1. 競争激化は改善のチャンス
物流改善、物流改善と騒いでみても、それにまったく興味を持たない人には響くことはありません。物流改善をやらざるを得ない状況にない限り、なかなかそれに着手することはありません。物流改善の必要性とその取り組みについては、業界により、また会社により温度差があることは事実です。競争の激しい業界では物流改善も進んでいる傾向があるようです。自動車メーカーはもともと国際競争にさらされていますのでものづくりの改善が大変進んでいました。このものづくりの改善を何十年もやり続けていると、新たな改善ネタに困ってきます。そこで改善の矛先が物流に向かったのです。これは極めて自然なことだと思います。
最近の通信販売も一気にライバル会社が増えたことで、競争のターゲットを物流に求めました。特に配送リードタイム短縮です。この実現のためには物流の仕組みをしっかりと構築する必要がありました。そしてさらに配送料の無料化が現れました。発注した翌日、場合によっては当日に無料で商品が届くのであれば、その会社から買おうとすることは理解できます。これによって他社に圧倒的な差をつけることができたわけです。自動車メーカーにしろ通販会社にしろ、競争の激化が物流改善の動機づけとなりました。必要に迫られてそれに着手したということです。
競争がそれほどでもない業界では物流改善への取り組みをどうしていったらよいでしょうか。言うまでもありません。競争が始まる前に物流改善を行い、他社を大きく引き離してしまえばよいのです。物流改善をやったことがない会社であれば、物流コストを半減することは難しくありません。もし他社よりも物流コストが半分であれば、収益力の差が歴然とします。意識の高い経営者がいる会社であれば、これに気づき物流を何とかせよという指令が出ることでしょう。
2. 国際競争力を持った物流会社になる
自らが所属する業界が国際的に競争力があるのか否かを考えてみる必要がありそうです。今まで国際競争の波にさらされていなかった業界が急にそのような状況になる可能性があるのです。自動車メーカーは国内での生産台数を何台にすると発表していますが、これはあくまで「国内で組み立てる台数」を言っているのであって、国内の部品会社から購入することを言っているのではありません。つまり自動車メーカーは世界の最も競争力のある会社から購入し、日本でその部品を使って組み立てるのです。この「最も競争力のある部品会社」は日本の会社であるかもしれませんし、タイの会社であるかもしれません。国内の部品会社は今まで国際競争の波にさらされていなかったのが、自動車会社の購買方針によって突然その波に巻き込まれたわけです。
競争力を失った会社は残念ながら淘汰される運命にあります。誰も守ってくれることはありません。そうならないように今の内に改善を進め体力をつけておかなければなりません。このような状況下にあってもなお社内の危機感が薄い会社はいくらでもあると思われます。今後欧米の大手の物流会社が雪崩の如く日本に上陸してくるかもしれません。それらの会社に太刀打ちできる「国際競争力」が求められるのです。まずトップが危機感を持って、経営改善に取り組まなければならなくなるでしょう。そのもとで従業員がいよいよ危機感を持って改善マインドを持つようになるのです。しかも今までとは異なるスピード感あふれる改善が必要になります。今まで一カ月かけて実施していたような改善を数日でやらなければならないことも出てくることでしょう。
3. 物流業は他業界に学べ
自社内だけを見ているだけではどこまで改善を進めたらよいのかが分からないかもしれません。やはり必要なことは外を見ること。そして刺激を受けることです。物流倉庫で自分たちは息つく暇もなく、あわただしく仕事をしていると思っているかもしれません。ただしその感じ方はあくまでも自分たちの主観的な感じ方であることがほとんどでしょう。そう感じている倉庫の生産密度は別の職場の半分以下であることはざらにあることです。こういった主観的感覚が当たり前に感じてしまうことが怖いところです。なぜなら、その忙しさがどこよりも大変であると思い込み、改善をしようという気にならないからです。そうこうしている内にライバル会社は改善を進め、その会社の2倍、3倍の労働密度で仕事をしていくのです。これにかなうはずありません。大きな差をつけられて、その会社は沈んで...