TRM(Technology Resources Management)事例その2は、建築物の防食事業を営む企業の取り組みをご紹介いたします。
この企業のTRM導入の背景は、国内外における競争激化の下、顧客対応力と新商品開発の強化が重要となっており、技術者の早期育成が急務であるというものでした。そして活動の対象とする技術分野は、設計技術/施工技術/調査測定技術/分析技術/製造製作技術/維持管理技術(業務管理上の技術は除外)としました。
活動の目的には「自社が保有する技術ポテンシャルを明確にし、部門間、技術者間で技術を共有化することで商品開発力の向上を図ること」「企業レベルで市場優位に立った商品創りを行うための技術戦略を立案し、今後の技術開発と活用方向を明らかにすること」の2つを置きました。アウトプットは以下の3つとして、10名程のメンバー(研究所、開発設計、技術営業より選出)を中心に進めてまいりました。
1)商品化技術体系(前述技術分野)
2)技術戦略シナリオ(技術の取り扱い方)
3)共有技術情報(伝承継承技術ノウハウ)
今回は活動中に議論された技術定義の中でその解釈の難しさについてのエピソードを紹介いたします。当初このチームのメンバーは職務の関係上、自社技術は相当あるであろうという認識がありました。しかし、棚卸しをしていくうちに技術は施工会社や工事会社のノウハウで、自社の技術はどこのどの部分にあるのかがわからなくなってしまった場面も多々ありました。そんな議論の一場面に取り上げられた技術が廃棄物処理場の遮水シートのモニタリング技術というものでした。その技術が成り立つ原理と構造を解明して定義していく過程で、どこが自社の技術か追及していくと、次のように色々な意見が出ました。
「シートの下に張り巡らせてあるセンサーか」
「センサーを均等に張り巡らせる施工技術か」
「いやいやこれらは協力メーカーや施工会社の技術ではないか」
「ではうちの技術はどの部分なんだ」
そして、そのシステムを構成する技術を細かく追求していくうちに、自社の技術とは、「シート裏に設置されたセンサーから、遮水シートの亀裂箇所を、その位置や亀裂状態まで正確にモニターに表示する技術(ソフト)」ではないかということになりました。実はこの事業は廃止方向にあり、廃止と同時にこの技術も失うところで、これは遮水...