおいて、重要な技術を特定し定義していく方法をとりました。この重点テーマの内、(1)の「製造技術の共有化」の結果について少し触れてみたいと思います。
 
 この工業砥石は一枚200万円程する精密研削加工用砥石で、客先要求を基に設計製作する特殊品になりますが、製造における問題は焼成後の割れ不良にありました。この割れ不良を無くすためにいろいろな工夫がなされていましたが、あるベテランの方が制作すると割れないことがわかりました。それは、ボンドの選定と配合及び砥粒との関係から最適解を導き出して製作するその人の勘と経験が培った「技能」であり、そのノウハウを技術に変換して、3つの製造グループの内の1グループの担当者に伝承継承しました。すると、不良がグッと減ったのです。そして、それを見聞きしていた他のグループも伝承継承してほしいとなり、いつの間にか製造グループ間で品質...
 今回から2回に分けて、TRMによる活動の事例紹介をいたします。TRM(Technical Resource Management)は自社が保有する潜在的な技術又は技能といった資源を顕在化し、商品開発や安定生産に活かす為の方法、扱い方及び、技術開発の方向付けを行って、併せてそれらの検討プロセスを継続推進していくための技術資源活用のしくみを構築するプログラムです。1回目は、工業用砥石を開発生産販売している国内工場の事例です。
R&D 
 活動導入の背景ですが、日本国内ユーザーの海外進出に伴い、現地/海外メーカー製品との競合、及び国内市場におけるコンペチタ―との競合が激しいものとなっておりました。そんな中、この企業ではベテラン社員の退職により、知識、技能、技術の散逸が懸念され、開発、改善、設計といった技術面における対応力の低下が憂慮されておりました。従って、自社の保有する技術の整備と共有化を図り、優位技術の強化、不足技術の補強を行うことによって、ユーザーニーズへの対応力を向上させて販売に結びつけることが急務となっていました。そこでこれらの経営課題に対して、3つの目的を掲げ活動をスタートさせました。
 
1. 顧客が要求する砥石の開発、生産を短納期で行い、満足する品質に仕上げて提供出来るようにする。
 
2. 自社が保有する技術ノウハウを技術者間で共有し、製品開発生産の効率を向上させる。
 
3. 市場ニーズ対応型の製品開発生産を可能にする能力を備え、市場優位性をもって販売拡大を図る。
 
 この目的を果たすべく活動を進めていった結果、今後強化すべき重点テーマが3つに絞られました。
 
(1)製造技術の共有化(伝承継承) ⇒ 製造スキルの向上と不良低減
(2)掘り起こし技術の展開(技術戦略) ⇒ 応用技術の商品化
(3) 技術の共有化システム構築 ⇒ 品質設計技術のレベルアップ
 
 TRMの最初のステップに保有技術の棚卸しと技術の定義というものがあります。今回はこれらの重点テーマに沿って、砥石を造るのに必要な技術のロジックツリーを作成し、技術を顕在化したのちにそれぞれのテーマにおいて、重要な技術を特定し定義していく方法をとりました。この重点テーマの内、(1)の「製造技術の共有化」の結果について少し触れてみたいと思います。
 
 この工業砥石は一枚200万円程する精密研削加工用砥石で、客先要求を基に設計製作する特殊品になりますが、製造における問題は焼成後の割れ不良にありました。この割れ不良を無くすためにいろいろな工夫がなされていましたが、あるベテランの方が制作すると割れないことがわかりました。それは、ボンドの選定と配合及び砥粒との関係から最適解を導き出して製作するその人の勘と経験が培った「技能」であり、そのノウハウを技術に変換して、3つの製造グループの内の1グループの担当者に伝承継承しました。すると、不良がグッと減ったのです。そして、それを見聞きしていた他のグループも伝承継承してほしいとなり、いつの間にか製造グループ間で品質競争が始まりました。その結果、活動スタート初めの4月~11月までの不良率の平均が0.83%だったのが、技術伝承継承後の12月、1月は共に0.02%、ある製品においては0%を達成していました。因みに当年度目標は1.81%、前年度実績が1.97%という内容でしたので、これこそが技術の伝承、継承が生み出した成果だと言えるでしょう。
 
 (2)の「掘り起こし技術の展開」による新しい技術の商品化や、(3)の「技術の共有化システム構築」についても、その後のお話しから継続的に展開され、トップや担当者が変わった今も継続して進められ、成果を上げているとのことです。今では国内、海外生産の棲み分けもしっかり行われ、技術を基に開発生産が営まれているようです。
 

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この記事の著者

城田 靖彦

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